人生100年時代を踏まえて
データから見えてくる日本の家計の「現状」

過去4回の連載にわたって、「人生100年時代」といわれるこれからは、世の中が大きく変わるであろう未経験の時代に突入することをお伝えしてきました。その「過渡期」ともいえる現在、すでに社会の変化はデータに現れている部分があります。第5回目では、特徴的なデータをいくつかご紹介したいと思います。

監修:

八ツ井 慶子

〉〉〉プロフィール

変化している今の日本の家計の
現状をデータから探る

 今、日本の社会も経済も大きく変化してきて、その「過渡期」にあります。以下の代表的なデータについて一緒に見ていきましょう。

①人口減少

②家計の二極化(貯蓄を保有している世帯と保有していない世帯の変化)

③生活意識調査

④年金財政

①人口減少

人口が減り
少子高齢化が急速に進展

 2020年の人口(実績値)をもとに、40年前の人口(実績値)と40年後の人口(予測値)を比較してみました。私たちが何となく感じている「人口減少」と「少子高齢化」のインパクトをより具体的に見ていただけたらと思います。日本全体の総人口は減少しつつあり、その内訳である人口分布を見ると、高齢者割合の上昇がかなり進んでいるのが分かります。2020年からのパンデミックの影響を考えると、少子化は上記予測値よりもさらに進展しているものと推測されます。

②家計の二極化

貯蓄ゼロ世帯が増え、家計が二極化
老後に不安を感じている人も多数

 金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、2人以上世帯のうち「金融資産非保有世帯」、つまり貯蓄をほとんど持っていない世帯の割合は、バブル期には非常に低水準に落ち着いていました。しかし、最近では1960年代の数値をはるかに超え、2017年に最高値の31.2%まで上昇しました。おおよそ3世帯に1世帯の割合で貯蓄がないと回答しているわけです。2018年に調査方法の変更があり、見た目の数値はいったん下がって見えますが、その後は再び上昇傾向にあります。

 加えて単身世帯では、「金融資産非保有世帯」の割合は34.5%にまで増えます(2022年)。こちらも3世帯に1世帯は貯蓄ゼロということになります。
 同調査で2人以上世帯に聞いた「老後の生活を心配している理由」の1位が、「十分な金融資産がないから」で68.0%、2位が「年金や保険が十分ではないから」で52.1%(複数回答)となっています。

③生活意識調査

経済成長の一方で
国民の生活意識は「苦しい」と感じている

厚生労働省、「国民生活基礎調査」より筆者作成

 世帯ごとの生活意識を聞いた、厚生労働省のデータを見てみましょう。グラフの「大変苦しい」と「やや苦しい」を足した割合を見てみると、1986年には40%程度だったものが、1998年に50%を超え、2014年には60%を超えています(当時、アベノミクスで株価上昇が続いていた時期ですが、消費増税が行われた年でもありました)。
 直近の2021年も50%を超えていて、半数以上の世帯が生活を「苦しい」と感じているのです。かつて、6割近くの世帯が「普通」と感じていた生活意識も、4割程度に落ち込んでいます。

④年金財政

年金財政は悪化
さらに少子高齢化が追い打ちに

 日本の公的年金制度は「賦課方式」といって、その年に納められた年金保険料は、同年受給すべき世帯に分配されます。つまり、ご自身が納めた保険料が積み立てられて、自分自身が将来受け取る仕組みではありません。したがって、いまの年金受給者を支えているのは、いまの働く世代であり、これを「世代間扶養」といいます。
 データ①で見ていただいた通り、現在少子高齢化は進展中です。ということは、年金財政を支える働く世代が高齢者世代に比べて減少していきますから、年金財政を悪化させる方向に働きます。

 確認できる直近10年の年金財政の変化を見てみたのが、上記データ④です。
 「保険料収入①」は、働く世代(20~64歳)の人口減少にも関わらず、ここ10年では増加傾向にあります。その要因は2つあると考えられます。一つは、年金保険料が年々引き上げられてきたこと(2017年度で上昇は停止)、次に、パートやアルバイトなどの短時間労働者に対する社会保険が適用される制度改正が行われたことです。

