日本人に多い「猫背」

普段何気なく生活をしていると、気付かないうちに背中が曲がっていたり、重心が左右どちらかに偏っていたりと崩れた姿勢でいることが少なくありません。崩れた姿勢でいると、体の様々な箇所に負担が掛かり、首や肩の凝り、腰の痛みなど体のトラブルの原因になってしまいます。この記事では、多くの人が抱えやすい姿勢の問題を全6回にわたってご紹介します。第1回目のテーマは、日本人に多い「猫背」です。

監修:

吉原 潔

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猫背の3大要因は
前傾姿勢、体幹の筋力低下、胸椎の不動化

 「猫背」とは、文字通り座った猫のように背中が丸くなった姿勢のこと。背中が丸まって頭が前方に出たこの前傾姿勢が常態化すると、首、肩、腰への負担が大きくなる他、肺が圧迫され、体を動かすのに必要な酸素が十分に取り込めなくなります。この猫背の原因は大きく以下の3つです。

①「長時間の前傾姿勢」

 長時間、前傾姿勢でいることによって、首や背中の筋肉が固まり猫背になりやすくなります。座りながらパソコンやスマホを長時間利用する人は、画面を見ようとつい頭が前に出て、背中が丸まった姿勢になりやすいため、特に注意が必要です。
 また、日本人は、欧米人に比べると、骨盤が後ろに倒れている傾向が多く、重心のバランスを取るために、自然と前かがみの猫背になりやすいといわれています。

②「体幹の筋力の低下」

 運動不足などによって、胴体部分の筋肉である体幹の筋力が低下すると猫背になってしまいます。特に胴体前面の最も深層にある腹横筋という腹筋の働きが重要です。腹横筋は息を強く吐き出すときなどに使われる筋肉で、この筋肉が弱ってきて緩むと背中はどんどん曲がってしまいます。

③「胸椎の不動化」

 日常生活では、胴体部分を反らす動きよりも曲げて背中を丸くする動きの方が圧倒的に多く、その状態で慣れてしまうと加齢とともに胸椎(背骨の胸の部分)が動かなくなってきます。そうなると意識しても背中が伸ばせなくなり、肩甲骨のあたりを頂点に背中が丸く変形した猫背姿勢で固まってしまいます。

猫背のセルフチェックポイント

・壁に「かかと」をぴたりとつけるように立ちます。
・このとき「腰」は壁につくが、「両肩」と「頭」がつかない場合は、猫背といえるでしょう。

正しい姿勢のポイント

・くるぶしから、膝、股関節、肩、頭が一直線になっている。
・背中が緩やかなカーブを描いている。

(壁にかかとをつけたとき、壁と腰の間に手の平程度の隙間ができていればOKです)
上記2つができているのが正しい姿勢です。
椅子などに座るときは、深く腰を掛け、顎を引いて背中を伸ばしましょう。

凝りや痛みの原因だけでなく
呼吸が浅くなってしまうことも

 猫背が常態化すると、首が前に出たことで重力による顔のたるみが強調されたり、体が分厚く見えるなどの理由で、見た目が実年齢より老けて見られることも。また、肩凝りや腰痛など体の不調を引き起こす原因にもなります。さらに肩凝りが悪化すると、凝り固まった筋肉が、頭につながる神経を圧迫して頭痛の原因にもなるので注意しましょう。
 また、猫背になると、胸が十分に広がらず、肺が膨らみにくくなり、呼吸が浅くなってしまいます。すると、脳に十分な酸素を取り込めず、集中力の低下を招く原因にもなります。

 これらの不調を招く猫背を改善するために、普段から「正しい姿勢」を心掛け、前傾姿勢や骨盤の歪みを正していきましょう。また、次に紹介する体操を行うことで、首・肩・腰の凝りをほぐし、運動不足の解消、そして猫背の改善につながります。

■背中反らし

①両手、両膝を床につけて、
四つん這いになります。

②お尻を後ろへ突き出しながら、
胸を床に近づけ、背中を反ります。

【目安】10秒を2〜3回

<ポイント>

腰を反らすのではなく、お尻を高く上げ、肩甲骨を中心に背中を反らす意識が大切です。

■トランクローテーション

①頭を抱えながら右を向いて横になります。
このとき、膝は軽く曲げます。

②膝は右に向けたまま、
上半身を左へ開くようにひねり、
2回深呼吸します。

【目安】左右各10回

<ポイント>

ひねる方向へ視線を向けると、ひねりやすくなります。

まとめ
 猫背は、多くの人が抱えている姿勢の悩みの一つです。長時間座っているときなどにラクな姿勢でいようとすると、猫背になってしまいます。すると、気付かないうちに負荷が積み重なり、凝りや痛みなどにつながる場合があるため、姿勢には注意が必要です。また、猫背の人は、実年齢より5~10歳老けて見えるといわれています。健康的に若々しくいるためにも、正しい姿勢や体操を実践し、猫背を改善しましょう。

※この記事内容は、執筆時点2024年3月20日のものです。

吉原 潔(よしはら きよし)
整形外科専門医・フィットネストレーナー。医学博士。アレックス脊椎クリニック名誉院長。日本整形外科学会専門医、日整会内視鏡下手術・技術認定医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会(NESTA)公認パーソナルフィットネストレーナー、食生活アドバイザー。運動療法や筋力トレーニングにも精通した医師として、多角的な診療に定評がある。

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