ストレスってどうして起こる?

近年、仕事や人間関係などにおける不安やストレスに悩む人が増えています。ストレスは私たちの心や体にさまざまな影響を与えるため、早めの対処が重要です。この記事では、全3回を通じてストレスに対する考え方をお伝えするとともに、ストレスを溜めず、上手に解消する方法をご紹介します。

監修:

山本 晴義

〉〉〉プロフィール

「ストレス」の正体は一体なに?

 普段からよく耳にする「ストレス」という言葉。しかし実は、ストレスがどのようなものか、よく分かっていない、という方も多いのではないでしょうか。ストレスとは、外部からの刺激などによって体の内部に生じる反応のこと。ストレスの原因となる刺激を「ストレッサー」といい、大きく外部的刺激内部的刺激に分かれます。

■外部的刺激

・物理的ストレッサー  暑い・寒い、気圧の変化など
・環境的ストレッサー  騒音、振動、悪臭、空気汚染など
・肉体的ストレッサー  病気、ケガ、過労、睡眠不足、肥満、痩せすぎ など

■内部的刺激

・社会的ストレッサー  仕事上のトラブル、重い責任、残業、借金 など
・精神的ストレッサー  近親者の病気や死、失恋、挫折、不安、焦り など
・人間関係ストレッサー 職場・家族・親戚・近所・友人とのトラブル など

 外部的刺激から生じるストレスは、服装や室温を調節したり、環境を変えたり、ケガが治ったりすれば自然と良くなることがほとんどです。しかし、対人関係や多忙な仕事による不安や焦りなど、内部的刺激から生じるストレスは、心に大きな負担が掛かるため、簡単に回復することができません。
 ストレスが加わると、ある程度までは体に備わる防衛反応によって適応しようとしますが、適応能力の限度を超えると、本能や感情と関係の深い大脳辺縁系や、臓器や器官をコントロールしている自律神経、病気や感染から体を守る免疫系などがバランスを崩し、心だけでなく、体にも大きな影響を及ぼします。

心身に与える影響は
人によってさまざま

 ストレスが心身に与える影響を「ストレス反応」と呼びます。ストレス反応には、頭痛や肩こりなどの「身体的反応」。苛立ち、不安などの「心理的反応」。さらに、暴飲暴食、多量飲酒などの「行動的反応」と、いろいろな出かたがあります。その人の弱い部分に出やすく、個別に出ることもあれば、複合的に出ることもあり、人によってさまざまです。

【ストレス反応の例】

身体的反応…頭痛、肩こり、腰痛、目の疲れ、胃痛、下痢、便秘、不眠、食欲低下、不整脈、血圧の変化など
心理的反応…苛立ち、不安、落ち込み、意欲・集中力の低下、無気力など
行動反応…暴飲暴食、多量飲酒、仕事のミス、遅刻・欠勤、暴言・暴力、散財など

【今のストレス状態の目安】

0~2個 快調
小さなストレスはあるものの、日常生活の上では影響はありません。現在の状態を維持するよう心掛けましょう。

3~6個 人並み
現代人のストレス度としては平均的。これ以上ストレスを溜めないよう、キープすることが大切です。

7~10個 要注意
このままの状態でストレスを溜めていくと、心身の不調を引き起こす可能性があります。生活習慣を見直したり、休養を取る必要があるかもしれません。

11~15個 重症
相当ストレスが溜まっているようです。すでに日常生活に支障があるのでは?体調が優れないようであれば、すぐになんらかの対処が必要かもしれません。

ストレスを放置すると
本格的な病気を招くことも

 ストレス反応をそのまま放置してしまうと、やがて本格的な病気を招いたり、人に迷惑を掛けたり、それによって人間関係を悪くしたり、信頼関係を損ねてしまうことも。すると益々ストレスが大きくなってしまう悪循環を招いてしまいます。健康を守るためにも、早期にストレッサーが何であるかを突き止め、対処し、心身の症状を和らげていくことが大切です。

ただし…適度なストレスは良い効果もある

 ストレスは一概に悪いものではありません。なぜなら、仕事の責任やプレッシャーなどの適度なストレスは、やる気を起こさせたり、生産性を高めたりする効果もあるからです。自分の中にあるストレスが、心身に負担を掛けるものなのか、そうでないものかを見極めるとともに、心身に悪影響を与えるストレスは取り去る方法を身に付けたり、人生を豊かにしてくれる良いストレスは日常のスパイスとしてうまく利用したりするなど、ストレスと上手に付き合っていくことが必要なのです。

まとめ
 ストレスが生じる原因には、「外部的刺激」と「内部的刺激」があり、特に注意が必要なのは心に大きな負担が掛かる「内部的刺激」です。心身の健康を守るためにも、早期にストレスを生じさせている原因を突き止め、対処することが大切です。また、適度なストレスは良い刺激として利用するなど、ストレスと上手に付き合っていくことも必要です。 

 次回は「ストレスを溜めない体づくり」をテーマに、ストレスに対応する習慣や心掛けについてご紹介します。

※この記事内容は、執筆時点2023年11月1日のものです。

山本 晴義(やまもと はるよし)
横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本内科学会認定内科医、労災補償指導医、日本心身医学会心身医療「内科」専門医、日本心療内科学会専門医・指導医、日本精神神経学会専門医、社会医学系専門医心療内科医。2000年より同病院の社会奉仕活動として「勤労者 心のメール相談」を開始。24年間で18万件以上の相談に応えている。

TOPページに戻る