先進医療って最先端の治療法?
“先進”という言葉のイメージから、最先端の治療を受けられると思われがちな「先進医療」。でも、「それってベストな治療法なの?」「医療費の負担は?」という疑問も湧いてきます。ここでは、意外と知られていない先進医療についてご紹介していきます。
先進医療にかかる医療費は自己負担!
まずは、先進医療を受けた場合の自己負担額を見てみましょう。厚生労働省のHPに掲載されている下記の図のように、総医療費100万円、うち先進医療の費用が20万円だった場合、先進医療部分を差し引いた保険からの給付分80万円の3割である24万円と、先進医療部分20万円を合わせた計44万円を支払うことになります。
最大の注意点は、先進医療において、その医療技術にかかる費用はすべて自己負担であること。下記の図では先進医療部分が20万円ですが、がんの先進医療には重粒子線治療(約309万円)、陽子線治療(約270万円)など高額なものがあるので注意が必要です。
先進医療が優れた治療法とは限らない!
近年、「先進」という言葉から、「先進医療は最先端の優れた医療技術で、病気が治る可能性が高い」というイメージが蔓延していますが、これは大きな誤解。先進医療は最先端の医療であることに違いはありませんが、一方で、まだ効果が広く認められていない実験的な治療でもあるのです。
先進医療の健康保険の適用が認められていない理由は、ずばり、厚生労働省が安全性・有効性の面で一般に普及できる治療だと認めていないから。どうしても先進医療を受けたい場合には、治療効果の不明瞭さ、治療費の全額自己負担といったリスクをしっかりと考慮しましょう。
標準治療で済むのがベストな選択!
私たちが普段受けている治療は、健康保険が適用される標準治療です。「標準」という言葉からは、つい平均的で、先進医療よりも劣る治療であるとイメージしがちですが、これも大きな誤解。先進医療の臨床結果が認められ、安全性や有効性が認められて格上げされたものこそ「標準治療」であり、先進医療よりも優れた“最善の治療”なのです。
つまり、有効性が確認されている標準治療の範囲内で病気が治ることがベストな選択。「がんを罹ったらすぐに先進医療を」という早まった選択をせずに、何が自分の病気にとってベストな治療法なのか、医師としっかり相談する機会を設けてください。
※記事内容は、執筆時点2020年8月1日のものです。
内藤 眞弓(ないとう まゆみ)
1956年生まれ。ファイナンシャルプランナー、株式会社生活設計塾クルー取締役。大手生命保険会社勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。主な著書は「医療保険はすぐやめなさい」(ダイヤモンド社)。日経マネー「生保損保業界ウォッチ」(日経BP)を隔月連載。