「電気・ガス」が止まったら?
知っておこう!ライフラインへの備え②
普段、当たり前のように使っている水道・電気・ガスなどのライフライン。大規模災害が起こるなどして、これらが止まったら、たちまち不便な生活を強いられてしまいます。そこでこの企画では、ライフラインが止まってしまったときにどのような対応をすればいいのか、また普段から備えておくべきことについてご紹介します。2回目は、「電気・ガス」が止まったときの対応と備えをお伝えします。
電気・ガスが止まると困ること
現代に生きる私たちの生活は、電気・ガスに支えられています。照明や洗濯機、掃除機などの家電の稼働、スマホやパソコンなどの閲覧、エアコンなどの空調、お風呂の湯沸かしや火を使った調理もできなくなってしまい、くらしは不便になります。
また、公共の施設や設備、交通機関も電気・ガスに頼っているため、止まると私たちの生活は混乱をきたしてしまいます。
災害時には、「信号が停止し、電車も動かず移動ができない」「携帯を充電するために長蛇の列ができる」などさまざまな影響が予想されるほか、「夏場にエアコンが使用できないことによる熱中症の死者が出た」といった二次災害が起こる可能性もあります。
電気・ガスの復旧めやす
たとえば、2019年9月に千葉で発生した台風15号における長期停電では、完全復旧までに19日かかりました。また、今後起こると予想されている南海トラフ巨大地震や首都直下地震のような大規模地震が発生した場合、復旧までに最長で電気は1ヶ月、ガスは2ヶ月かかるといわれています。もっと回復が早いという方もいますが、被害が甚大な場合、復旧が長期化する恐れさえあります。備蓄は、できれば1週間分以上が理想。難しい場合は、3日分程度の備えをしておく必要があります。最低限のものでも、用意しておくのと、しておかないのでは大違いです。面倒がらずに、万が一の時の備えをしておきましょう。
電気が止まった場合に備えて用意しておくと便利なもの
・懐中電灯/ランタン/ヘッドライト
停電時、夜間は暗闇の中での行動を強いられます。倒れた家具や散らばったガラス片などの中を歩く可能性もありますから、周囲を照らせる懐中電灯やランタン、ヘッドライトなどを用意しておきたいものです。ろうそくを思い浮かべる人もいるかもしれませんが余震の際に火事が起こる可能性もありますので電池で稼働するものの方がおすすめです。日常的に使うものではないため「いざというときに電池が切れていた」というケースもよくあります。電池のチェックも忘れずに行ってください。
・電池
懐中電灯やラジオなど、災害時に必要なアイテムの多くが電池で動いています。せっかくそろえても使えなければ意味がないので、電池は多めに用意しておきましょう。また、電池には単1から単4、リチウム乾電池、ボタン電池などさまざまなサイズや種類があります。現在使用しているものを洗い出してストックしておくことをおすすめします。
<コラム>
電池の種類が違っても電気製品を使える
「電池チェンジャー」
「単3電池しかないけれど、単1電池や単2電池が必要な製品を使いたい」という場合に便利なのが100円ショップなどで購入可能な「電池チェンジャー」。電池チェンジャーがあれば、いろいろな種類の電池をそろえなくても済むので、備蓄も楽になります。
・モバイルバッテリー
現代の生活に欠かせないスマートフォン。災害時の連絡や情報収集の役に立つものです。たとえ通信できない場合でも、貴重な情報やデータを保存していることもありますのでスマートフォンの充電は切らさない方がよいでしょう。停電時でも困らないよう、モバイルバッテリーは準備してください。名刺サイズくらいのコンパクトでも2~3回くらいフル充電できる10,000ミリアンペア以上のものがおすすめです。
・カセットコンロ、カセットボンベ
停電時はIH調理器だけでなく、電気を使うガスコンロや給湯器も使えなくなります。また、地震の場合は、ガスの供給も止まってしまう可能性も高いでしょう。お湯を沸かしたり、非常食を温めたりするにも、カセットコンロとボンベを用意しておきましょう。水を入れるだけで、食品などをあたためられるヒートパックなども揃えておくと便利です。
<コラム>
調理だけじゃない!
いろいろ使える「カセットボンベ」
カセットボンベで稼働する電気ストーブもありますが、カセットボンベ発電機があれば、本体にコンセントがあるので電気毛布や扇風機も使えます。カセットボンベの備蓄目安としては、調理用としてだけでも、1日1.5本×7日。電気ストーブや扇風機も使うのなら、その分は別途用意する必要があります。たとえば、電気ストーブは、1本で3.5時間ほど暖を取れます。消費期限は7年が目安となっているので、ローリングストックしながら常備しておきましょう。
・家庭用蓄電池
電気も備蓄の時代になりました。たとえエアコンなどは使えなくても、夏場は扇風機、冬場は電気毛布くらい使える容量の家庭用蓄電池が必要な時代です。
停電が起こるとエアコンなどの冷暖房器具が使えなくなります。夏は暑さで熱中症にかかる恐れがありますので涼感シートやポータブル扇風機などを用意するのもいいでしょう。また、冷蔵庫も使えなくなりますが一定期間はクーラーボックスの役割を果たすので、保冷剤代わりにペットボトルの水を凍らせておくことをおすすめします。
また、窓ガラスが割れて、外気が室内に入ってしまうケースも考えられます。ガラスを割れにくくするようなシートをあらかじめ貼っておいたり、万が一、割れてしまったときには穴をふさいで補強できるように、段ボールやガムテープも用意しておくといいでしょう。
・ラジオ
災害時には、テレビから情報を得られなくなる可能性があります。また、スマートフォンも充電が切れたり、電波が繋がらなくなる可能性もあります。災害時の情報収集に頼りになるのがラジオです。スマートフォンで情報収集が可能な場合もありますが、電源を節約するためにもラジオを活用したほうがベター。ラジオは1台必ず準備しておきましょう。
<コラム>
ローリングストックのコツ
ローリングストックでは、食料や水だけでなく、電池やカセットボンベなどの電気・ガスの代用品、さらにはウェットティッシュなどの衛生用品、日用品も備蓄しておきましょう。
ローリングストックのコツとして、まずは「古いものから使う」こと。私は「横並び備蓄法」と呼んでいます。1日分ずつに分けて、7日分を横に並べています。まず左端の1日目を消費して、新しいものを買ってきたら、一番右端にそれを入れます。左端から消費、新しいものは必ず右端に補充していくとローリング(回転)させられます。
まとめ
たとえ災害での被害は免れても、十分な備えがないと二次災害によって命に危険がおよぶこともあります。ガスや電気を確保できれば、食事や体温の維持、情報収集など、さまざまな場面で役に立ちますので、備蓄は欠かさないようにしておきましょう。
過去の災害時、特に大地震の後はライフラインがストップし、その上、道路が損傷した地域では流通が止まり、物資が届かないこともありました。備蓄は「1週間以上分」が理想です。しっかり備えておきましょう。
※この記事内容は、執筆時点2023年8月16日のものです。
岡部 梨恵子(おかべ りえこ)
防災士。ファイナンシャルプランナーと整理収納アドバイザーなどの資格も活かし、防災グッズや備蓄品、被災後の食や暮らしの知識についてもセミナーを開催。わかりやすい語りでメディアへの出演も多数。