枕の高さに要注意!
脳卒中リスクのある殿様枕症候群とは?

皆さんは普段、どんな枕を使っていますか?実は、「高い枕」を使い続けると首に負担がかかり、脳卒中を発症する可能性があることが分かってきました。このことを「殿様枕症候群」と呼ぶのをご存じでしたか? 良質な睡眠と健康を維持するためにも、この症候群の危険性と予防についてご紹介します。

監修:

猪原 匡史

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「殿様枕症候群」とは?
脳卒中の原因にも!?

 脳卒中の要因の一つであり、若い世代に多い「特発性椎骨動脈解離」の発症に高い枕が関与していると、国立循環器病研究センターが発表しました。江戸時代に使われた高い枕にかけて「殿様枕症候群」と呼ばれています。

 「特発性椎骨動脈解離」は首を通る血管が裂け、首の後ろや後頭部に激しい痛みが起こる病気です。血管の亀裂は自然と治る場合もありますが、脳梗塞やくも膜下出血になる可能性も。後頭部の痛みを「寝違えた」と思い込み、そのまま放置してしまう危険性もあります。

■高すぎる枕は首の血管に負荷がかかる

 高い枕を使用すると、首が大きく曲がり、首の後ろの血管が引っ張られます。さらに、寝返りで血管に過剰な負荷がかかり、血管が傷つく可能性があるのです。

こんな人は要注意!

・枕は高さがないと寝付けない。
・寝ながらスマホやテレビを見る際に、枕やクッションを重ねて頭を起こしている。そのまま寝落ちすることもある。

長時間首に負荷が加わった状態が続くと、殿様枕症候群になるリスクが高まります。

■危険な枕の高さとは?

 頭を乗せない状態で、12cm以上が「高い」、15cm以上が「極端に高い」枕となります。

 国立循環器病研究センターが患者を対象に枕の高さを調査したところ、特発性椎骨動脈解離の患者は「高い枕」「極端に高い枕」の使用率が高い結果に。また、枕が高いほど発症割合が高く、枕が硬いほど発症との関連が強くなる傾向であることが分かりました。

殿様枕症候群の予防には
「枕選び」と「姿勢」が重要

 脳卒中のリスクを少しでも下げるため、毎日使う枕は適切なものを選び、スマホを見るときの姿勢も見直しましょう。

■枕を選ぶポイント

 枕の中心部は、頭を乗せていない状態で12cm未満が望ましいです。ただし、硬さによって12cm未満でも首の血管に負荷がかかっている可能性はあるため、寝違いなど首の痛みが出る際はさらに低くするなどの調整が必要です。

 体格によっても合う枕の高さは異なりますが、首に無理な力がかからないようにするには仰向けで「立った状態の自然な視線」になるイメージで枕を選ぶと良いでしょう。

■スマホやテレビを見る際の注意点

 ベッドやソファに寝そべってスマホを見る方も多いと思いますが、長時間首に負担のかかる姿勢にならないように、意識して気を付けましょう。

 また、長時間のうつむき姿勢や、壁に寄りかかって首に極端に負荷がかかる状態もリスクがあるため避けましょう。

まとめ
高い枕を使い続けると、若い世代でも脳卒中を引き起こす可能性があります。特に毎日使う枕により、日々リスクが積み重なってしまっているかもしれません。首に負担がかからないよう適切な枕を選び、スマホやテレビを見る際の姿勢にも気を付け、予期せぬ病気を予防していきましょう。

公開日:2025年2月12日

猪原 匡史(いはら まさふみ)
国立循環器病研究センター 脳神経内科部長。京都大学卒。京都大学医学部附属病院、西神戸医療センターで内科研修。英国ニューカッスル大学に留学。京都大学神経内科、先端医療センターを経て当センターに勤務。脳血管障害と認知症の臨床および研究を専門領域としている。

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