慢性的な腰痛の原因
「反り腰」を改善しよう
普段何気なく生活をしていると、気付かないうちに背中が曲がっていたり、重心が左右どちらかに偏っていたりと崩れた姿勢でいることが少なくありません。崩れた姿勢でいると、体の様々な箇所に負担が掛かり、首や肩の凝り、腰の痛みなど体のトラブルの原因になってしまいます。この記事では、多くの人が抱えやすい姿勢の問題を全6回にわたってご紹介します。第3回目は、慢性的な腰痛の原因「反り腰」の改善です。
重いものを持つ機会が多かったり
ヒールの高い靴を履くと、「反り腰」になることも
「反り腰」とは、文字通り腰が強く反っている状態のこと。猫背は胸・肩が前に出ているのに対し、反り腰はお尻を突き出したような姿勢になります。この姿勢が常態化すると、腰への負担が大きくなり、腰や下半身の不調を招く原因になる他、お腹がぽっこりした印象にもなってしまいます。この反り腰の原因は大きく以下の2つです。
①「筋肉のバランスの崩れ」
反り腰は、腰・背中の筋肉が強く働き張っている状態です。そのため「重い物を持つ機会が多い」「長時間の立ち仕事をしている」などの人は、反り腰になりやすい傾向にあります。また、腹筋が弱っている場合も反り腰になりやすくなります。実は腹筋には前方から背筋を支える役割があるため、腹筋が弱ってしまうと相対的に背中の力が強くなり反り腰になってしまうのです。つまり、反り腰は腰・背中とお腹の筋肉のバランスが崩れた状態ともいえます。
②「日頃の前傾姿勢」
前傾姿勢になると重心が前に掛かります。体はそのままでは前に倒れてしまうので、重心を後ろに戻そうとする結果、腰を反るような姿勢になり、その状態が続くと反り腰になってしまいます。「体重が増加した」「ヒールの高い靴を履いている」などの人は、日頃から前傾姿勢になりやすいため、特に注意が必要です。
反り腰のセルフチェックポイント
壁に「かかと」「お尻」「両肩」「後頭部」をぴたりとつけるように立ちます。
このとき、壁と腰の間に握りこぶし1つ分以上の隙間がある場合は、反り腰といえるでしょう。手の平が入るくらいのわずかな隙間の場合は反り腰の可能性が低いです。
正しい姿勢のポイント
・かかとから、お尻、肩、頭が一直線になっている。
・腰が緩やかなカーブを描いている。
『日本人に多い「猫背」』の回と同様に、上記2つができているのが正しい姿勢です。
反り腰の方は、顎を引いてお腹を引っ込めるようにして立つと、正しい姿勢を取りやすくなります。
反り腰が慢性的な腰痛の原因に!
足の痛みやしびれを招くことも
反り腰は、腰・背中の筋肉が過剰に働いている状態であるため、常に大きな負荷が掛かっています。負荷が続くと筋肉が硬化。血流が低下し、慢性的な腰痛の原因になってしまいます。また、腰には足への神経を通す脊柱管があります。反り腰が悪化すると、その脊柱管と神経を圧迫し、足の痛み、しびれを招くこともあるのです。
これらの不調を招く反り腰を改善するために、普段から「正しい姿勢」を心掛けていきましょう。また、次に紹介する体操を行うことで、腰・背中、お腹の筋肉を動かし、反り腰の改善につながります。
■イヌネコストレッチ
①両手、両膝を床につけて、
四つん這いになります。
②へそを覗き込むように、
背中を丸めます。
③へそを床に近づけるように、
背中を反ります。
【目安】10回
<ポイント>
肘・肩は固定して、②はネコのように丸め、③はイヌのように反らせましょう。
■赤ちゃんストレッチ
①仰向けになり、
両手で膝を抱えます。
②肘、腰を曲げながら丸くなり、
そのまま10秒キープします。
【目安】10秒を10回
<ポイント>
頭を膝に近づけるようにして、小さく丸くなりましょう。
■ブリッジストレッチ
①仰向けになり、膝を立てます。
手は伸ばして床につきます。
②膝を前へ突き出しながらお尻を上げ、
そのまま10秒キープします。
【目安】10秒を10回
<ポイント>
お尻をキュッと締めると力を入れやすくなります。
まとめ
反り腰は、日頃の姿勢、筋肉のバランスの崩れ、体重の増加によって生じます。腰は脚にもつながっているため、痛みがひどくなると歩くのも辛くなってしまいます。セルフチェックポイント見て、反り腰だという人は、運動やストレッチをする習慣を身に付けて、足腰のトラブルを招く前に改善しましょう。
※この記事内容は、執筆時点2024年5月22日のものです。
吉原 潔(よしはら きよし)
整形外科専門医・フィットネストレーナー。医学博士。アレックス脊椎クリニック名誉院長。日本整形外科学会専門医、日整会内視鏡下手術・技術認定医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会(NESTA)公認パーソナルフィットネストレーナー、食生活アドバイザー。運動療法や筋力トレーニングにも精通した医師として、多角的な診療に定評がある。