季節の不調を解消!
<6月 熱中症>

毎年のように「猛暑」「酷暑」など、夏の気温上昇が話題になっています。それに伴い、体調不良になる方も増加しており、最悪、亡くなる方も出ている状況です。特に子どもや高齢者は重症化しやすく、屋外だけではなく、屋内でも注意が必要といわれています。このような季節性の不調の症状や原因、予防・対処法を専門の先生に教えてもらうこのシリーズ。今回は「熱中症」についてご紹介します。

監修:

森 勇磨

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まずはセルフチェック!

 以下の症状に多く当てはまる場合、「熱中症」の傾向があります。これらの症状がみられた場合は、すぐに応急手当てを行うか、医療機関への受診をおすすめします。

「熱中症」の原因と症状は?

 熱中症は、梅雨明けから真夏にかけて、気温や湿度が急激に高まる時期に多く発生します。私たちの体は、体温を一定に保つために「汗をかく」「皮膚から熱を逃がす」などの仕組みで熱を調節していますが、気温や湿度が高い環境下ではこの仕組みがうまく働かなくなり、体に熱がこもってしまうことがあります。これが熱中症の主な原因です。

 熱中症は年齢、性別にかかわらず起こり得ますが、特に注意が必要なのは体温調節が未熟な子どもと、加齢により感覚が鈍くなる高齢者です。また、屋外作業や運動の機会が多い人も、リスクが高まる傾向があります。
 水分や塩分の摂取不足、疲労や睡眠不足、そして、炎天下での運動や長時間の外出も、熱中症を引き起こす大きな要因に。強い日差しやアスファルトからの照り返し、エアコンのない室内や車内なども、体温上昇を助長する要因になります。季節の変わり目や急な暑さに油断せず、日頃からの体調管理が重要です。

 熱中症は、症状の程度によって「軽度」「中度」「重度」と段階的に進行していきます。最初は軽いめまいやだるさといった症状でも、適切な対応をしなければ命にかかわる重篤な状態へと進行する可能性があります。大切なのは、いつもと違う様子を感じたときにすぐ対処すること。症状の段階ごとに適切な対応を取ることで、重症化を防ぐことができます。

熱中症の症状と段階(軽度~重度)

症状の段階症状対応
軽度
  • めまい、立ちくらみ
  • 顔のほてり
  • 筋肉のこむら返り(足がつる)
  • 大量の汗
  • 涼しい場所に移動させる
  • 衣服をゆるめて休ませる
  • 冷たい水や経口補水液を少しずつこまめに飲ませる
  • 水分・塩分を補給する
中度
  • 頭痛、吐き気、気分の悪さ
  • 体がだるい、力が入らない
  • 集中力の低下、判断力の低下
  • 安静にし、体を冷やす(とくに首、わきの下、足の付け根を冷やす)
  • 水分・塩分を補給する(意識のあるうちに摂らせる)
  • 安静にして無理をさせない
  • 症状が改善しない場合は医療機関へ
重度
  • 意識がもうろうとする
  • けいれん、まっすぐ歩けない
  • 呼びかけに反応しない
  • 高熱が出る(40℃前後)
  • すぐに救急車を呼ぶ
  • 冷却タオルや氷で体を冷やす(体を濡らした状態で、うちわなどで風を当てると気化熱で急速に冷却できる)
  • 救急隊が来るまでできる限り冷却を続ける

暑さだけが原因じゃない? 屋内でも起こる理由

 熱中症は屋外だけの問題と思われがちですが、屋内でも多く発生します。特に注意が必要なのが、風通しが悪く、湿気や熱がこもりやすい部屋。エアコンを使っていない窓を閉め切った空間では、知らないうちに体温が上昇しやすくなります。
 また、屋内では暑さを自覚しにくく、水分補給を忘れがちに。気づかないうちに脱水が進み、頭痛や倦怠感といった熱中症の症状が現れることもあります。「夜間熱中症」といって、寝ている間にかく汗で水分が失われ熱中症になることもあるので、就寝時の湿度・温度管理にも注意を払いましょう。
 特に子どもや高齢者は体温調節機能が弱く、室温がそれほど高くなくても体に熱がこもりやすくなります。エアコンの使用やこまめな水分補給、風通しの良い服装や環境づくりを心がけ、室内でも油断せず熱中症対策を行いましょう。

~先生からのアドバイス~
「熱中症」の予防と対処法

 熱中症を防ぐためには、日頃からの習慣づけが大切です。まず基本となるのが、こまめな水分・塩分補給の習慣化。汗をかくと体内の水分だけでなく塩分も失われるため、水だけでなく経口補水液や塩分を含む飲料・食品を使って、上手に塩分を体に取り入れることが必要となってきます。
 喉が渇いていなくても、意識して飲むことが予防につながります 。目安として、1日6〜8回、コップ1杯(150〜200ml)ずつを意識してこまめに摂取すると良いでしょう。屋外では帽子や日傘での日差し対策を、室内ではエアコンや扇風機を上手に使い、こまめな換気を心がけましょう。

 また、暑さに徐々に体を慣らしていく「暑熱順化(しょねつじゅんか)」も効果的。無理のない範囲で軽い運動を継続することで、汗をかく力や体温調節機能が高まり、熱中症に強い体づくりにつながります。さらに、睡眠や食事、生活リズムを整えることも、体力を維持するうえで重要なポイントです。
 加えて、毎朝発表される「熱中症警戒アラート※」をチェックする習慣を取り入れることで、その日の行動の目安を立てることができます。予防とあわせて、症状が出たときの適切な対処法も押さえておきましょう。

「熱中症」まとめ


熱中症は炎天下の屋外だけでなく、風通しの悪い屋内やエアコンを使っていない部屋でも起こります。特に体温調節が苦手な子どもや高齢者は発症リスクが高く、注意が必要です。予防の基本は、「こまめな水分・塩分補給」「暑さ対策」「体調管理」。これらを日常生活の中で習慣づけることが、熱中症を未然に防ぐポイントです。万が一、症状が現れた場合は早めの対応が何より大切です。少しでも異変を感じたら無理をせず、重症が疑われる場合は迷わず医療機関や救急に連絡しましょう。日頃から正しい知識と備えを持つことが、命を守る第一歩になります。

※熱中症予防情報サイト(環境省)
https://www.wbgt.env.go.jp/alert.php

※この記事内容は、執筆時点2025年6月11日のものです。

森 勇磨(もり ゆうま)
ウチカラクリニック代表・Preventive Room株式会社代表・産業医・内科医・労働衛生コンサルタント
東海高校・神戸大学医学部医学科卒業。研修後、藤田医科大学病院の救急総合内科にて救命救急・病棟で勤務。救急現場での経験から、「病院の外」での正しい医療情報発信に対する社会課題を痛感し、YouTubeでの情報発信を決意。2020 年2月より「予防医学 ch/ 医師監修」をスタートし、現在チャンネル登録者は42万人を突破し、総再生回数は4000万回を超える。株式会社リコーの専属産業医として、予防医学の実践を経験後、独立。産業医としての「企業と人を健康にする予防医学」、さらには「従来の枠組みにとらわれず、病院の外でできるあらゆる予防医学」のアプローチに挑戦して、1人でも後悔する人を減らしたいという思いから、Preventive Room 株式会社を立ち上げる。現在はオンライン診療に完全対応したクリニック「ウチカラクリニック」を通じて、オンライン診療の適切な形での社会実装、セルフケアの推進に取り組んでいる。
https://uchikara-clinic.com/

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