お金はなぜあるの?
~物々交換ではいけない理由~

若いころから「お金」について学ぶことは、世の中の仕組みを知り、経済観念を育てることにもつながっていきます。そのため、自分でお金を使う機会の増える小学生ごろから、学んでいくことはとても大切です。また最近では、電子マネーの普及が進むなど、お金の形も変化しています。そこで、この連載では、大人も子どもも学びとなるお金の知識をご紹介。第1回目の今回は、お金の役割について説明します。

監修:

八木 陽子

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便利な生活のために
お金はなくてはならないもの

 人が生きていくうえで、「お金」はなくてはならないものです。欲しい洋服や食べ物を買うため、家の購入や部屋を借りるための家賃・ローンを支払うためなど、衣食住に関わる物を手に入れるためにお金は使われています。それだけではなく、電気・ガス・水道の使用料や、スマートフォン・インターネットの使用料、病気になったときの治療費など、様々なサービスを受けるためにも使われています。このように、お金は、物やサービスを受け取り、生きていくためになくてはならないものなのです。

お金が持つ役割は
交換しやすい、長く使える、
価値を計る

 現在のお金には、下記のような3つの役割があります。

お金の3つの役割

①必要な物やサービスと交換する役割

欲しい物や必要なサービスがあるときには、お金を支払うことで、その物やサービスを受け取ることができます。日本のお札や硬貨であれば、日本のどこでも、物やサービスと交換することができます。

②長く保存する役割

紙幣や硬貨の1000円であれば、姿や形が変化することはありません。銀行に預ける、金庫にしまうなどして、将来使うときのために保存しておくことができます。

③物やサービスの価値を計る役割

世の中の物やサービスには値段が付いていますが、一般的に値段の高い商品やサービスほど、私たちが感じる価値も高くなります。例えば、お寿司1貫100円と、1貫1万円では、後者の価値が高く感じます。このように、物やサービスの共通の価値を計る「ものさし」のような役割もあるのです。

 お金が3つの役割を持つようになったのは、長い歴史が関係しています。お金が存在しない時代は、「物々(ぶつぶつ)交換(こうかん)」を行うことで生活を成り立たせていましたが、いくつかの問題がありました。まず、お互いに欲しい物を持ち合わせていないと成立しません。また、食べ物であれば腐ったり、道具であれば壊れることもありました。物々交換をしていた時代は、欲しい物を手にするのが大変な時代だったのです。
 そこで、誰もが共通して価値があると考える特定の品と交換するようになり、辿り着いたのが金・銀・銅といった「金属」。この金属を一定の大きさしたものが「お金」です。物々交換から進化する形で生まれたため、お金は交換の役割、長く保存する役割、共通の価値を計る役割を持つようになりました。お金の誕生によって利便性が格段に上がったのです。

「信用」によって
さらに進化したお金

 元々、金・銀・銅だったお金は、現在では紙幣や硬貨という形に変わり、さらに持ち運びしやすく、交換や保存のしやすいものになっています。ですが、紙幣の一つである1,000円札は、実は1枚約18円で作られています。約18円で作られているのに、1,000円として利用できるのはなぜなのでしょうか。
 それは、そのお金の価値を国が保証しているからです。1,000円札を1,000円分の物と交換できる紙であることを日本が保証し、人々は日本のどこでも1,000円分の物と交換できることを信じて利用しています。つまり、現在のお金の価値は、国の保証を人々が信用することによって成り立っているのです。

 1,000円札が約18円で作られるのなら、多くのお札を作ればもっと使えるお金が増えるのだから良いのでは?と思うかもしれません。しかし、お札を作り過ぎてしまうと、お金の価値に疑問を持つ人が増えて信用が失われることや、交換する物よりお札が多くなり経済が混乱する原因になってしまいます。
 そうならないために、お金の管理をしているのが日本銀行。お金が多くなり過ぎたり、少な過ぎたりしないように、日本のお金の動きをチェックしながら、お札の発行や回収をしているのです。日本銀行は、経済を守り、お札への信用も守っています。お金は長い歴史を経て、信用によって成り立つ紙幣・硬貨へと形を変え、生活になくてはならない便利なものへと進化してきたのです。

コラム

お金のを作るのにいくらかかる?

【紙幣・硬貨の製造費(推計)】

1,000円札の製造費が1枚約18円である他、実はそれぞれの紙幣・硬貨の製造費は、実際に使える価値とまったく異なります。金などを交換に使っていた時代は、製造費と価値はほとんど同じでしたが、時代が進み、変化していったのです。

参考:独立行政法人造幣局「年銘別貨幣製造枚数 平成30年度」、「造幣局平成30年度予算」
財務省「平成30年度 日本銀行券製造枚数」

まとめ
現在では当たり前に使われているお金ですが、改めて考えてみると、利便性が高く生活になくてはならないものとなっています。お金ができたことで簡単に、様々な物やサービスを受け取ることができるようになりました。しかし、そのためにはその分のお金を支払う必要があります。子どもへは、お金の便利さと共に、支払うとなくなることも伝えるのが大切です。

次回は「昔と今で違う1,000円で買えるもの」など、「物価」についてのお話です。

参考:独立行政法人造幣局「日本の貨幣の歴史」

※この記事内容は、執筆時点2023年11月22日のものです。

八木 陽子(やぎ・ようこ)
株式会社イー・カンパニー代表取締役。キッズ・マネー・ステーション代表。ファイナンシャルプランナー、キャリアコンサルタント。2005年からお金教育・キャリア教育を普及する「キッズ・マネー・ステーション」を主宰し、所属する全国の講師たちと、小・中・高等学校にて授業や講演などの活動実績が多数。著書や監修本に「お金は子どもに預けなさい」(経済界)、「おさいふのかみさま」(フレーベル館)、「10歳から知っておきたいお金の心得」(えほんの杜)など。その他「あさイチ」「ウワサの保護者会」テレビ等のメディア出演も多数。

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