騙されない!
手口が巧妙化する詐欺⑥

「自分は対処できる」「自分は狙われない」、そう思っている人が被害にあうことも。そこで、身近に潜む詐欺のリスクと、その対処方法について専門家にお伺いしました。全6回のシリーズ、最終回は「ニセ電話詐欺」の事例と対処方法についてご紹介します。

監修:

西田 公昭

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思い込みを悪用した詐欺
落ち着いて対処すれば騙されない!

 前回ご紹介した「なりすまし詐欺」と合わせて、話題になることの多い「ニセ電話詐欺」。例えば、子どもや孫を装った人物から電話が掛かってきて、「事故を起こしてしまって示談金が必要」、「手術をするのに手術費用がたりない」といった話をされ、お金を騙し取られる手口があり、こちらは「オレオレ詐欺」とも呼ばれています。家族の声を聞き違うはずがない、という思い込みによって騙されてしまうのですが、なぜそう思い込んでしまうのか、Fさんの事例で見てみましょう。

Fさんの事例

娘から「病気が見つかり入院している。すぐに手術をしたいが、お金が足りない。貸してくれないか」という電話がありました。慌てて貯金を下ろし、娘の友人と名乗る代理人にお金を渡しました。時間を置いて娘に電話した所、入院なんかしていないと…。電話では最初から名乗っていませんでしたし、落ち着いて話を聞くべきでした。

先生から一言

ショッキングな内容で不安を煽り、冷静さを失わせることが「ニセ電話詐欺」の特徴です。相手が名乗らなくても「母」と呼んだからには、「この電話は娘から」と無意識に思い込んでしまうことが騙される原因となります。

ニセ電話詐欺に
騙されてしまうのはなぜ?

 思い込みに合致しない情報を無視したり、過小評価してしまうことを心理学の世界では「確証バイアス」と呼び、誰もが陥ってしまう怖い「思い込み」です。「ニセ電話詐欺」はこの正常性バイアスを悪用した詐欺です。Fさんの場合は「電話の相手は娘であるはず、なら私を頼ってくるはずだ」というバイアス(思い込み)がかかり、「何か変だな?」という不安を認識できなくなったため騙されてしまったのです。

上記の表はダウンロードしてお使いいただけます。

西田先生の

ワンポイントアドバイス


●突然の電話でお金を要求されたり、お金をくれるから何かしろ、という電話はすべて怪しいです。まずは冷静に調べましょう。
●たとえ家族だと思っても、「お金」の話題が出たら電話を切ってかけ直しましょう。
●知らない電話番号からの電話には出ない、詐欺予防電話を導入するなど対策しておくとなお良いですね。もっと良いのはスマホのTV電話に切り替えましょう。
●家族間でよくコミュニケーションを取り、近況などを共有しておくことも予防になります。

不審な電話がきたら・・・

■警察署の相談窓口

#9110へお電話ください

騙された!と感じたときは・・・

■警察へ

すぐに110へ電話してください

※この記事内容は、執筆時点2022年1月12日のものです。

西田 公昭(にしだ きみあき)
1960年徳島県生まれ。 立正大学心理学部教授、博士(社会学)。 94年スタンフォード大学客員研究員、2003年静岡県立大学准教授を経て現職。 心理学研究の第一人者として、新聞やテレビなどのマスメディアでも活躍。日本脱カルト協会代表。詐欺や悪徳商法、カルトなどのマインド・コントロール研究の第一人者として知られる。著書に『マンガでわかる! 高齢者詐欺対策マニュアル』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

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