第2回 ストレスを溜めない習慣づくり

近年、仕事や人間関係などにおける不安やストレスに悩む人が増えています。ストレスは私たちの心や体にさまざまな影響を与えるため、早めに対処することが重要です。この記事では、全3回を通じてストレスに対する考え方をお伝えするとともに、ストレスを溜めず、上手に解消する方法をご紹介します。今回は、ストレスを溜めない心身を作るための「習慣」についてお伝えします。

監修:

山本 晴義

〉〉〉プロフィール

ストレスはその日のうちに解消 
「1日決算主義」を心掛けよう

 私たちの生活は1週間のサイクルが基本となっています。平日は仕事や家事が忙しく、働いて寝るだけという生活になってしまっている方も多いのではないでしょうか。これでは溜まったストレスを解消しきれず、さまざまな心身の不調を招いてしまいます。
 ストレスを溜めないためにも、その日のストレスはその日のうちに解消して、翌日に持ち越さないことが大切です。1日単位でストレスを吐き出す「1日決算主義」を心掛けましょう。「今日も良い1日だった」と充実した気持ちで眠りにつくことが理想的です。
 1日決算主義の実践に必要なのは、「運動、労働、睡眠、食事、休養」の5つ。この要素を適切に取り入れることで、自ずと心身が整っていきます。
 5つの要素を毎日の生活に取り入れるための健康的な習慣を、朝・昼・夜に分けてご紹介します。

<「1日決算主義」を実践するための毎日の習慣>

■朝

・勤務開始の3時間前に起床
1日をエネルギッシュに過ごすカギは、「朝時間」。目安として、勤務開始時刻の3時間前までに起床するのがおすすめです。余裕を持って過ごし、ゆっくり朝食を取ったり、軽く運動したりして、1日を乗り切る英気を養いましょう。
また、朝起きたらカーテンを開けて深呼吸しましょう。朝陽を浴びることで気持ちが前向きになります。

・朝食はしっかり取る
朝食を抜く人は、夜に食べ過ぎてしまう傾向にあります。夜の過食や就寝前の遅い時間に食事をする習慣は良質な睡眠の妨げや、肥満、生活習慣病を招く要因にもなります。
朝食は1日の労働を支える活力の源。慣れない人は牛乳1杯などからでもいいので朝食を取る習慣をつけ、朝・昼・夜とバランスの良い食生活を目指しましょう。

■昼

・仕事にやりがいをもって臨む
仕事は生きがいに繋がります。「自分が働くことは誰かの役に立っている」という意識を持って仕事に向き合うことが大切。自分の存在意義を実感することで働きがいが生まれ、モチベーションアップにも繋がります。

・こまめな休憩を忘れずに
仕事中も休養を取るように心掛けましょう。1時間働いたら5分休憩するなど、メリハリをつけた生活をすることで自律神経が整い、集中力もアップします。

・毎日軽い運動をする
1日の中に運動などで汗をかく時間を作りましょう。勝敗を決める競技スポーツではなく、自分のペースで楽しく取り組めるものがおすすめ。1日15分程度でも効果的です。
平日は仕事の合間にストレッチや軽い散歩、休日はラジオ体操やジョギング、水泳など、毎日の生活の中に上手に取り入れてみてください。

■夜

・オンとオフの切り替えを
オンとオフの切り替えが苦手な人は、ストレスを溜め込みがちになります。仕事中は「オン」、それ以外の時間は仕事のことは忘れて、「オフ」の自分に切り替えましょう。
最近では自宅にパソコンを持ち帰ったり、休日でもスマホで仕事のメールをチェックしたりする人も多いですが、それではリラックスできずプライベートも心から楽しめなくなってしまいます。「●時以降は仕事のメールはチェックしない」などのルールを決めて、メリハリをつけることをおすすめします。

・身近な人と食卓を囲む
食事は、健康な人の生活の基本。また、誰かと話しながら食事をすることでストレスが緩和され、自律神経を整えるなどメンタルケアにも繋がります。
身近な人と食卓を囲んで共に食べるだけでなく、「何を作ろうか」と話し合って一緒に料理を作ったり、食事の後に「美味しかったね」と語り合ったりすることで、心も豊かになっていきます。

・眠る前に嫌な気持ちをリセット
毎日眠りにつく前に、嫌な気持ちをリセット。些細なことでも、嬉しかったことや楽しかったことなどを思い出して、「今日も良い1日だった」と充実した気持ちで1日を締めくくりましょう。
また、仕事が始まる3時間前までの起床を目標に「早起き早寝」の習慣を。早起きすることで日中の活動レベルが上がり、夜は自然と眠くなってぐっすり。翌朝も爽やかに目覚めることができ、良いルーティンになっていきます。

いざというときに
支え合えるサポーターを

 5つの要素を基本とした1日決算主義に加え、もう一つ大切なのは、「サポーター」の存在です。普段から家庭や職場、地域などの人間関係を大切にし、いざというときにはお互いを支え合うことのできる「サポーター」をつくっておきましょう。
 一方的に助けてもらうのではなく、お互いに支え合える、双方向の関係性が理想です。一緒にいると気持ちが楽になる、何でも話ができるという精神的サポーターがいると、ストレスに対する抵抗力も強まります。支え合える人間関係を築くためにも、身近な人への日頃の感謝や気遣いを忘れないようにしましょう。サポーターは人がメインですが、動物や植物もサポーターとしての役割を担ってくれます。

自分で自分を認める「アイラブミー」を合言葉に

 自分が他人から認められていないと感じてしまうときは、自分自身も自分を認めてあげられていないことが多いようです。そんなときは「アイラブミー(自分自身が自分を好きになる)」が大切です。自分の良いところを一つでも見つけて、自分を好きになることを意識してみてください。
 強いストレスを感じているときは、物事のマイナス面ばかりを見てしまいがちですが、些細なことでもいいので、プラス面を見つけることが大切です。それでも辛いときは、「今は」という言葉を入れてみましょう。ずっと今の辛い状況が続くと考えると憂鬱になってしまいますが、「今は」辛い、「今は」嫌だけど、きっといつか終わりが来る、と考えるようにしてみてください。これまでも大変なことを乗り越えて、耐えてきた結果、今の自分があるはずです。そんな今の自分を、まずは認めて、好きになってあげてください。

まとめ
 ストレスを溜めないためには、翌日にストレスを持ち越さない「1日決算主義」を心掛けることが大切です。「運動、労働、睡眠、食事、休養」の5つの要素を適切に取り入れ、健康的な生活習慣を身に付けましょう。また、辛いとき、苦しいときに支え合える家族や友人のようなサポーターがいると安心です。ストレスを溜めない合言葉は「アイラブミ―」。少しずつでもいいので、今の自分を認め、好きになってあげましょう。

 次回は「ストレスとの上手な付き合い方」についてご紹介します。

※この記事内容は、執筆時点2023年12月13日のものです。

山本 晴義(やまもと はるよし)
横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本内科学会認定内科医、労災補償指導医、日本心身医学会心身医療「内科」専門医、日本心療内科学会専門医・指導医、日本精神神経学会専門医、社会医学系専門医心療内科医。2000年より同病院の社会奉仕活動として「勤労者 心のメール相談」を開始。24年間で18万件以上の相談に応えている。

TOPページに戻る