控除で税金が軽減できる制度とは

税額の計算過程では、「控除」を適用することで所得税や住民税が軽減されます。控除にはさまざまな種類がありますが、今回は医療費控除と住宅ローン控除について解説します。

監修:

高橋 浩史

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そもそも「控除」とは何か、その種類は?

 「控除」とは、税金を計算する際に一定の金額を差し引く制度のことです。控除を適用することで、税金の負担が軽減されます。
 控除には、所得額から差し引く所得控除と、税額から差し引く税額控除の2種類があります。それぞれの主な種類は下表のとおりです。

所得控除と税額控除の違いは

 所得控除と税額控除では、税額計算の過程で「どのタイミングで控除を適用するのか」という点に大きな違いがあります。

■所得控除

 所得控除は、所得金額から一定額を差し引く制度です。所得控除の額が大きいほど課税所得額が少なくなり、税金が軽減されます。

■税額控除

 税額控除は、確定した税額からさらに差し引く制度です。差し引く税額控除の金額が大きいほど、最終的に納める税金が少なくなります。

 例えば、年間所得300万円、所得控除20万円、税率10%の場合、税額は「(300万円−20万円)×10%=28万円」です。さらに税額控除が10万円だとすると、「28万円−10万円=18万円」が最終的な税額になります。

一定額以上の医療費があったときは
「医療費控除(所得控除)」

 医療費が一定額を超えると、「医療費控除」が適用できます。適用されるのは、年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費が、10万円(総所得金額200万円未満の人は所得金額×5%)を超えた場合です。

 控除の対象となる医療費は、本人や配偶者、家族のために支払った、治療費・入院費・薬代・通院費などです。ただし、インフルエンザなどの予防接種、健康診断など、治療目的でない医療費は対象外になります。
 なお、健康診断を受けた結果、重大な病気が見つかり、その治療のために支払った医療費は、医療費控除の対象になりますので、覚えておきましょう。

 医療費控除での税の軽減効果を見てみましょう。計算方法は、以下のようになります。

 例えば、総所得金額300万円の人が、1年間に30万円の医療費を支払い、保険金などで5万円を受け取った場合の医療費控除額(所得控除額)は「30万円−5万円−10万円=15万円」になります。
 軽減される税額は、「医療費控除額×税率」で計算できます。課税所得が300万円の人は税率が10%ですので、「15万円×10%=1万5千円」が税金の軽減額です。
 医療費控除を適用するには、確定申告が必要です。医療費の領収書は提出不要ですが、5年間は保存する必要がありますので、大切に保管するようにしましょう。

10年以上の借り入れなら
「住宅ローン控除(税額控除)」

 住宅ローンを利用してマイホームを購入した人は、「住宅ローン控除」が適用されます。適用されるのは、住宅ローンを10年以上の期間で借り入れて、一定の要件を満たした住宅の購入・リフォームなどを行った場合です。

 住宅ローン控除を受けるための要件は、住宅の種類などによって異なりますが、共通する主な要件は下記のとおりです。

 また、控除が適用される住宅ローン借入額についても限度額があり、住宅の性能、家族構成、入居年などにより定められています(下表参照)。

 住宅ローン控除での税の軽減効果を見てみましょう。計算の前提条件は以下のとおりです。

※3 試算のためにおおまかな税額としています。実際の税額は、適用できる所得控除の額によって異なります。
※4 試算のためにおおまかな残高としています。実際の残高は、住宅ローンの借入金利などによって異なります。

 住宅ローン控除の計算方法は、以下のようになります。控除額は、年末の住宅ローン借入残高の0.7%、控除期間は13年間です。

 上記の前提に当てはめると、「年末の住宅ローン残高2,900万円×0.7%=20万3千円」が住宅ローン控除額です。税額控除のため、この額を2024年分の源泉徴収税額12万円から、20万3千円を差し引きます。この場合、控除しきれなかった8万3千円は、住民税の方からも控除されます。

 住宅ローン控除の場合も、確定申告が必要です(会社員の場合は初年度のみ、2年目からは勤務先の年末調整で可能)。申告には、金融機関から送られる残高証明書や、建物・土地に関する各種の証明書類が必要です。

まとめ
家計に恩恵のある「控除」を忘れずに
 年間の医療費が高額になった人や、住宅ローンを借りてマイホームを購入した人は、医療費控除や住宅ローン控除で税金の軽減や還付が受けられます。家計にとって恩恵のある税の軽減制度です。控除の対象になる人は忘れずに手続きするようにしましょう。

※この記事内容は、執筆時点2025年5月7日のものです。

高橋 浩史(たかはし・ひろし)
ファイナンシャルプランナー。FPライフレックス代表
(ウェブサイト https://www.fpliflex.com/)
住宅購入・老後資金準備・保険見直し相談など、ライフプランニングをベースにした家計全般へのアドバイザーとして活動中。金融機関でのセミナー・研修講師、書籍・雑誌、webでの執筆業務も行う。主な著者に「災害に備えるライフプランニング」(近代セールス社)、「老後のお金安心ガイド」「最新保険ランキング」(イースト・プレス)など。

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