結婚後パートで働く。
どうなる?税金と社会保険料

結婚を機に退職し専業主婦になった方でも、パート収入を得ているケースが多いのでは。勤務先の規模や労働条件、得られる年収の額などにより、支払う「税金」や「保険料」は異なります。家族の将来のためにも、制度をしっかり知っておきましょう。

監修:

浅田 里花

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 結婚を機に退職して専業主婦になった場合、それまでと税金(所得税・住民税)や社会保険料(厚生年金保険料、健康保険料など)の負担が変わります。

第3号被保険者と「130万円の壁」

 専業主婦になったら、夫が会社員や公務員など厚生年金加入者(国民年金の「第2号被保険者」)であれば、「第3号被保険者」として国民年金に加入することになります。年金保険料は夫の加入する制度が負担し、妻の負担はありません。なお、夫が自営業者など国民年金の「第1号被保険者」の場合は妻も「第1号被保険者」となるため、専業主婦でも国民年金保険料を支払う必要があります。
 健康保険は、夫の加入している健康保険制度を扶養家族として利用でき、妻の保険料負担はありません。夫が自営業者などの場合は、国民健康保険に世帯単位で加入します。国民健康保険料は、一般的に世帯主が負担しています。

■130万円の壁

 専業主婦といっても、パート収入のあるケースが多数派。この場合、年収が130万円以上になると、勤め先の厚生年金・健康保険制度に加入する義務が生じ、社会保険料を支払う必要があります。

■勤め先により106万円の壁

 従業員100人を超える企業でパートで働く場合、①勤務時間が週20時間以上、②1カ月の賃金が8.8万円(年収106万円)以上、③勤務期間が2カ月超の見込みという人は、厚生年金、健康保険の加入対象です。壁が106万円になるわけですが、長い目で見たら、老後の年金額が増えるといったメリットもあります。今後も対象者を拡大させる方向であることも知っておきましょう。

税金にも「壁」がある

 税金については、年収が100万円を超えると住民税(所得割)がかかり(級地区分により均等割がかかる場合あり)、103万円を超えると所得税がかかるようになります。さらに、夫の給与収入が1,120万円以下なら満額受けられた「配偶者控除」が、適用外になります。年収150万円までは「配偶者特別控除」が38万円満額適用されますが、以降は年収に応じ段階的に控除額が減っていき、年収201万6,000円以上になるとゼロになります。

■世帯収入のソントク

 「配偶者控除」「配偶者特別控除」は夫の税金計算の際に年収から差し引けるので、あるとないとでは夫の税額に影響してきます。そのため、年収130万円から160万円のパート収入では世帯の手取り収入がマイナスになってしまいます。また、夫の勤め先に「扶養手当」がある場合、規定の年収以上(103万円以上など)あると、対象から外れてしまいます。
 世帯収入や将来設計も計算し、今後どう働くかを、結婚退職する前に考えておくほうがいいかもしれません。

※記事内容は、執筆時点2023年8月1日のものです。

浅田 里花(あさだ りか)
ファイナンシャルプランナー、株式会社生活設計塾クルー取締役。コンサルティングや新聞・雑誌などへの原稿執筆、セミナー講師を行う。東洋大学社会学部の非常勤講師としても活躍。代表的な著書に『Q&Aで学ぶライフプラン別営業術』(近代セールス社)など。

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