今、注目されるビタミンD
免疫力を高めて健康的な毎日を

健康に欠かせない栄養素として最近注目されている「ビタミンD」。その効果や上手な摂取方法、お手軽レシピをご紹介します。

監修:

斎藤 糧三(医学監修)・柴田 真希(料理監修)

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病気を遠ざけるビタミンD
しかし日本人は不足・欠乏状態

 皆さん、1日どのくらいの時間、日光に当たっていますか?実は、お弁当を公園で食べたりするだけで、健康維持に必要なビタミンDが作られるんです。

 ビタミンDの主な働きは、腸のカルシウム吸収量を増やすこと。ビタミンDが不足すると、食事でカルシウムをとってもうまく吸収されず、骨がもろくなってしまいます。幼少期では、筋力低下や低身長を招く「くる病」、成人では「骨軟化症」、高齢者では「骨粗鬆症」などの発症リスクが高まります。

 さらに近年では、ビタミンDのさまざまな役割が解明されています。ビタミンD欠乏は、がん、インフルエンザなどの感染症、動脈硬化、認知症、高血圧、糖尿病、花粉症などのアレルギー性疾患、関節リウマチなどの自己免疫疾患、うつなど、多くの疾患に関連していると考えられているのです。

 ビタミンDは主に紫外線を浴びることによって、皮膚で産生される栄養素。「ビタミンではなく、ホルモンと見なすべき」とする説もあり、「日光ホルモン」と呼ばれることもあります。元来、人間は必要なビタミンDの半分以上を日光の紫外線によって産生してきました。しかし、現代人は屋外での活動が減り、日光にほぼ当たらずに生活している人も多いでしょう。屋外にいてもSPF30の日焼け止めを塗っていると、皮膚でのビタミンDの産生量は5%以下に落ちてしまいます。日本人は紫外線ガードの意識が高く、女性で8割以上、男性で6割以上の人が、ビタミンDの不足または欠乏状態であるというデータ (※) もあります。

毎日の日光浴を習慣にして
足りないときは食事で摂取

 2020年版の「日本人の食事摂取基準」によると、ビタミンDの摂取の「目安量」は、成人で1日あたり8.5μg(マイクログラム)です。さらに、欧米の研究者たちは「欠乏症リスクの軽減のためには、1日50〜100μgが望ましい」としています。健康増進のためにビタミンDをとる場合、「食事摂取基準」の目安量では不十分なのです。

 ビタミンDが豊富に含まれている食品は少なく、一部の魚や魚卵類、キノコ類などに限られます。ビタミンDを100μg摂取するためには、紅鮭やマイワシで300g、キノコ類で含有量がトップのキクラゲでも茹でたもので約1kgが必要です。

 食事だけで十分なビタミンDを摂取するのは現実的ではないので、やはり基本は日光にあたるのがよいでしょう。長時間だと紫外線による発がんリスクも気になるので、紫外線が強い正午前後なら20分程度を目安にしましょう。露出している肌面積が広いほうが、短時間で多くのビタミンDを産生できます。

 日光浴を習慣にしつつ、天気が悪い日や紫外線が弱い冬季は、ビタミンDを含む食材を意識してとりましょう。サプリメント等で補う場合は用量に注意してください。

ビタミンDがしっかりとれる
簡単レシピ

 ビタミンDを多く含む食品は、鮭、マイワシ、しらす干し、サンマ、イクラ、あん肝、キクラゲ、マイタケなど。種類が少ないので、食べ飽きないようにいろいろなレシピに挑戦してみてください。

■鮭ときのこの和風パスタ

 鮭とマイタケでビタミンDをたっぷりと。鮭はしっかり火が通るように、ふたをして焼きましょう。

●材料(2人分)

生鮭…2切れ(200g)
マイタケ…1/2袋(50g)
シメジ…1/2袋(50g)
シイタケ…2枚(40g)
青じそ…4枚
スパゲッティ…200g
【a】
オリーブオイル…大さじ1
ニンニク(みじん切り)…1かけ
【b】
スパゲッティのゆで汁…100ml
しょうゆ…大さじ1
めんつゆ(3倍濃縮)…大さじ1
黒こしょう…少々


●作り方


(1)生鮭は3cm角くらいに切る。マイタケ、シメジは手でほぐし、シイタケは石づきを取り、薄切りにする。青じそは千切りにする。
(2)鍋に湯を沸かし、スパゲッティを袋の表示時間よりも1分短めにゆでる。
(3)フライパンに【a】を入れて中火にかけ、ニンニクの香りがたったら鮭を入れてふたをして2~3分焼く。裏返し、マイタケ、シメジ、シイタケを入れて炒める。
(4)全体に火が通ってきたら、(2)のスパゲッティと【b】を入れて炒め合わせる。器に盛り、青じそをのせたらできあがり。

■キクラゲとトマトの卵炒め

 キノコ類の中でビタミンDが最多のキクラゲを中華風炒めに。トマトを加えたら、水が出ないように手早く炒めて。

●材料(2人分)

卵…2個
トマト…1個(200g)
玉ねぎ…1/2個(100g)
キクラゲ(乾)…5g
ごま油…大さじ1
【a】
オイスターソース…大さじ1/2
しょうゆ…大さじ1/2
黒こしょう…少々


●作り方


(1)キクラゲをぬるま湯に10~15分つけて戻す。
(2)トマトを16等分のくし形に切り、玉ねぎを薄切りにする。キクラゲが大きければ食べやすい大きさに切る。
(3)ボウルに卵を入れて溶きほぐす。フライパンにごま油の半量(大さじ1/2)を入れて中火~強火にし、フライパンが温まったら卵を入れて、半熟になったら皿に取り出す。
(4)そのままのフライパンに残りのごま油(大さじ1/2)を入れて中火にかけ、玉ねぎを入れて炒める。火が通ってきたらキクラゲとトマト、(3)の卵を入れ、【a】を加えて味を調えたらできあがり。

※データ:Nanri(2011), Serum 25-hydroxyvitamin d concentrations and season-specific correlates in Japanese adults. J Epidemiol.21, 346-353

※この記事内容は、執筆時点2021年8月2日のものです。

斎藤 糧三(さいとう りょうぞう)/医学監修
医師。日本機能性医学研究所所長。1973年生まれ。日本医科大学卒業後、産婦人科医に。その後、美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立。2008年、「機能性医学」の普及と研究を推進するため、日本機能性医学研究所を設立。著書に『病気を遠ざける! 1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンDの実力』(講談社+α新書)他。

柴田 真希(しばた まき)/料理監修
管理栄養士。女子栄養大学短期大学部卒業後、給食管理、栄養カウンセリング、食品の企画開発などに携わり、独立。現在、TV番組の料理コーナー出演、出版・Web媒体へのレシピ提供、食品メーカーや飲食店のメニュー開発やプロデュースなどを手がける。『知識ゼロからのスーパーフード入門』(幻冬舎)他、著書多数。

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