災害時、避難所生活で
注意しておきたいことは?

災害による直接的な被害は免れたとしても、避難所で生活することになった場合に、睡眠不足や過労など様々な要因で健康を損なってしまうことがあります。ここでは特に注意したいこととして「体調管理」についてのポイントをご紹介します。

監修:

山村 武彦

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体を動かし、避難所運営には
積極的に関わろう

 多くの人が1つの空間にいることになる避難所では、プライバシーが保てないストレス、気温の変化、睡眠不足、栄養の偏り、感染症など、さまざまな環境要因で体調を崩しやすくなります。とくにペットがいたり、認知症の高齢者や乳幼児がいたり、トイレが近くてほかの人に迷惑になるからなどと、避難所近くの駐車場などで車中泊を選択される方々もいます。しかし、狭い空間で長時間同じ姿勢でいることはエコノミークラス症候群などさまざまな疾患の要因となります。なるべく軽いストレッチや体操などで体を動かすことを心がけましょう。そして、元気で動ける人はストレス解消のためにも避難所の運営や手伝いに積極的に関わりましょう。

「睡眠」の質を高める
準備と工夫を

 避難所で起こる体調不良の大きな原因の1つが「睡眠不足」。二次持ち出し袋の中にアイマスクや耳栓を入れておくなど、なるべく睡眠がしっかり確保できるよう工夫を。また、厚手の靴下を履いて足元を温めると眠りやすくなります。

水分補給を意識しておこう

 避難所生活では血栓が肺の静脈に入り込んでしまうエコノミークラス症候群が多発します。加えて、トイレを我慢するために水分補給を控えることで、脳梗塞などの疾患をひきおこしてしまうことも。避難所の食生活は水分が少ないものになりがちなので、意識してこまめに水分補給や軽い運動を心がけましょう。

「衛生管理」と「感染予防」の徹底と協力

 こまめな手洗い、室内ではマスク着用、大声での会話自粛、音が出るものはイヤホンで聴くなど、周囲に迷惑をかけないようにすることが避難所生活のマナーです。災害直後は断水や停電で手洗いや換気がままなりません。消毒や定期的に窓や出入口を開放するなど入所者の積極的な協力が必要です。

「災害関連死」を防ぐために

 「災害関連死」とは、建物の倒壊や火災、津波などの直接的な災害による被害ではなく、避難生活での体調悪化や過労など、間接的な原因で死亡すること。復興庁の集計によると東日本大震災の震災関連死者数は、2022年3月時点で3,789人。2016年の熊本地震ではピーク時183,800人が避難生活となりましたが、273人が災害関連死で亡くなられました(2022年3月時点 出典:平成28(2016)年熊本地震等に係る被害状況について[第322報])。避難生活を劣悪な環境にしないためにも、事前の備えが重要なのです。

※この記事内容は、執筆時点2023年8月1日のものです。

山村 武彦(やまむら たけひこ)
防災システム研究所所長。防災・危機管理アドバイザー。1964年の新潟地震以来、災害現地調査は250カ所以上、全国での講演は2,500回を超える。多くの企業や自治体の防災アドバイザーを歴任する実践的防災・危機管理の第一人者。

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