うちの子すごい!
が自己肯定感を高める
子どものすこやかな成長を願いながらも、どうするのが良いのかわからず日々悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。この連載では「子どもの心を守る」をテーマに、幼少期から思春期までのお子さまとの向き合い方を小児科医の小澤美和先生にお伺いしました。全6回でお送りするシリーズ前半「幼児期篇」の第2回目は「自己肯定感」についてです。
わが子の性質を
ポジティブに捉えて
幼児期に重要と考えられるのが、お子さま自身が親に守られている、信じてもらえているという感覚、「自己肯定感」です。
Vol.1でもお話しした「観察する」中で親が気づくわが子の特徴は、必ずしも親にとって好ましいものばかりではありません。だからといって、お子さまに対してネガティブチェックばかり繰り返していては、自己肯定感は高まりません。できたことや得意なことに目を向けてあげて、それを喜んであげることがまず一歩です。
仮にネガティブなことが多い場合でもそこで嘆くのではなく、見方を変えてみてほしいのです。大声で泣いてばかりの子も、「声が大きく元気な子」と捉えられませんか? 1人で遊んでばかりで心配だったとしても、それって「集中力のある子」とも言えませんか? 他にも、言い訳ばかり→「機転が利く」、臆病→「慎重」、小食→「燃費がいい」など、ネガティブに思えることも実は個性のあらわれかもしれません。そして、今まではネガティブな部分ばかりを見ていた親が、ポジティブにお子さまを褒めてあげられるようになったら、お子さまの自己肯定感がいっそう高まるのは明らかですよね。
お子さまの“好き”を共有すると
自己肯定感は飛躍的に高まる
例えばお子さまが絵を描くのが好きだったとします。絵を描く時間を確保してあげることはもちろんですが、その場に親も付き合ってあげることが大切です。何もイチから一緒にお絵描きに没頭する必要はありません。ちょっと目をかけてあげて、「お母さんここ塗って」と言われたら色を塗ってあげるとか、「スゴイね!そんなのお母さん描けないわ」「どうやって描くの、教えて!」とリアクションしてあげるだけでもいいのです。その時間をつきっきりでいることもありません。例えば1分でも、お子さまのために時間を割いて本気で向き合ってあげられれば、それで十分です。
大切なのは、お子さまの好きなことや興味を親も一緒になって楽しむこと。同時にそれはお子さまからしてみれば、自分の世界が親にも広がっているという感覚に繋がっていきます。この一連の流れこそが、まさに自己肯定感が作られるステージなのです。
次回は、「コミュニケーション」についてお伺いします。
低い場合はどうする?
よくある悩みですよね。ご夫婦でしたら、例えば母親(妻)の自己肯定感が低い場合は父親(夫)の協力が効果的だと思います。
先日来院したあるご家族の例をご紹介します。「前日まで子どもの湿疹が酷く、いろいろと手を尽くして、今はなんとか治まったのですが、大丈夫でしょうか…?」とお母さまから相談されました。私が「それでいいのよ! よく頑張ったわね!!」と褒めたところ、隣にいたお父さまが「ありがとう」ってお母さまにささやいたんですね。
たった一言ですが、そのお母さまにとっては、自己肯定感が高まった大きな出来事だったのではないか、と感じたエピソードでした。家族という関係の中でみんなが互いを信頼し認め合うことが大切ですし、それがうまく繋がってお子さまに良い影響がもたらせられたら何よりですね。
※この記事内容は、執筆時点2022年1月26日のものです。
小澤 美和(おざわ みわ)
聖路加国際病院 小児総合医療センター 医長。子ども医療支援室 室長。AYAサバイバーシップセンター 副センター長。
病気の初めから終末期まで、病気になった親子を取り巻くがんに係る諸問題の第一人者。また、乳幼児健診や学校医として、健康な子どもも病気になった子どもも、その子なりの成長を支えるケアのスペシャリスト。看護師、保育士らと共にきょうだいレンジャーとして、病気のこどものきょうだい支援に取り組み、NPO法人グリーフサポートリンクと協働で開催する親と死別した子どもの集いや、子どもを亡くした親の自助グループの運用に携わっている。
親子に読んでもらいたい絵本「おかあさんだいじょうぶ」(小学館)共著。年数回、小学校~高校で「がん教育」を担当。小児科専門医/指導医、子どものこころ専門医/指導医。