季節の不調を解消!
<第5回 乾燥性皮膚炎>

空気が乾燥する季節。肌のかゆみが止まらなかったり、赤くなったりしていませんか?もしかすると、それは「乾燥性皮膚炎」かもしれません。肌荒れや乾燥肌と症状が似ているため、注意が必要です。このような季節性の病気や症状の原因、予防・対処法を専門の先生に教えてもらうこのシリーズ。今回はこの「乾燥性皮膚炎」についてご紹介します。

監修:

小澤 勝男

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まずはセルフチェック!

 次の項目に当てはまるものがないか、セルフチェックをしてみましょう。3個以上当てはまる場合、「乾燥性皮膚炎」の傾向にあります。

「乾燥性皮膚炎」の症状と原因は?

 皮膚の表面には、「皮脂幕」という薄い膜で覆われた、吸水性や保湿性に富んだ「角質層」があります。皮脂膜は皮脂と水分からできた天然の保護膜です。角質層から水分が蒸発しないよう防いだり、外的刺激から肌を守る機能があり、これを「バリア機能」といいます。

 しかし、肌が乾燥すると、このバリア機能が低下し、角質層の隙間から水分が抜け、肌が硬くなったり、ひび割れたり、皮がむけたりすることがあります。これを「乾皮症(ドライスキン)」といいます。そして、乾皮症の状態が続くと、さらに角質層の潤いを保てなくなり、かゆみや赤み、湿疹を併発する「乾燥性皮膚炎」へと進行します。乾燥性皮膚炎は「皮脂欠乏性湿疹」とも呼ばれ、脚のすねや膝裏、肘、手の甲、脇腹などに出やすいのが特徴です。

 秋から冬は、外気の乾燥に加え、寒暖差によるストレスや、夏に蓄積した紫外線ダメージによって皮膚のバリア機能が低下し、症状が出やすくなります。もともと乾燥肌の人は特に症状を起こしやすいので注意が必要です。また、高齢になるほど皮脂が欠乏するため、加齢も原因の一つと考えられます。
 洗浄力の強い洗剤・石けんを使用したり、擦り洗いなどの外的刺激によって皮膚が傷ついたりすることで、乾皮症や乾燥性皮膚炎になることもあります。

~先生からのアドバイス~
「乾燥性皮膚炎の予防と対処法

■スキンケア

 入浴後、洗顔後などはタオルを肌に優しく押し当て、余分な水分を拭き取る程度にしましょう。ゴシゴシ擦ると、皮膚を傷つけてしまう可能性があります。水分を取った後は、化粧水や乳液、保湿クリーム、ワセリンなどの保湿剤で肌を保湿しましょう。保湿剤は皮脂膜の代用としても役立ち、肌を外部の刺激から守ってくれます。

■加湿器の使用

 冬場、エアコンの暖房を使用しているときは、空気が乾燥しやすくなります。加湿器などを使って部屋の乾燥を防ぐことが大切です。

■洗剤を使い過ぎない

 洗浄力の強いボディーソープや食器用洗剤は皮膚に必要な皮脂まで除去してしまうため、使用は控えめにしましょう。体を洗うときにナイロンタオルなどで皮膚を強くこすると、角質層を傷つけ、皮膚にダメージを与えてしまいます。優しく洗うようにしましょう。

■肌への刺激を減らす

 ゴワゴワした衣類は、繊維の摩擦などの刺激によってかゆみが生じやすくなります。木綿などの刺激の少ない肌着・衣類を着用しましょう。また、アルコールや香辛料などは、血行を増して皮膚のかゆみを誘発します。かゆみが出てしまったら刺激物の摂取は控えましょう。

「乾燥性皮膚炎」まとめ


■肌の潤いは、皮膚の表面にある「角質層」と「皮脂膜」によって保たれています。
■皮膚が乾燥すると角質層から水分が抜け、ひび割れや皮むけなどの「乾皮症」を起こします。
■乾皮症が進行すると、かゆみや赤み、湿疹を併発する「乾燥性皮膚炎」(皮脂欠乏性湿疹)を起こします。
■秋から冬は特に注意が必要。加齢や洗剤の使い過ぎによって症状を起こすこともあります。

大切なことは、保湿を習慣化し、水分の蒸発を防ぐことです。「カサカサする」と感じたら、保湿剤や加湿器ですぐに肌を守ることを心掛けましょう。赤みやかゆみが出て、患部を掻いてしまうと、それが新たな刺激となって症状が悪化し、炎症が広がったり、感染を起こしたりすることもあります。症状がひどくなりそうなときは、早めに皮膚科を受診し、適切な治療を受けましょう。

※この記事内容は、執筆時点2022年11月8日のものです。

小澤 勝男(おざわ かつお)/医学博士
1967年名古屋大学医学部卒業。名古屋保健衛生大学(現藤田医科大学)胸部外科助教授、静岡済生会総合病院院長、東海医療工学専門学校校長などを務め、現在は東海医療工学専門学校非常勤講師。日本外科学会認定登録医、日本胸部外科学会指導医、日本心臓血管外科学会名誉専門医、日本循環器学会専門医、日本医師会認定産業医。

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