これならできる!
かんたん家計管理

ものの値段が上がって、光熱費も上昇。「家計のやりくりを真剣に考えなくては」と思っていても、家計簿をつけるのは大変です。そこで、「ここさえ分かっていれば大丈夫」というポイントを、専門家に解説してもらいます。

監修:

清水 香

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家計の流れが分かれば、
家計簿をつけなくてもOK

 「面倒でどこから手をつけたらいいのか分からない」と苦手意識を持ってしまう人が多い家計管理。そもそも何のために行うのでしょうか?
 自分らしい暮らしを実現していくためには、必要なことにお金が回るよう家計を運営していくことが大切です。特に今は給料が増えにくく、さまざまな支出増で家計への負担がどんどん重くなり、お金を増やしにくい時代なので、持っているお金を減らさないことが大事です。家計管理ができるようになると、お金が貯めやすくなるので、自分らしい暮らしを保ちつつ、将来の不安も小さくできます。
 家計管理は仕組みを整えて流れがつかめれば、家計簿をつけなくてもOKです。まずは、年間の収入と支出を実績ベースで把握しましょう。

 最初に、年間の手取り収入を確認します。源泉徴収票で一番大きな金額が額面の年収になります。ここから社会保険料、所得税(源泉徴収税額)、住民税(住民税の通知書の「特別徴収税額」を見るか、給与明細の住民税額×12回で計算)の3つを引いた金額が年間の手取り収入になります。これが実際に使える金額です。配偶者や家族が働いていたら、その分も同様に出して、世帯の手取り収入を把握しましょう。
 支出については、去年1年間で貯まったお金を手取り収入から引きましょう。出てきた金額が、1年間で使ったお金(支出)となります。貯まったお金は、財形貯蓄、積立貯蓄、生活費口座に残ったお金などの1年間で増えた分を足して計算します。

 図表①の例では、年間支出が603万円となっています。「こんなに使っていない!」と驚くかもしれませんが、実際になくなったお金を知ることが大切です。

 次に、年間支出の仕分けを行います。家賃・住宅ローン、水道・光熱費、通信費、車関係のお金、学費・習い事、保険料など、口座振替やクレジットカードで払ったものは、家計簿をつけていなくても支払った金額の記録が残っているはず。口座取引の記録やカードの明細を見て、分かる金額を書いていきます。しばしば不明となるのが現金で払った部分で、この部分は「使途不明金」としてくくっておきます。

 ここまでやったら、来年はどうお金を使うかを決めてしまいましょう。大きな変化がないものは今年ベースで予算を取り、使えるお金を振り分けていきます。たとえば、これまで年間100万円貯蓄していた人が、来年150万円貯蓄したいと思ったら、使えるお金を50万円減らして調整します。貯める金額は、将来必要になりそうなお金を想定して、今いくら貯めておかなくてはならないのかを逆算して決めましょう。食費などは、1カ月に使っている食費を出して、実績額をベースにして無理のない予算額にしましょう。次の年に決めた予算を超えないように心掛けて暮らせば、貯蓄額を確保できて赤字になりにくくなります。

キャッシュレスを
目的別に使うと管理がラク

 最近は、電子マネーやコード決済などのキャッシュレス決済を利用することも増えていて、家計全体を把握しにくくなっています。家計管理がしやすくなるような方法でキャッシュレス決済を使いましょう。
 私が実践している方法をご紹介します(図表②)。

ポイント❶
 給料からまず、貯蓄する分を先に振り替えます。これは、自動積立定期などに振り替えられるように仕組みを作っておきます。余ったら貯めるは難しいので、先に貯めるのがポイントです。

ポイント❷
 口座引き落としやクレジットカード払いになっている家賃や水道光熱費、食費などの支払い金額を生活費口座に入れます。

ポイント❸
 クレジットカードは、生活費用と私的支出用の2枚に分けて使っています。PayPayは生活費に使うと決めていて、引き落とし先を生活費用のクレジットカードにしています。そのため、口座の明細とクレジットカードの明細を見れば、生活費にいくら使ったかが分かるようになっていて、家計簿代わりになります。使い過ぎたと思ったら、次の月に支出を抑えるなど、管理がしやすい仕組みになっています。私の場合は、自営業なので、これに加えて経費用の口座を作って管理しています。

ポイント❹
 現金で引き出すのは、子どもに渡す分です。また災害に備えて、ある程度の現金は手元に置くようにしています。

 PayPayなどのコード決済や、Suicaなどの交通系など、さまざまなキャッシュレス決済がありますが、キャンペーンなどに合わせておトクなほうを使っていると何にいくら使ったのか把握できなくなる恐れがあるため、利用する決済サービスの数を絞って目的を分けて使うようにすると見える化できて、家計管理に役立ちます。生活費を一元管理できれば、いつでもスマホのアプリで支出項目を見て、ムダな支出をチェックすることができます。

支出の見直しは
保険料と通信費から

 支出の見直しで効果が高いのは固定費です。中でも保険料は、高齢者でも年間30万円くらい払っていることは珍しくありません。年を取ったら入院するリスクが高くなるといいますが、高額療養費制度もあり、実はそれほど大きなお金が掛かるわけではありません。子どもが生まれたときは必要だった保障も、子どもが育つにつれて子どもに掛けるお金の総額は減っているため、40~50代の人は保障を減らせる可能性があります。

 通信費も大きな見直しポイントです。大手通信会社のセカンドブランドが出たときに乗り換えた人はそれほど多くなく、面倒くさがって動いていない人が多いため、まだまだ下がる余地があります。通信費はサービス内容が常に変化しているので、その時々でどうしたら安くなるのかを調べたり考えたりして、実行していきましょう。
 また、毎月定額を支払うサブスクも利用頻度を確認して解約するのも効果的です。

貯め時を逃さず
前倒しで貯め始めよう

 もう少し長いスパンで見ると、人生にはお金を貯めやすい時期があることが分かります(図表③)。

 結婚する前、結婚して子どもができる前、子どもが小さいうちなどです。若いころはしたいことがいろいろあり、気付くと貯め時が過ぎていることが多いようです。少しずつ貯める習慣をつけると、後々ラクです。子育て期や高齢期になると貯めにくくなるので、なるべく前倒しで貯めていくことが重要です。

※この記事内容は、執筆時点2023年6月30日のものです。

清水 香(しみず かおり)
1968年生まれ。FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表、株式会社生活設計塾クルー取締役。生活者向け相談業務のほか、執筆、講演など幅広く展開、TV出演も多数。財務省の地震保険関連の政府委員を歴任、自由が丘産能短期大学講師、日本災害復興学会会員。

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