うちの子はどんな木になる?
「観察」の大切さ

子どものすこやかな成長を願いながらも、どうするのが良いのかわからず日々悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。この連載では「子どもの心を守る」をテーマに、幼少期から思春期までのお子さまとの向き合い方を小児科医の小澤美和先生にお伺いしました。 全6回でお送りするシリーズ前半「幼児期篇」の第1回目は「観察」の大切さについてです。

監修:

小澤 美和

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どう育てるかの前に、
じーっと「観察」する!

 わが子を授かったとき、保護者の皆さまはどんなことを願うでしょうか。
 最初は「五体満足にさえ生まれてくれれば…」「大病をせず、健康な子に育ちますように」と望むことでしょう。しかし次第に「できれば性格が良くて、みんなに好かれる子になってほしい」というように、“こう育ってほしい”という願いから、あれこれ手を尽くすようになるのが自然です。

 そのため、インターネットの情報や育児本を読んでは心配事が出てくることも多いようです。特に最初のお子さんの場合は「これはおかしいんじゃないか?」とか「あの赤ちゃんとうちの子はちがう」とマイナスにばかりとらえがちです。
 しかし医学的に見れば、本来の体格や性質などは授かった時点である程度決まっているもの。定期健診で「元気だよ」って言われていれば、もうそれで大丈夫です!

 「みんな違ってみんな良い。」だからこそ、本や隣のお子さんと比べることより、まずは目の前のわが子を興味津々じーっと観察することが大切です。わが子に時間をかけられるのは、親や保護者の皆さんだけなのですから。
 わが子を一番よく知るプロフェッショナルとして、「うちの子ってこんな子なんだよ」と把握できてさえいれば良いと思います。そうすると、“いつもの様子”となんだか違う、にも気づけるようになります。もしもこの違和感が続いたら、お医者さんを受診してみてください。

どんな花が咲き、葉をつけるかは
その子自身が知っている

 木は、どんなタネなのかで伸びる幹や咲く花が違います。子どももこれと同じで、隣の子が青々と茂った大きな木だったとしても、それとは全く違う別物のわが子の木に、同じ葉や幹を望むのは無理があります。

 はじめは「茎がトゲだらけでどうしよう…」と不安に思っていても、育ってみたらとても立派な枝葉が拡がり、花は目立たなくても心地よい木陰に人が集まる木になるかもしれません。どう育つかはその子が持って生まれた個性そのもの。自分らしい一本の木として成長することを信じてあげることが重要なのです。

わが子が「心地良い」と
思うのはどんなとき?

 木や花が育っていく段階で「右の方に幹を伸ばしたがってるな」とか「もう少し水を欲しがってるかな」など、どう育ちたがっているかをつぶさに観察してあげることがポイントです。
 これは、「左右のバランスが悪いから育ってない方に光を当てよう」と矯正する意味ではありません。あくまでも子どもが何をしたがっているかを知り、邪魔せず助けてあげながら、子どもが育っていく時間をじっくり見続けてほしいのです。(もちろん、ケガをしないように、側にいる人が傷つかないように、です。)

 観察し続けるのは簡単なことではないでしょう。ただ、興味を絶やさず信じて見てあげていれば、わが子がどうしたいのか、どんなときに心地良いと感じるのかが分かってくるはずです。
 私自身の経験からも、つい余計なことを言ってしまったり、あれこれネガティブに考えてしまう親心はよく分かります。そんな時は3つ叱ってしまったら3つ待つ、くらいの感覚でバランスを取ることが、根気よく観察するためのコツですね。

 次回は、子どもの「自己肯定感」を高めるポイントをお伺いします。

教えて!小澤先生
口を開けばすぐ兄妹ゲンカ
どうしたらいいか…

まず前提として「兄弟ゲンカをしない兄弟はいない」と受け入れるしかないですね(笑)。周りに危険なものがないかを確認して、ケガをしたり物を壊したりしないようにだけ注意したら、後はそっと見守ってあげましょう。
「じゃあ、放っておいていいのね?」と勘違いされてしまいそうですが、“放っておく”と“見守る”は違います。例えばケンカが少し落ち着いたら一緒に片付けてあげたり、コップに水を入れてあげて一息つかせたりして、最後までしっかり見届けてあげることが大切です。子どもから見ても親が何もしてくれないと不安に思うはずですし、見守られている安心感があるだけで兄弟ゲンカも幾分落ち着くこともあるかと思います。

※この記事内容は、執筆時点2022年1月26日のものです。

小澤 美和(おざわ みわ)
聖路加国際病院 小児総合医療センター 医長。子ども医療支援室 室長。AYAサバイバーシップセンター 副センター長。
病気の初めから終末期まで、病気になった親子を取り巻くがんに係る諸問題の第一人者。また、乳幼児健診や学校医として、健康な子どもも病気になった子どもも、その子なりの成長を支えるケアのスペシャリスト。看護師、保育士らと共にきょうだいレンジャーとして、病気のこどものきょうだい支援に取り組み、NPO法人グリーフサポートリンクと協働で開催する親と死別した子どもの集いや、子どもを亡くした親の自助グループの運用に携わっている。
親子に読んでもらいたい絵本「おかあさんだいじょうぶ」(小学館)共著。年数回、小学校~高校で「がん教育」を担当。小児科専門医/指導医、子どものこころ専門医/指導医。

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