被災時、水・ガス・電気が
止まったときに備えて

近年、全国各地で自然災害が頻発しており、「防災と備え」の重要性が高まってきています。中でも、被災時において「食べること」は命と健康を維持する要です。そこで今回は、ライフラインが止まったときの備えと調理法、備蓄食材で美味しく食べられるレシピをご紹介します。

監修:

今泉 マユ子

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平常時から、水・ガス・電気が止まった生活を
想定して準備をしておきましょう

 自然災害は突然発生します。また、ライフラインが止まることで、不便な生活を余儀なくされるでしょう。
 そこで、平常時から、被災時の生活を想定し、備えておくことで被災時にも慌てず落ち着いて行動することができます。

■「水」の備え

 水は、飲料だけではなく、トイレ、洗面、洗濯、調理、入浴など、さまざまなシーンで必要となります。まずは、水が必要となるシーンを家族で書き出してみましょう。その後、優先順位を決めて代替え品で対応できないか考えます。
 実際に、備蓄の水だけを使う体験をしておくと、必要な量が分かるのでおすすめです。飲料水は「1人1日3リットル×7日分=21リットル」の備蓄が推奨されています。
 また、断水時は給水が行われますが、給水容器は口の大きく、運びやすく、衛生的に使えるものを準備しておきましょう。

<おすすめの代替品>
・ウエットティッシュ ・アルコール消毒液 ・体がふける大判シート ・水のいらないシャンプー
・拭きとり歯磨きシート ・手動式ウォシュレット ・携帯トイレ    など

■「ガス」の備え

 カセットコンロとガスボンベは必ず準備しておきましょう。アウトドア好きの方は、ガスバーナーも被災時にも活用できます。
 被災時であっても、温かいものを食べると生きる気力が湧いてきます。お湯を沸かして、温かい白湯を1杯飲むだけでもホッと心が落ち着きます。毎朝コーヒーやお茶を飲む習慣がある方は、必要なものを備えておきましょう。日常と同じことができると被災時のストレスを軽減してくれます。
 ガスボンベは、1カ月間ガスや電気が使えない場合を想定して、4人家族であれば15~18本備蓄することが推奨されています。ガスボンベの使用期限は7年といわれているので、月に1度は使う機会を作り、食材だけでなく調理アイテムもローリングストック(使いながら買い足す)をしながら備えることをおすすめします。

■「電気」の備え

 停電した際にまず困るのが、冷蔵庫。季節によりますが、冷蔵庫の保冷時間は停電後2~3時間といわれています。ドアを開ける度に冷気が外に逃げてしまうので、すぐに取り出せるように普段から冷蔵庫の整理が大切です。冷蔵庫には物を詰め込みすぎず、なるべく冷気が循環するようにしておきましょう。
 被災の混乱した時は料理を作るのも大変ですが、冷蔵庫のものは腐らせず活用したいものです。しかし、停電後すぐに消費できない場合は捨てる勇気も必要です。無理に食べて下痢など起こしては大変ですので、少しでも「どうかな?」と思う物は捨てましょう。
 また、冷蔵庫とは逆に、冷凍庫には詰め気味に入れると、それぞれが保冷材の役目をして保冷時間が長くなります。引き出し式の場合は、食品の上に新聞紙をかぶせておくと蓋の役目になり、開閉時に冷気が逃げるのを防いでくれます。
 自動製氷機の氷は、停電したらすぐにポリ袋に全て入れてください。そのままにしておくと溶けて水浸しになり、後片づけが大変です。ポリ袋に入れた氷は、冷蔵庫の最上段に置いておけば、保冷材の代わりになり、溶けたら水として活用できます。

■食べ物だけでなく、「食べた後」の備えも

 「口腔ケア」と「トイレ&ゴミ対策」など、食べた後の事も考えましょう。口内環境、排泄物、ゴミは、すべて大切な問題です。

●口腔ケア
 停電、断水、生活用品の不足などが原因で疎かになりがちです。特に、柔らかい物を食べた後は、口の中に食べ物が残りやすいので、意識して硬い物を食べましょう。
 よく噛んで唾液を出すことで、誤嚥性肺炎を防ぎ血流も良くなり、脳の活性化にもつながります。ただし、歯が弱い方は無理をしないでください。
 歯ブラシセット、洗口液、歯間清掃用具、義歯洗浄剤、キシリトール配合のガム、歯磨きシートなど、無いと困るものを書き出して、ローリングストックで備えておきましょう。

