今年のボーナスは大幅ダウン?!
非常時の家計管理のコツ

新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業で大幅な売り上げ減少が免れない状況です。個人も、フリーランス・会社員を問わず、収入ダウンが見込まれる人は少なくないでしょう。雇用、給与が安定している企業の会社員でも、今年の夏のボーナスは大幅ダウンとなる可能性大。年間を通じた支出の多くをボーナスに頼っている家計の場合、6月、7月以降にじわじわと影響が出てくると思われます。
国から1人につき10万円の「特別定額給付金」が支給される予定ですが、家計によっては、給付金以上の収入ダメージを受けるかもしれません。ダメージを最小限に食い止めるコツをお伝えしましょう。

監修:

深田 晶恵

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家計のダメージを最小限にする

 これまで受けた相談の中で、家計が非常事態に陥ると、必要以上に貯蓄を取り崩してしまうケースをたくさん見てきました。
 たとえば、リーマンショック発生後のボーナスが全額カットされたという人。本来足りなくなるお金は50万円程度のはずだったのに、定期預金の解約金100万円を普通預金に入れたところ、数ヵ月後には使い切ってしまった…。残りの50万円は家計の混乱状態で、何に使ったかわからないと言います。
 がん治療が長引き、収入ダウンに加え、医療費などの支出が増えた人の多くは、「がんになりお金がかかったので、貯金を取り崩して大変だった」と言います。しかし、健康保険の「高額療養費制度」や、がん保険からの給付金といった収入を考慮すると、実は家計の収支はプラスになっているはずなのに…、というのもありがちなケースです。
 不測の事態に陥った時、誰もが冷静でいられるとは限りません。動揺してしまい、家計の収支まで頭が回らず、混乱状態になるケースは本当によくあります。しかし、不測の支出を予測したうえで対策を取ると、家計のダメージを最小限に食い止めることができます。非常時だからこそ、しっかりと家計に向き合いましょう。早速、今やるべきことの手順を見ていきます。

まずはこれ!やるべき手順

①「通常の時」の毎月収支を確認

 通常時に、毎月の収支がプラスであればいいのですが、赤字だとすれば、その分はボーナスで補てんをしているはず。今年のボーナスが大幅にカットされると、赤字補てんができなくなります。また、在宅ワークや時短勤務の実施で残業代が減ったことにより、支出が収入を上回るようになる人もいることでしょう。
 ボーナス支給月までの赤字累計を計算し(=ボーナスで補填する額)、同時に毎月のムダな支出を見直し、赤字額縮小に取り組みます。

②過去の実績に基づいて、ボーナスに頼っている支出を洗い出す

 人によって異なりますが、一般的なボーナス支出には次のようなものがあります。

・住宅ローンや奨学金、クレジットカードのボーナス返済
・固定資産税、自動車税など税金納付 
・毎月の赤字を補てんするお金
・子どもの大学等の学費、塾の夏期講習や部活動の遠征などの費用
・電化製品・家具などの購入費用
・帰省や家族旅行の費用
・ボーナスからの夫婦の小遣い など

 昨年の実績を参考に書き出してみましょう。手書きでも、表計算ソフトを使ってもどちらでもOKです。まず、手を動かすのが大事。

 次の表は、よくあるケースのサンプルとして、子どもが2人(中学生と高校生)いる40代会社員の家庭を例に作ってみました。

 住宅ローンのボーナス返済がないにもかかわらず、ボーナスからの支出予想額は64万円にもなります。典型的な「ボーナス依存型」の家計です。昨年の世帯でのボーナス手取り額は66万円で、収支は+2万円。ほぼ使い切っているので、ボーナスからの貯蓄はできていません。
 もし、次の夏のボーナスが昨年の半分(33万円)となってしまったら、どうなるでしょう。昨年と同じようにお金を使うと31万円足りなくなります。だからと言って、足りないお金は「定期預金や財形貯蓄を解約するしかない」と考えるのは早計です。
 貯蓄を取り崩す前に、マイナス分を少しでも減らす努力をしましょう。なぜなら、「本当に必要なお金」を把握して、その分だけ補てんするようにしないと、必要以上にイザという時の貯蓄を使ってしまうからです。
 上の表に「〇△×」の欄を設け、本当に必要な支出なのかを考えてみましょう。

 コロナウイルスがいつ終息するかは予測できないので、複数パターンのシミュレーションが有効となります。

 A.「夏までに終息しないパターン」
 外出やイベント自粛が続くだろうから、子どもの部活動の遠征や家族旅行などの費用は発生しないと思われます。このパターンだと、△の出費は発生しないため、〇の確実な支出のみ。ボーナスの額によっては、なんとか収まるかもしれないですね。

 B.「夏までに終息するパターン」
 夏までに終息すると、うれしい反面、最も収支が悪化するパターンとなるでしょう。ボーナスが大幅ダウンに加え、先程の△の出費も発生するからです。
 このようにボーナスが出る前に支出の洗い出しをしておくと、見直しできる支出項目も発覚し、収支悪化を改善することができます。

③足りない分だけ「いざという時の貯蓄」を使う

 前述の「足りないお金は50万円なのに、定期預金の100万円を使い切ってしまった」といったケースは本当に多いです。
 定期預金を解約したお金は、生活口座に入金せずに、日頃使わない口座に入れて、必要なお金だけ使っていくと、「何となく使い切ってしまう」ことを避けることができます。

④貯蓄型の積み立てを一時ストップする

 毎月やボーナスの収支が大幅に赤字になりそうなときは、一定期間、積立貯蓄をストップするのも対策の一つとなります。検討対象となるのは、財形貯蓄、銀行の自動積立預金などです。収支が改善した時に、再開すればいいのです。
 ただし、つみたてNISAなど投資信託の積み立てをしている人は、貯蓄型商品と別の対処法となります。投資信託の積み立ては、ストップせずに継続をしたほうがいいでしょう。毎月の定額購入での積み立ては、株価が下がっている時には、高い時よりも多くの口数を購入することができます。ここで積み立てをやめると、安い時に多くの口数を買うというメリットを得られなくなります。家計が耐えられるなら、積み立ての継続を検討しましょう。

※この記事内容は、執筆時点2020年4月30日のものです。

深田 晶恵(ふかた あきえ)
1967年生まれ。ファイナンシャルプランナー、株式会社生活設計塾クルー取締役。外資系電気メーカー勤務を経て、96年にファイナンシャルプランナーに転身。著書に『共働き夫婦のための「お金の教科書」』(講談社)など。

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