ウイルスが潜む
有害な「ホコリ」を減らす
シリーズ「おうちのウイルス対策‐命を守る掃除術‐」。第3回のテーマは「ホコリ」。ウイルスを含めた病原体の住処になり、また非常に軽いためウイルスごと宙に舞ってしまう厄介な存在です。ホコリが溜まる場所、掃除の仕方について病院清掃のプロである松本氏にお話をお伺いします。
無害なホコリも
いずれ有害なホコリに
ホコリは一般的には「汚い」というイメージだと思いますが、しかし発生したての状態では、身体への影響は大きくはありません。しかし長期間放置すると、このホコリを餌とする細菌やカビ、ダニが集まって来て繁殖し、病原体の住処になってしまいます。
ウイルスはホコリで繁殖することはありませんが、飛沫の落ちた先にホコリがあると、そこに付着します。つまり無害なホコリも長期間放置すると有害化するのです。
また部屋の隅で灰色にかたまっているものをホコリと思っている方も多いですが、普段は見えないくらいの小さなホコリも大量に存在します。これらが病原体ごと宙に舞い、身体の中へ入ることで、肺炎、喘息などの病気を引き起こします。
新型コロナウイルスに限って言うと、ホコリに付着したものが宙を舞った場合、それを吸い込んだことで発症する可能性は極めて低いと考えられます。しかし、第一回の記事でもお伝えした、飛沫の多い場所(テーブルなど)のホコリを除去していないと、そこにウイルスが大量に付着し、それを触った手から経由し、目、鼻、口から感染する可能性は高くなります。体調不良で免疫力が下がってしまうと、やはり感染リスクは高まります。こうした観点から考えて、ホコリ対策は必要不可欠だといえるでしょう。
掃除をしても、またすぐに
ホコリっぽくなるのはなぜ?
まず、ホコリは毎日発生するということです。カーテン、寝具、洋服、タオルなど、家の中にはホコリを発生させる布製品で溢れています。また髪、ふけをはじめとする皮膚の老廃物など、人間から発生するものもあります。つまりホコリは、人が生活することで必ず一定量増え続けるのです。
しかし、掃除をしても次の日にはまた床がホコリっぽい、と感じることはないでしょうか。その原因の一つは、ホコリが宙に舞ってしまっていることです。
例えば、乾いた洗濯物を取り込んで、どさっと床に置いた時、床のホコリは部屋中に舞い上がってしまいます。このように人が少し急な動きをするだけでも、風が起き、ホコリが舞い上がります。この状態で掃除をしても、掃除が終わった後に、宙に舞ったホコリが床に落ちてきて、すぐに床がホコリっぽい状態に逆戻りします。
ホコリは空気に流される
さえぎる壁が溜まり場
宙に舞うということは、それくらい軽く空気に流されるのがホコリの特性とも言えます。つまり、部屋の空気の流れを見ると、その流れの先がホコリの溜まり場だということが分かります。
例えば、夏は冷房を使用しますが、この冷気が当たる場所が、ホコリの溜まり場になります。そこにベッド、ソファーがある場合、そのくつろぎの場所そのものが、ホコリが溜まる所になっているといえます。配置を変えるか、こまめに掃除することを心掛けてください。
また冬場であれば窓際です。外気温が低いため、窓も冷えがちです。これにより窓際は空気が下に流れるコールドドラフトという現象が起きます。窓際にベッドを密着させると、そこがホコリやカビなどの溜まり場になりますので、窓から10㎝程度間を開けるようにするとよいでしょう。つまり、空気の流れを見ることで、ホコリが溜まりやすい場所を特定することができます。
その観点で考えると、空気の流れを遮る壁はホコリの溜まりやすい代表的な場所です。壁は垂直ですのでホコリが堆積することはないのですが、ある一定量は必ず付着しています。それが壁際の床に落ちて溜まったり、宙に舞い上がって巡回して壁に付着するということを繰り返していたりします。ここでいう壁は何も部屋を仕切っている壁だけでなく、障害物全てです。家具家電の側面もホコリが付着しやすい壁になります。
また、階段もホコリが溜まりやすい場所です。冬場1階のリビングで温められた空気は、そのまま2階に上がりますので、その通り道になる階段の壁は特にホコリが溜まりやすいのです。家における壁の面積は大きく、ここに付着するホコリを除去できれば、かなりの量を減らすことができます。
ホコリが床に落ちる時間帯に
「上から下、奥から手前」
では、ホコリを除去するためにどういった掃除をすればよいのでしょう。まず、一番目のポイントは、そーっと、静かに掃除をするということです。
そのため、時間帯は、朝がおすすめです。寝ている間にホコリが床に落ち、掃除に適した状況になっています。ただし寝室の場合は、起床直後に布団から出る際、ホコリが舞い上がってしまいますので、朝は効果的ではありません。起床後1時間以上経ってから行うのが良いでしょう。
また掃除の順序ですが、原則は上から下、奥から手前です。例えば背の高い食器棚があれば、その上を奥から手前に一方向に乾拭きしてください。この時、ホコリを静電気で静かにからめとる化繊ハタキがおススメです。壁のホコリを取る際も、上から下へ化繊ハタキでホコリをなでるように取ってください。
ホコリを舞い上がらせない化繊ハタキ
まとめて週末ではなく
毎日少しずつが大切
ホコリは時間が経つと有害化します。そのため、まとめて週末、月末、大晦日と構えるより、ほんの数分でよいので、毎日行うほうが、有害化する前にホコリが除去でき健康を守ってくれます。
しかし、家中を毎日掃除すると大変です。前述のとおり、ホコリの溜まりやすい場所であるエアコンの送風先、窓際、吹き溜まり、それと新型コロナウイルス対策で最も重要なテーブル上だけをさっと拭くだけで、かなり効果的に成果が出ます。
この連載で毎回お伝えしていますが、基本は「一方向の乾拭き」。これを、場所を絞って毎日数分さっとするようにしましょう。気合いをいれ過ぎないのが、長続きするポイントです!
<今回のポイント>
・ホコリは時間が経つと有害化
・宙に舞わせないことが大切
・階段、壁がホコリの溜まり場
・上から下、奥から手前が基本
※この記事内容は、執筆時点2020年7月7日のものです。
松本 忠男(まつもと ただお)
医療環境管理士。株式会社プラナ代表取締役、ヘルスケアクリーニング株式会社代表取締役。30年以上にわたる病院清掃の経験を生かし、医療、介護施設、清掃会社、家庭にそのノウハウを提供している。著書に『ウイルス・カビ毒から身を守る!』(扶桑社)など。