家計見直しのポイント②
一度見直せば効果が継続する
「固定費」を優先的にカット
人生100年といわれる今、老後の生活、中でも「お金」について心配されている方が多いようです。この不安を少しでも解消するために「老後のお金を守る」をテーマに、専門家のアドバイスをシリーズでお送りしています。今回は、家計見直しのポイント②についてご紹介します。
節約の効果は
掛け算で考えることが大事
前回記事の「家計決算書」のシートを記入して、支出が把握できたら、生活費の見直しをしていきます。
■ポイントは固定費の見直し
支出には公共料金や食費など毎月の金額が変わる「変動費」と通信費など毎月決まった額が出ていく「固定費」があります。変動費を削減しようとすれば、毎日の努力が必要ですし、家族の協力も欠かせません。その点、固定費は、一度見直しをすれば翌月から支出が減り、努力しなくても効果が継続します。
また、節約の削減効果は掛け算で考えることが大切です。たとえば、スマホ料金を1台で月3,000円節約できたとしても「大した違いはない」と考えてしまうかもしれません。しかし、一項目数千円の節約を侮ってはいけません。そもそも「一つの見直しで2万円」の支出削減効果が得られる節約など数少ないのです。
数万円の節約をしたいなら、数千円の無駄をいくつか見直し、積み重ねていかなければなりません。仮に計月2万円の支出削減に成功すると10年で240万円も貯蓄を増やすことができます。効果の大きさを理解すれば、その他の項目の支出見直しの意欲もアップするはずです。
保険と通信費の見直しで
貯蓄力をアップ
■最初の見直しは「生命保険」
固定費の見直しで最初に着手すべきは生命保険です。ポイントは「公的保障や勤務先の保障を確認すること」です。必要な保障には主に死亡保障と医療保障の2つがありますが、「すでに持っている保障」も少なくないのです。たとえば、公的年金には遺族年金の制度があり、死亡保障の代わりになります。また会社からは死亡退職金や弔慰金などが受け取れるかもしれません。一方で医療費には健康保険の高額療養費制度によって自己負担の上限額が決まっています。これらを考慮すると自分で準備すべき保障は意外に少ないものです。
■次の見直しは「通信費」
次に着手すべきは通信費です。ポイントは「プランを見直して少しずつ支出をカット」「使っていないサービスは思い切って解約」の2つです。たとえば、通常のスマートフォン(スマホ)は端末の分割払いを含めると月8,000円前後かかります。それを格安スマホに変えただけで月額料金が半額になるケースもあります。また、最近は固定電話をほとんど利用していない家庭も多いでしょう。思い切って解約すれば数千円の節約になります。
※「家計見直しのポイント③支出の見直しで獲得したお金は資金の目的に応じて積立てる」もご覧ください。
※この記事は、都道府県民共済グループ発行「老後のお金を守る本」の抜粋です。
内容は、執筆時点2024年8月1日のものです。
深田 晶恵(ふかた あきえ)
ファイナンシャルプランナー(CFP®)。会社員を経て、1996年にFPに転身。すぐに実行できるアドバイスをするのがモットー。近著に「まだ間に合う! 50代からの老後のお金のつくり方」(日経BP)などがある。