健康長寿の鍵を握る!
歯と口のセルフケア 第3回
実はすごい!「唾液」のちから

口の機能を正常に保つことは「心身の健康」に欠かせません。食べたいものが食べられないと、心身ともに弱ってしまいます。そうならないためには、口内環境のチェックとセルフケアが重要です。第3回目となる今回は口を清潔に保ち、虫歯まで防いでくれる「唾液」のちからと、分泌を促すセルフケアについてご紹介します。

監修:

森下 真紀

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驚きの高機能!
口内を守る「唾液」のちから

 前回、「虫歯と歯周病」のセルフケアについてご紹介しましたが、もう一つ口内ケアで重要なことがあります。それは「唾液」の分泌を促すことです。普段、唾液を意識することは少ないかもしれませんが、実は唾液にはさまざまな働きがあります。

①免疫機能

 唾液は抗ウイルス効果が高く、正常に分泌されていれば風邪をひきにくくなるといわれています。

②消化機能

 食べ物を咀嚼し唾液と混ぜることで、炭水化物を分解し消化を助けます。

③潤滑機能

 唾液は舌や喉の動きを滑らかにし、ものを詰まらせることなく飲み込んだり、発話をスムーズにします。

④口内を守り、歯を再生させる機能

 唾液は口中を中性に保つ機能があり、虫歯リスクを低減させます。さらに、唾液に含まれるミネラルが歯の再石灰化を促進し、初期虫歯を自然治癒させることができます。

 虫歯菌は食べ物の中に含まれる糖を分解して酸を産生します。酸性になると、歯の表面が溶けてしまい虫歯のリスクが高まります。そこで体は24時間常に唾液を分泌することで口内を中性に保とうとします。(睡眠中は安静時よりも唾液の分泌量が減ります。)唾液が口内に行き渡ることで、口内は中性となり、溶けた歯の表面は修復され(再石灰化)、虫歯の進行を防いでくれるのです。

減ってしまう「唾液」を
マッサージと食事で取り戻す!

 年齢を重ねると、唾液の分泌量は減少します。そもそも加齢と共に体内の水分が減るのに加えて、唾液腺も萎縮するためです。また、若年層でもストレスや緊張状態が続くと一時的に唾液の分泌が減少します。さらに、ストレスがかかる状態が続くと慢性的に唾液の分泌が減り、口臭や虫歯などのトラブルが発生することもあります。
 そこで、すぐにケアできる唾液腺を刺激するマッサージを行い、外部からの分泌を促してあげましょう。また、日々の食事を唾液の分泌を促すものに見直してみるのも効果的です。ぜひ試してみてください。

■すぐにできてすぐに実感!
唾液腺マッサージ

人の顔には、主に3つの唾液腺があります。健康な成人では1日に1~1.5リットルもの唾液が分泌されます。朝起きてすぐや、食事の前後、人と会う前などの気になるタイミングでマッサージをして唾液の分泌を促しましょう。唾液腺に刺激を与えると、すぐに唾液が溜まり効果がわかりやすいので続けやすいでしょう。

耳下腺マッサージ

耳と顎の間にある「耳下腺」を刺激します。耳と顎の間、口を開け閉めすると動く顎の骨の付け根周辺を、指先で10回ほど円を描くように撫でます。

顎下腺マッサージ

下顎のラインにある「顎下腺」を刺激します。
エラ下のラインをさするように10回ほど撫でたり、骨のくぼみを指先で各5回ほど軽く押し上げます。

舌下腺マッサージ

下顎の内側にある「舌下腺」を刺激します。
下顎の内側、くぼんでいる所を親指で10回ほど押し上げましょう。

毎日の食事で
唾液を増やそう!

 唾液の分泌を促すためには、噛む回数を増やすことも重要です。日常の食事やおやつに噛む回数が増える食材を取り入れましょう。また、よく噛むことで「オーラルフレイル」の予防にもなります。

①食材選び

 キノコ類、海藻、ゴボウなどの食物繊維が豊富な食材は噛む回数を自然と増やすことができます。和洋中など、どんなメニューにも合わせやすい食材なので積極的に取り入れてみてください。また、ピーナッツやアーモンドなどの硬い食材もおすすめです。単独でたくさん食べるのは難しいため、他の食材と組み合わせて取り入れてみましょう。

②おやつ選び

 キャンディなど、長く口の中に留まる甘いものには要注意です。おやつとして食べるなら、ガムを選ぶようにしましょう。噛む回数が自然と増え、唾液の分泌を促すことができます。なかでもキシリトールが配合されたガムは、虫歯菌が好む糖類が含まれていないため特におすすめです。

③調理方法

 煮込んで柔らかくする煮込み料理や、飲み込みやすいとろみのついたカレーなどは噛む回数を増やすのには向きません。食材を大きく切り、歯ごたえを楽しむ調理で「噛む回数を増やす」料理を実践していきましょう。

まとめ
口内ケアで重要なのが「唾液」です。唾液には免疫機能や消化機能、虫歯を予防・修復する機能などが含まれています。しかし、加齢やストレスの影響で分泌量は減少します。唾液腺マッサージや、噛む回数を増やす食材や調理方法で分泌を促進しましょう。それでも唾液の分泌が少ない、喋りにくい、ものが飲み込みにくいといった違和感がある場合は、別の病気が隠れている可能性があります。ぜひ歯科医に相談してみてください。

※この記事内容は、執筆時点2024年8月28日のものです。

森下 真紀(もりした まき)
東京医科歯科大学歯学部歯学科を首席卒業。英国キングスカレッジ歯学部留学、東京医科歯科大学大学院にて博士号取得。日本学術振興会特別研究員(DC2)。都内、千葉県内の歯科医院での診療に加え、企業と口臭対策や歯周病対策でコラボするなど、「日本を世界一の歯科先進国へ」をミッションとして掲げ、歯科業界の発展に貢献すべく活動を行っている。ダイヤモンドオンラインにて、ビジネスマン向けに歯科や口臭に関するコラムを連載中です。

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