地震対策は身の回りから
命を救う防災収納

地震による家具の転倒・落下は、命を奪う危険性があるだけではなく、避難経路や備蓄品の保管場所をふさぐ恐れも。日頃から防災収納を心がけましょう。

監修:

澁川 真希

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防災収納を意識した安全対策と
被災時の備え

 津波やそれに伴う家屋の倒壊、火災など、多くの被害をもたらした東日本大震災や、震度7が2回発生した熊本地震。その際、背の高い書棚や食器棚が覆いかぶさるように倒れてきて命の危険を感じた方、あるいは床に散乱したガラスの破片でケガをした方もたくさんいらしたようです。そうした家具転倒・落下による被害は、震源地から遠く離れた場所でも数多く報告されました。
 その他にも、家具転倒・落下によって避難経路がふさがれて避難が遅れた、せっかく保管しておいた防災グッズや備蓄品が取り出せないといったケースもあります。常日頃から防災を意識した整理整頓を心がけることは、地震対策の第一歩であり、とても重要なもの。今回は、そんな「防災収納」の基本となる「安全対策」と「被災時の備え」を紹介します。

◆安全対策① 家具の転倒防止

 書棚や食器棚、タンスなど、背が高くて重い家具は、つっぱり棒やL字金具などの転倒防止グッズを使ってしっかりと固定しましょう。同時に、重たい物を低い位置に収納すれば、落下時のリスクを減らすだけでなく、家具の安定にもつながります。また、ベッドやソファなど、座ったり寝たりするスペースに家具が倒れてくる危険性はないか、避難経路をふさぐ恐れがないかなど、家具の配置にも注意しましょう。

◆安全対策② 物の散乱防止

 物の散乱を防止するには、2段階の対策があります。まずは、棚やタンスの扉や引き出しが開いたり、物が飛び出したりしないように、滑り止めグッズや耐震ラッチを取り付けましょう。そのうえで、棚の中の小物や書類などはボックスケースに仕分けして収納してください。材質の軽い紙製のケースであれば、万が一落ちてきたとしても比較的安全です。また、キッチンの鍋や包丁などの出しっ放しは危険。使った物はすぐに片付ける習慣をつけましょう。リビングやキッチン、玄関など、場所別に防災収納術を解説した下記のイラストも参考にしてみてください。

◆被災時の備え① 分散収納

 災害時の命綱とも言える備蓄品は、1カ所に収納すると家具の転倒やガラスの飛散、あるいはドアが歪ゆがんで部屋に入れないことで取り出せなくなる可能性があります。玄関先、ベッドの下、床下収納など、各部屋の空きスペースに分けて保存するようにしましょう。
 ちなみに、備蓄品の食料は、非常食よりも普段食べている缶詰やレトルト食品、乾物などがおすすめ。震災が起きた非常時だからこそ、日常の食べ物を食べたほうが心の平穏につながるためです。日常生活でも消費しながら、一定量を保って備蓄する「ローリングストック法」を実践すれば、消費期限切れの食料を廃棄する手間や無駄も省けます。

◆被災時の備え② 持ち出しリスト

 複数の場所に分けて保存した備蓄品は、災害時に取り出しやすいように、非常持ち出し袋にまとめて入れておきます。一方で、携帯電話や充電器、銀行の通帳など、普段使うものは入れておくことはできません。そうした普段使用するものは、いざというときに忘れないように持ち出し品としてリスト化し、玄関の靴棚などに掲示しておきましょう。
 そして、被災時の備えで重要なのは、備蓄品の場所や持ち出しリストを家族全員で共有すること。特に小さなお子さんでも覚えやすい場所、手の届く場所に収納し、半年に一度くらいのペースで場所と内容の再確認を行ってください。
 防災意識が高まっている近年では、粉ミルクや紙おむつなどを買い置きしている家庭も増えていますが、それらは“外に持ち出せて初めて意味を成すもの”。防災収納の大切さを日頃から意識するようにしましょう。

集合住宅における防災収納の注意点

 東京消防庁の調べによると、東日本大震災で家具転倒の発生割合が高かったのは「11階以上」が47.2%と、約半数を占めています。今回紹介した「安全対策」の①と②を徹底するようにしましょう。備蓄品の保存も必須ですが、自宅はもちろん、自分の住む集合住宅にどのくらいの備蓄があるか、防災設備があるか、防災マニュアルの有無など、備えをあらかじめ確認しておくことも大切です。
 また、集合住宅では天井の構造上、天井つっぱり棒が効かないケースがあります。天井の下地がどのようになっているかを確認してから設置するようにしましょう。

※この記事内容は、執筆時点2020年8月1日のものです。

澁川 真希(しぶかわ まき)
整理収納アドバイザー。整理収納サービス「コンフォートスタイル」代表。2012年、仙台から東京へ転居。東日本大震災での自身の被災経験をもとに「減災整理セミナー」などを開催している。

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