 とはいえ、高齢者層(65歳以上)の増加もあって「給付費②」も増加傾向にあります。高齢者人口増加の割合ほどに給付費が増加していないのは、年金支給額の減少が影響しているものと考えられます。
 今後も少子高齢化が進展することは、データ①で確認していただきました。ということは、年金はますます減少するかもしれない、ということが考えられます。

まとめ
 少し衝撃的なデータもあったかもしれません。こうしたデータはあまり知る機会がないと思いますが、一国民として知っておきたい内容ではないでしょうか。
 これまでの連載でお話させていただいた通り、日本社会は大変化の真っ只中です。ですが、急に明日変わるわけではなく、いわばグラデーションのように徐々に変化していきます。そのグラデーションの一端を、上記データから少しでも感じていただけたら幸いです。

 こうした変化の中にあって、さまざまな社会問題が浮き彫りになるのは、従来の諸制度(税や社会保障制度等)が、いまの私たちの多様化している暮らし(家計)にマッチしていないことの表れではないでしょうか。だとすれば、制度のミスマッチは、いずれ行き詰まります。となれば、大きな変革が起きておかしくありません。でも、できるだけ早めに気が付いて対処できたら、また違った道があるのだと思います。

 世界第3位の経済大国といわれる日本で、これだけ多くの方が老後に不安を抱えている現状も、何も突然起こったわけではありません。社会構造の「変化」に対応しきれなかった小さなズレが、時間をかけて大きくなってしまったのでしょう。
 いま起きている「変化」は未経験であり、海外にも事例はありません。現代に生きる私たち一人ひとりが他人任せにせず、自ら情報収集し、自分で考え、どういった行動を取っていくかがとても重要だと思います。

 人間は、変化を避けたがる動物なのだそうです(現状維持が楽で安心)。でも、そうも言っていられません。小さいことでいいので、「いつも」と違う行動を取ってみてはいかがでしょうか。いつもとは少し違う道を通ってみる。降りたことのない駅で降りてみる。味付けを変えてみる。普段は着ない色の洋服を着てみる等々。

 2020年からのパンデミックを経て、すでに私たちの暮らしは大きく変わりつつあります。最近の金融経済の動きも、これまでの理屈からは説明しきれないことが次々起きています。否が応でも変化はやってきます。まずは心の準備をしておきましょう。
 そして、次回、第6回(最終回)では、もう少し詳しく家計への対応方法についてお話いたしますので、ぜひご覧ください。
 今回は、皆さんお一人おひとりが、あらためて現代を考えるキッカケにしていただけたら大変ありがたいです。

今回のポイント


・人口が減り、高齢者の割合が増えている
・経済成長とはうらはらに、国民生活は苦しくなっている
・諸制度が、いまの家計にミスマッチしている
・大きな変化に備えて、心の準備を

出典:

①人口減少

厚生労働省、我が国の人口について
総務省統計局、人口推計 平成22年国勢調査による基準人口
総務省統計局、平成27年国勢調査 年齢・国籍不詳をあん分した人口(参考表)
国立社会保障・人口問題研究所、日本の将来推計人口(平成29年推計)

②家計の二極化

金融広報中央委員会、『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和4年調査結果』
金融広報中央委員会、時系列データ(昭和38年から令和4年まで) ― 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]|知るぽると

④年金財政

厚生労働省、『公的年金の単年度収支状況(令和2(2020)年度)』
厚生労働省、公的年金の単年度収支状況(令和2(2020)年度)【年金財政の観点から制度横断的に比較・分析したもの】
国立社会保障・人口問題研究所、人口統計資料集

※この記事内容は、執筆時点2023年9月6日のものです。

八ツ井 慶子(やつい けいこ)
生活マネー相談室 代表、家計コンサルタント、ファイナンシャルプランナー、城西大学経済学部非常勤講師。大学卒業後、大手信用金庫に入庫。2001年 家計の見直し相談センターの相談員として、FP活動を始める。2013年 生活マネー相談室を立ち上げ、家計相談、セミナー講師、各種メディアへの出演、執筆などで活躍中。

TOPページに戻る