無菌状態が本当に安全?
正しい消毒術のススメ

シリーズ「おうちのウイルス対策‐命を守る掃除術‐」。第2回のテーマは「消毒」です。除菌用のアルコールが街中から不足するなど、そのニーズはマスク同様高まっていますが、果たして私たちは適切な消毒ができているのでしょうか。病院清掃のプロの視点から、家庭内での消毒について、お話しいただきます。

監修:

松本 忠男

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菌をゼロにしてはいけない
過剰な消毒は、身体に悪い

 ドアノブや、電源のスイッチを触るたびに消毒しているときりがない。とはいえ、しないと不安…。新型コロナウイルスから身を守るために、日夜こうした努力と不安に苛まれる人は少なくありません。実際のところ、どこまで消毒する必要があるのでしょうか。
 まず、知っておいていただきたいのが、「常在菌」の存在です。腸内細菌という言葉を聞いたことがあると思いますが、これも常在菌の一つです。人は様々な常在菌と共生しており、生きていくうえで欠かせないものです。人の周り、つまり家の中にも多く存在する、この常在菌を殺してしまうことは、免疫力の低下につながり、ウイルスが感染したときに発症しやすい状況を生み出すことになります。
 もちろん病院では、ドアノブなど不特定多数の方が触る箇所はこまめに消毒しています。それは、免疫力が極端に落ちた人たちが居住している特殊な空間の中に、多くの病原体を持ち込まれる可能性があるため、徹底的にウイルスや菌を排除していくことが必要だからです。
 しかし、家庭では違います。家庭で病院のように過剰に消毒することは、かえって身体に悪いのです。

除菌は商用用語
基本は「乾拭き」で十分

 また、清掃の現場では「除菌」という言葉はありません。「除菌」とは、商品を売るために作られた言葉で、その場から菌を除くという意味しかないのです。
 消毒に有効な「消毒用エタノール」は、アルコール濃度が80%程度あり薬局でしか購入できません。一般的に販売されているアルコール入り除菌シート等は、アルコール濃度が20~30%程度のものも多く、濡れた布で拭いているのと大差がないといえるでしょう。

 病院清掃でのウイルスや菌の対策は、洗浄、消毒、滅菌の3段階で取り組みます。
 第1段階の洗浄は、前回の記事にある通り、一方向の乾拭きを基本とし、ウイルスを含むハウスダスト(ホコリ)の量を減らすことを目的に行います。目に見える汚れがない場合は、洗剤も必要ありません。通常であれば、家庭内の対策はこれで十分といえます。
 なお、目に見える汚れ(油汚れ、皮脂汚れ、水あか等)がある場合は、適宜乾拭き後、用途に応じて洗剤を使用しましょう。(下表参考)

汚れ別の洗剤の選び方

※重曹&クエン酸は自然界に存在する成分です。小さなお子さんがいるご家庭でも安心して使用でき、おすすめです。

高齢者や幼児のいるご家庭では
乾拭き後に消毒を。
市販の家庭用洗剤でも効果あり

消毒する際も、事前に必ず乾拭きをしてください

 高齢者、乳幼児など免疫力の低い方がご家庭内にいる場合であれば、第2段階の「消毒」が必要です。
 最も飛沫が多く手や口に触れる場所であるテーブルなどは、まず一方向の乾拭きをして、その後、「消毒用エタノール」で消毒しましょう。しかし、消毒用エタノールは品薄状態が続いています。その場合は、漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム消毒液)で代用するとよいですが、手に触れると荒れたり、お子さんが間違って触ってしまったり、と不安な方もいらっしゃるでしょう。

 そこで選択肢の一つとして有効なのが、界面活性剤の入った住居用または台所用洗剤等の家庭用洗剤の使用です。今回の新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスは、エンベロープと呼ばれる脂質性の膜で覆われています。この膜が洗剤の界面活性剤とくっつくことで破壊されます。つまり、一般の家庭用洗剤でもウイルスを不活性化させることができます。経済産業省のWEBサイトで、有効な洗剤のリストや、消毒方法が公開されていますので、参考にしてみてください。

 ちなみに第3段階の「滅菌」は、家庭内での新型コロナウイルス対策には不要です。
 滅菌はウイルスや菌などの微生物を全く除去した「無菌状態」を作り出すことを言います。病院での医療器具などに行いますが、先述したように、過度な消毒は、免疫力低下を招き逆に感染リスクを高めてしまいます。
 大切なのは、基本の乾拭き、そして必要に応じた洗剤拭きでウイルスの量を減らすこと。これを毎日こまめに続けることが、家庭での感染予防対策には非常に有効です。

<今回のポイント>

・通常は「乾拭き」のみで十分
・高齢者や幼児がいる場合は、乾拭きの後に消毒を
・家庭用洗剤が新型コロナウイルスに有効

■併せてこちらもご覧ください:「うがい、いきなりガラガラ~はNG まずは手洗いと口ゆすぎを」

※この記事内容は、執筆時点2020年6月25日のものです。