●ゴミ対策
 ゴミ収集車がストップしている間、生ゴミ、汚物は家に置いておくことになります。臭いや害虫、衛生面を考え、密封できる蓋つきのゴミ箱に入れておくことをおススメします。
 蓋つきのゴミ箱がない場合、衣装ケースやおもちゃ箱など蓋つきのものがあれば、いざというときは、中身を取り出してその中に生ゴミ、汚物を入れて蓋を閉めて活用できます。
 さらに消臭シート、除菌抗菌消臭スプレーなどもあると安心です。

●排泄
 トイレの衛生状態が悪くなると、できるだけトイレに行かないように水分や食事を控えたり、排泄を我慢することにより、栄養状態の悪化や脱水状態などを招きます。また、水分を控えたことで血栓ができて、エコノミークラス症候群などを引き起こし、命にかかわる事態に直面します。
 災害時のトイレ対策は大切です。携帯トイレを備えておきましょう。買っただけでは安心ではありません。災害という特殊な状況下で慣れないことをするので、平常時のうちに一度使っておくことをおすすめします。

ポリ袋に入れて混ぜるだけでできる
「即食レシピ®」

 水や火が十分に使えないときは、普段と同じ調理は難しく、また、食器の使用もできる限り避けたいもの。そこで、缶詰を使い、ポリ袋一つで簡単にできる「即食レシピ®」をご紹介します。

【POINT】

1.メーカーによって塩分量や硬さなどが違うので、普段から食べてお気に入りを見つけてください。お気に入りの食材を組み合わせて作ると自分好みの1品が出来上がります。

2.家にある食材を組み合わせて作ってみてください。お子さんに作ってもらうのもおすすめです。災害が起きた後、お子さんの「役に立ちたい」という気持ちにも寄り添えます。

3.災害を乗り切るコツは、できることを増やしておくことです。普段の食事で作って慣れておくと、家にある材料で臨機応変に作れるようになります。“ちょい足し”など工夫して自分の好きな味にしてください。

即食レシピ®におすすめ
ドライパック&パウチ食品も活用しましょう!


 ドライパックとは、素材を高温の蒸気で容器ごと蒸し上げる製法で作ったもので、水を切る手間が省けて、開けてすぐに食べられます。大豆、ミックスビーンズ、コーン、ひじき、きのこ、ごぼうなど種類も多く、缶詰とレトルトパウチの2つのタイプがあります。
 大豆やミックスビーンズなどの豆類はポリ袋に入れて手で簡単に潰すことができます。
 素材のままなので、自分の好きな味に調理ができるのが良い点です。普段使いしておくことで、災害が起きたときも“いつもの味”を食べられます。
 パウチは缶詰に比べて軽量で、手で簡単に開けることができ、ゴミの量が少なくなります。使う量によって缶詰とパウチを使い分けてもいいですね。

※この記事内容は、執筆時点2022年4月18日のものです。

今泉 マユ子(いまいずみ まゆこ)
1969年徳島市生まれ。管理栄養士として大手企業社員食堂、病院、保育園に長年勤務。食育、災害食、SDGsに力を注ぎ、2014年に管理栄養士の会社を起業。東京消防庁より感謝状を5枚拝受。日本栄養士会より表彰状を拝受。「第3回私のSDGsコンテスト」大賞受賞。NPO法人岡山コーチ協会理事。著書は「もしもごはん」シリーズ(清流出版)、「防災教室」シリーズ(理論社)の他、多数。レトルトの女王、缶詰の達人とも呼ばれ、テレビ出演は140以上になる。ラジオ、新聞、雑誌、WEBサイトなどでも活躍中。
(株)オフィスRM https://www.office-rm.com

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