命を守るためのアクション
災害時のAtoZ

いつ地震や台風におそわれても不思議ではない。しかし感染症が懸念される今、災害が発生すれば従来と異なる対応が必要です。このような「複合災害」に備えて、今すぐに備蓄と行動のAtoZを身につけておきましょう。

監修:

山村 武彦

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感染症×大規模災害に備えた
防災備蓄はマナー

 今、大災害が発生すれば、感染拡大防止対策の壁が立ちはだかります。その上、断水で手洗いもままならず、停電で換気も悪くなる。感染症と自然災害の同時発生は、いくつもの困難が掛け算で絡み合う複合災害です。では、何をどう備えれば?まずは「安全な場所に住む(する)防災」の実践です。「安全な場所に住む(する)ための防災」には、家の耐震化、家具の転倒落下防止対策、ガラス飛散防止対策などはもちろん、ライフラインが止まっても家族が生活できるための準備が大切です。大規模災害に備えるには、少なくとも1週間分の備蓄が必要。下 A の備蓄品を参考に、高齢者や乳幼児向けに追加して用意すべきものなどを家族で話し合ってみてください。

備えあれば憂いなし!
自宅と車に用意しておくべき備蓄品

 東日本大震災発生時、東京でも食料や生活用品が店頭から消えたことを覚えているかと思います。災害時に本当に物を必要としている被災地への供給を妨げないためにも、普段から一定の備蓄をしておくことは、災害の多い日本に住む者のマナーだといえます。
 また、災害時の行動について事前に家族と話し合うことも重要です。年に1、2回の頻度で、緊急連絡先や避難方法などを話し合いましょう。その際、3つのポイントを念頭において話し合うことを心がけてください。

 災害時の行動①連絡方法

 離れた親戚や友人の家に、家族一人ひとりが安否確認の連絡を行う「三角連絡法」を実践しましょう。

 災害時の行動②集合場所

 お墓や学校など、家族が落ち合う場所を決めておきましょう。

 災害時の行動③在宅避難と分散避難

 大雨・土砂災害等による警戒レベル4「危険な場所から全員避難」というのは、危険区域の危険な家に住む人が対象です。自宅の安全が確認できた人は、自宅で暮らす「在宅避難」が原則です。電気、水道が止まっていても感染症の心配もなく、よく眠れます。避難する場合も、避難所だけでなく、2階への垂直避難、自治会館、親戚・知人宅、車中避難などの「分散避難」を検討します。
 また、地震や火災が起きた場合でも、迅速に行動できるようにしておきます。まずは、下 B の手順を頭に入れておいてください。

出火時等の対処法4つの手順

1 知らせる

どんな災害も、まずは周囲に知らせる行動が大切です。声をあげたり笛を吹いたりして、周りに注意を促します。津波のときも、向こう三軒両隣に知らせて逃げることで、逃げ遅れる人が少なくなります。

2 消す

火災が発生したら、すばやく消しましょう。出火から3分以内なら、消化器や水を使って消せる場合があります。ただし、天井に燃え移ると素人ではなかなか消せません。プロの消防士に任せましょう。

3 助ける

余裕があれば、他の人を助けることにも意識を向けましょう。ただし、自分の身の安全が最優先です。避難時にパニックにならないよう、落ち着いた行動をとるだけでも他の人の助けになります。

4 逃げる

すばやく避難しましょう。津波の危険がある場合はできるだけ高い場所へ避難してください。火災が発生した場合、他の建物への延焼を防止するために、部屋のドアや窓を閉めて空気を遮断します。

 次に、シチュエーション別の命を守る行動です。緊急地震速報や地震の揺れを感じたら、閉じ込められないように、まず避難経路の確保が大切です。

 シチュエーション①自宅

 すぐに玄関のドアを開けましょう。比較的狭く柱の数が多い玄関は安全ゾーンと見なされ、避難に適しています。実際、被災地で倒壊した家を数多く見ましたが、玄関だけがそのまま残っている家が多くありました。

 シチュエーション②オフィス

 ドア付近にいる人はドアを開け、安全ゾーンに移動、間に合わなければ机の下などに潜ってください。

 シチュエーション③地下鉄

 車内に煙が充満したり浸水してきたら、係員の指示がなくても非常用コックを開いて避難しましょう。係員の指示を待つのが原則ですが、常にその指示が正しいとは限りません。

 シチュエーション④屋外

 ガラスや看板が落ちてくる危険がありますので、まず建物から離れましょう。車を運転していたら、ハザードをつけて徐行、左側に寄せて停車します。
 いずれの場合も、その場の安全ゾーンを確認し、自ら避難して命を守る必要があります。火元やガス栓の確認は揺れが収まってからで構いません。
 津波の危険がある場合、警報の有無にかかわらず避難し、最悪を想定して遠くより高所に逃げ、避難した後は警報解除まで、元の場所に戻らないようにしましょう。たとえ1人でも避難するよう心がけてください。
 また、インターネットやスマートフォンでの情報収集も有効。事前に公的機関の防災メールや防災アプリを入れておくと安心です(下 C 参考)。ただし、SNSはデマが流れることもあるので、複数媒体での確認が大切です。

安否確認や情報取得に活用したい
インターネット&アプリ

※この記事内容は、執筆時点2022年8月1日のものです。

山村 武彦(やまむら たけひこ)
防災システム研究所所長。防災・危機管理アドバイザー。1964年の新潟地震以来、災害現地調査は250カ所以上、全国での講演は2,500回を超える。多くの企業や自治体の防災アドバイザーを歴任する実践的防災・危機管理の第一人者。

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