糖質制限ダイエットの
リスクとコツ

昨今人気の糖質制限によるダイエット。では痩せようと思って糖質を一切とらなければ身体にどんな影響があるのでしょうか。そのリスクと上手な糖質制限のコツやレシピを紹介します

監修:

金本 郁男(医学監修)・柳澤 英子(料理監修)

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健康のために
必要不可欠な糖質

 ダイエットやメタボの予防のために糖質を控え血糖値を抑える「糖質制限ダイエット」が流行中です。糖質の取りすぎによる高血糖は肥満だけでなく、糖尿病や高血圧といった生活習慣病につながり、ゆくゆくは心筋梗塞や脳梗塞、ガンの発生率の上昇など、重大な疾病の一因となります。糖質のとりすぎはダイエットを意識せずとも、誰もが避けるべき状態なのです。
 そのようなことが広く知られるうちに「糖質をとらなくてよい」「炭水化物をとらなければ痩せる」として糖質を含む炭水化物をまったく口にしない過激な糖質制限をする人も出てきました。しかし糖質は人間の脳や体を動かすエネルギー源になり、健康を維持するために必要な栄養素です。とりすぎはよくありませんが、糖質を極端にとらないというのも、また問題なのです。

過激な糖質制限は
健康に悪影響

 糖質を含む炭水化物を一切排除した食事により、短期間で一気に痩せる人を見かけます。身近にそのような人がいると、思わずマネをしたくなるものです。しかし糖質をとらないことによる健康への影響はいくつかあります。
 まずは必要なエネルギーを補給しようとして肉を食べすぎてしまうことです。それに伴い、動物性の油に含まれる飽和脂肪酸をとりすぎてしまうのが問題です。飽和脂肪酸を多く摂取すると動脈硬化の原因になります。また、炭水化物(糖質)を減らしすぎると死亡率が上昇することもわかってきました。

 2018年、45~65歳の約1万5000人を対象に日常の食事の状況と死亡率の関係を25年にわたり調査した研究がアメリカで発表されています。その報告によると、最も死亡率が低かったのは1日の食事のエネルギーのうち、50%ほどを炭水化物(糖質)でとっていた人たちで、炭水化物(糖質)が50%より多すぎても少なすぎても死亡率は高まっていきました。
 注目すべきは、30%以下にした食事をしている人たちの死亡率が1.5倍に跳ね上がっている点です。過激な糖質制限を続ければ健康に悪影響を及ぼすという結果になりました。

ゆるやかな制限で
健康維持

 このように糖質を極端にとらない食事を長く続けることは寿命にもかかわってきます。もちろん糖質のとりすぎもよくありません。適切な量を摂取し、質にもこだわって食べるようにしてください。食後血糖値の上がりやすさを示す指標であるGI値を目安に食材を吟味し、急激に血糖値を上げる高GI値の食材は避けるようにしましょう。
 皆さんが糖質制限ダイエットをする場合は、全エネルギー量のうち50%を糖質のエネルギー量にすることを推奨します。つまり極端な糖質の制限ではなく、ゆるやかな制限をすること。それが長期的に健康を維持したままダイエットをしていくために大切なことなのです。

糖質ダイエット
おすすめレシピ

※この記事内容は、執筆時点2020年8月1日のものです。

金本 郁男(かなもと いくお)/医学監修
城西大学薬学部教授。薬学博士。食は薬に通ずるところがあるため、薬剤師の見地からGI値や太りにくい食事の研究を行なう。著書に『低糖質ダイエット食べ合わせルールブック』(永岡書店)、『朝ごはんの食べ方で糖質オフダイエットも挫折しない』(主婦の友社)ほか。

柳澤 英子(やなぎさわ えいこ)/料理監修
料理研究家。52歳のときに食を楽しむ独自の食事法を始め、1年後には26キロ減。その後も太りにくい体質と健康を維持。簡単に作れるレシピが好評。『やせるおかず 作りおき』シリーズ(小学館)は 累計260万部超の大ベストセラーに。最新刊は『映える!おいしい!こんにゃく食堂』(小学館)ほか。

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