肩凝りの原因
「巻き肩」を改善しよう

普段の生活で気づかないうちに背中が曲がったり、重心が左右に偏ったりして、姿勢が崩れることがあります。崩れた姿勢は体に様々な負担をかけ、首や肩の凝り、腰の痛みなどの原因になります。この記事では、多くの人が抱えやすい姿勢の問題を全6回にわたってご紹介します。第5回目のテーマは、肩凝りの原因「巻き肩」です。

監修:

吉原 潔

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巻き肩の主な原因は
長時間のスマホと寝るときの姿勢

 「巻き肩」とは、本来耳の直線上にあるはずの肩が前方内側へ入り込んだ状態をいいます。見た目は「猫背」と似ていますが、猫背は背中が丸まった状態であり、巻き肩は肩が丸まった状態です。また、猫背と巻き肩が併発しているケースも少なくありません。
 巻き肩が常態化すると、肩や首への負担が大きくなり、様々な不調を招くこともあります。

■巻き肩の原因

①スマホ・パソコンの長時間操作

 スマホやパソコンを操作するとき、無意識に画面を覗き込み、肩が前に出た姿勢になりがちです。この姿勢が長時間続くと筋肉が固まり、巻き肩になります。もちろん、スマホやパソコンの使用の有無に関わらず、長時間のデスクワークでも同様です。

②横向きでの睡眠

 横向きで寝ると、上半身の体重が肩にかかり、自然と肩が前に出た姿勢になり、この姿勢で筋肉が固まって巻き肩になることもあります。

③加齢

 加齢により骨が歪み脊柱が前に倒れる円背(えんぱい)が進むことで、巻き肩になることもあります。

巻き肩のセルフチェックポイント

・姿見鏡に対して横向きに立ち、まっすぐ背筋を伸ばします。肩が耳より前に出ている場合は巻き肩です。
・腕をリラックスさせ、肘が体の外側に向いていたり、手の甲が正面を向いている場合も巻き肩の可能性が高いです。

巻き肩を予防する寝姿

・仰向けで寝る。
・体の形は普段立っているとき同じようにする。

仰向けは最も自然で体に負担が少ない寝方です。上記の点に注意して、巻き肩を予防しましょう。

巻き肩が常態化すると
頭痛や睡眠の質の低下を招くことも

 巻き肩は、肩が通常の位置より前にあることで、肩と首を結ぶ筋肉が引っ張られ、張りや凝りの原因になります。肩・首は心臓から送られた血液の頭への通り道です。筋肉が硬くなり血管が圧迫されると、十分に血液が送られず頭痛を発症することもあります。
 また、首は体を休めるときに働く副交感神経と深く関わっている場所です。首の筋肉が硬くなり、副交感神経が圧迫されると、体が休まらず質の高い睡眠を取ることができないこともあります。

 これらの不調を招く巻き肩を改善するために、普段の姿勢に注意しましょう。また、次に紹介する体操を行うことで、肩回りの筋肉を動かし、巻き肩の改善につながります。

巻き肩改善のための体操

■タオル体操

①タオルの端の方を持ち、腕を上げます。
このとき、腕の位置は耳のラインよりも
後ろに行くようにします。

②両肘を体に引き寄せるように、
タオルを肩の下辺りまで下げます。

【目安】10回

<ポイント>

肩甲骨を中心に寄せるようにすると、筋肉がよく動きます。

■猫背ストレッチ

①背筋を伸ばして座り、
背中の後ろで両手を組みます。

②肘を伸ばして、
肩甲骨を中心に寄せ、
その状態で両手を軽く上へ上げます。
同時に目線も上げます。

【目安】10回

<ポイント>

胸や首の前側の筋肉を伸ばすようにしましょう。

まとめ
 巻き肩は、スマホやパソコンの長時間操作、横向きに寝ることなどで、肩が前に出た姿勢を続けることで生じます。巻き肩は猫背と併発していることが多く、肩・首の凝りや血流、睡眠に悪影響を与えることもあります。姿勢や寝る体勢に気を付けながら、紹介した体操を実践して巻き肩を改善しましょう。

※この記事内容は、執筆時点2024年9月18日のものです。

吉原 潔(よしはら きよし)
整形外科専門医・フィットネストレーナー。医学博士。アレックス脊椎クリニック名誉院長。日本整形外科学会専門医、日整会内視鏡下手術・技術認定医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会(NESTA)公認パーソナルフィットネストレーナー、食生活アドバイザー。運動療法や筋力トレーニングにも精通した医師として、多角的な診療に定評がある。

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