その食品ほんとうに大丈夫?
安全な食品の選び方

近年、産地偽装や異物混入など、食品にまつわる事件が相次いで発覚しています。ここでは、私たちの生活において欠かすことのできない食品の正しい選び方について詳しく説明します。

監修:

垣田 達哉

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表示やPOPに対して常に関心を持つことが大切

 2016年1月の賞味期限切れカツ横流し事件や、2017年2月のJA米卸の産地偽装疑惑など、食品にまつわる偽装問題が後を絶ちません。われわれの食卓を脅かすこれらの問題は、なぜなくならないのでしょうか。
 食品表示の偽装問題が減らない理由は大きく分けて2つあります。
 まずは、偽装によって事業者が巨額の利益を得ることができるためです。野菜や肉などの生鮮食品は、同じ食品であっても産地や種によって値段が異なります。例えば、輸入した牛肉を「国産」として表示すると、事業者は高値で売って利益を得ることができるのです。
 同様に、消費・賞味期限の偽装も利益になりやすいといわれています。商品の期限切れは事業者にとって損失となり、廃棄にもコストが発生します。そこで食品の消費・賞味期限を改ざんして先延ばしにすることで、損失を出さずにむしろ利益にしているのです。
 偽装がなくならないもう1つの理由として、消費者側の知識が乏しく、偽装を見抜けないことが挙げられます。先ほどの牛肉の例をとっても、輸入品と国産品の見分けはつきにくく、加工食品の原材料なども手が加えられているため識別は容易ではありません。そのため、「バレない」という考えから偽装がはびこっているのです。

 偽装問題において被害者の立場にある消費者は、どのように安全な食品を選べばよいのでしょうか。
 最も重要なポイントは、食品選びの際に表示ラベルやPOPに関心を持つことです。買い物をする際に、値段だけでなく、表示ラベルも意識して見るようにしましょう。食品に関するさまざまな情報が手に入るはずです。具体的に確認すべき項目を、
下記の「食品選び三箇条」にまとめました。

 特に注意が必要なのが加工食品。原材料に何が使用されているかを確認する際、その産地にも注目しましょう。原材料の産地表示が義務付けられているのは、うなぎの蒲焼きなどごく一部で、日本の工場で加工されれば製造地は国内になります。原材料の産地が表示されているかどうか、しっかりとラベルを見て確認する習慣が大切です。

 表示を理解できれば、同様の食品と比較もできるようになり、より安全な食品を選べるようになります。これらのポイントを念頭に置きつつ、ご自身が積み上げてきた食品の相場観と照らし合わせて買い物をする習慣をつけましょう。「あまりにも高い」「安すぎて不気味」など、価格に対して違和感があった場合は購入を避け、ご自身が納得できる食品を選んでください。

栄養成分表示を見る際は「カロリー」と「塩分」に注目

 2015年4月、「食品表示法」が施行され、食品の表示が消費者にとってわかりやすくなり、同時に食品を比較しやすくなりました。

 なかでも、大きく変更されたのが加工食品の表示です。2020年3月末に猶予期間が終わり、4月以降に製造・加工された食品はすべて新しい表示になっています。
 主な変更項目の1つに「栄養成分表示」の義務化があります。一部を除き、消費者向けに包装されたすべての加工食品に、「エネルギー(熱量)」「たんぱく質」「脂質」「炭水化物」「食塩相当量」が表示されるようになりました。食品を選ぶ際は、カロリーと塩分を過剰に摂取していないか、「エネルギー」と「食塩相当量」の欄を意識して見るようにしましょう。

 これまで、食品中の塩分に関する情報はナトリウムの量を示すものしかなく、食品に塩分がどれほど含まれているのかひと目ではわかりませんでした。今後は、「食塩相当量」として格段に識別しやすくなります。加工食品に含まれる塩分量の多さに驚くはずです。
 また、混同しやすかった原材料表示欄の原材料と食品添加物の間に、スラッシュ(/)などが入り明確に区分されるようになりました。

 食品を選ぶ際、「食品添加物」の数は注意すべきポイントの1つです。添加物には、食品の酸化を防止するものや、おいしく見せるための着色料など、さまざまな種類があります。しかし、これらの添加物は決して身体に良いものとはいえません。例えば、加工肉などの黒ずみを防ぐ目的で使用される発色剤(亜硝酸ナトリウム)は、体内で発がん物質を生成するといわれており、食品への使用量が厳しく制限されています。また、さまざまな食品に使われているカラメル色素やリン酸塩も、摂取し過ぎると健康への悪影響が心配されています。いずれの添加物も少量の摂取であれば問題ないといわれていますが、摂り過ぎには十分な注意が必要です。「卵の黄身は、色が濃いほうが新鮮で栄養価が高い」と、どこかで耳にしたことはないでしょうか。確かに、黄身の色が濃い卵はおいしそうに見え、高値で販売されることもあります。しかし、一部の養鶏場では、黄身の色を濃くした「栄養入りの卵」にするために、エサに着色料や栄養素などを添加しているケースがあります。普通の卵にも栄養価は十分に含まれていますので、卵から添加物を摂取する必要はありません。
 卵のように、意外な食品にも添加物が使用されている場合があります。表示ラベルをしっかり確認し、添加物の種類が多いものは避けるようにしましょう。

※記事内容は、執筆時点2020年8月1日のものです。

垣田 達哉(かきた たつや)
消費者問題研究所代表。食品問題評論家、食品表示アドバイザーとして、マスコミでの論評や執筆、講演活動を精力的に行う。食品表示問題の第一人者である一方、POSシステム、物流システム、バーコードシステムなどにも精通している。著書に『面白いほどよくわかる食品表示』(商業界)、『選ぶならこっち! 食べて安心な食品の見分け方』(WAVE出版)など多数。

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