その掃除、間違いです!
病原体を広げるNG掃除集

シリーズ「おうちのウイルス対策‐命を守る掃除術‐」。第4回のテーマは「間違った掃除」。頑張れば頑張るほど、病原体を広げてしまう。そんな間違った掃除の仕方が、多くの人に広まっています。正しい知識で病原体を減らし、健康なおうちにしていきましょう。

監修:

松本 忠男

〉〉〉プロフィール

①洗面台
使用済みのタオルで拭くのはNG

 まずは気になる水回りから。洗面台は手洗いうがいをする場所なので、飛沫が飛びやすく、新型コロナウイルスや他の病原体が付着する可能性の高い場所です。洗面ボウルや蛇口は中性洗剤を使ってスポンジで洗うとよいでしょう。「キレート剤」という成分が入ったものだと、より水垢汚れ落としに効果的です。

 そして洗った後は残った水分を拭きとってください。この水分を拭き取る際、洗面所に掛かっているタオルを使う方がいますが、これはNG。洗たくかごに入れる直前だからよいだろうと考えてのことですが、使用済みの湿ったタオルでは逆に緑膿菌などを塗り広げ、また水分が十分に取り除けないため繁殖する原因を作り出すことになります。
 拭き取る際は、乾いたタオルでペタペタと水分を吸い上げるようなイメージで拭くと良いでしょう。

②トイレ
布製品は病原体の住処に

 もう1か所、水回りでウイルスや菌などの病原体が多い場所がトイレです。湿度が高くなりがちで、菌やカビの繁殖しやすい条件がそろっています。
 便器は洗剤を使用して掃除しますが、忘れがちなのが壁や床のホコリ汚れです。第3回の記事でもお伝えしましたが、壁は化繊ハタキで上から下へなでるようにして、床は奥から手前に取りましょう。これだけでホコリに付着する病原体を激減させることができます。

 また、便座カバーやマットを敷いている方もいらっしゃると思いますが、実は、布製品はホコリ以上に病原体の格好の住処になるのです。トイレだけでなくキッチンマットも同様で、水回りに布製品を置くのは病原体を増やしてしまうと認識しましょう。掃除法とは違いますが、布製品を撤去することで、ウイルス対策としての住環境は改善します。

 ちなみに、床のホコリ取りとしてオススメなのが「スクイージー」。このゴムの部分に5mm間隔で切れ込みを入れると、よく取れるホコリ取りに変身します。100均などで購入でき、ハサミで簡単に作れますので、ぜひ試してみてください。

水切りスクイージーのゴム部分に5㎜置きの切れ込みを入れると、ホコリ取りに。(「松本式スクイージー」と呼称)

③床
掃除前の換気はNG。掃除機も静かに

 床掃除で気を付けたいのが「換気」。掃除を始める前に窓を開けるのはNGです。窓から空気が入ると、床に落ちているホコリが宙を舞います。
 また、床掃除も「乾拭き」が基本です。ただ屈むのは疲れるので、ドライシートのフローリングワイパーを使うとよいでしょう。掃除機をかける際は、なるべく静かにそーっと動かします。カーペットやラグなど乾拭きできない布製品に非常に有効です。

 ちなみに、床に付着した食べこぼしの汁、皮脂のべとつきが気になる場合は、重曹水を吹き付け、3分間放置し、乾いたタオルでスタンプを押すように拭き取ってください。

重曹水の作り方:80℃のお湯500mlに重曹大さじ1を加え、よくかき混ぜ冷まします。

掃除は「理論」
間違った方法は学校の掃除が元凶?

 しかし、どうしてこの間違った掃除の常識が広がったのでしょう。それは学校の掃除時間に由来すると私は考えています。
 まず窓を開け、空気を入れ替える。机といすを教室の端っこに寄せ、ほうきで慌ただしくほこりを払う。ありとあらゆるところを雑巾がけする。その雑巾を、水をためたバケツで洗い、絞って干す。それを洗濯もせず、翌日にまた使用する…。こういった学校で行った掃除の仕方は間違いだらけで、ホコリを舞い上がらせ、病原体を塗り広げているようなものなのです。
 掃除は、物理と化学で成り立っています。気流などの条件でホコリがどう動き、またどう除去できるか。汚れの種類に応じて効果的な洗剤は酸性かアルカリ性か。これらの組み合わせです。妄信的に、昔ながらの知恵や学校でのやり方に倣うのではなく、掃除は理論的に取り組むべきものです。

「適在適掃」で
効率よく続けましょう

 全4回の連載でお伝えしたかったこと、それは毎日掃除を続けましょうということ、そのためには汚れているところだけに焦点を絞り、ちょっとの時間で終わるようにしましょう、ということです。
 これは家庭だからではなく、病院清掃でも同じです。適在適掃。新型コロナウイルス感染予防で最も危険な箇所は、飛沫が大量に付着しているテーブル(食卓)でした。あらゆる病原体の住処になるホコリであれば壁や壁際です。こうした場所だけに集中すれば、短時間で大きな成果が得られます。
 掃除は、健康を守るうえでとても大切なことです。ぜひ、大切な家族を守るために、今日も掃除をしましょう。

<今回のポイント>

・水分は乾いたタオルで拭き取る
・トイレでも大切なのがホコリ対策
・まとめて家中ではなく、毎日汚れやすいところだけ

※この記事内容は、執筆時点2020年7月7日のものです。

松本 忠男(まつもと ただお)
医療環境管理士。株式会社プラナ代表取締役、ヘルスケアクリーニング株式会社代表取締役。30年以上にわたる病院清掃の経験を生かし、医療、介護施設、清掃会社、家庭にそのノウハウを提供している。著書に『ウイルス・カビ毒から身を守る!』(扶桑社)など。

TOPページに戻る