免疫機能をアップする
食材と食べ方

ウイルスなどの感染症から身を守るためには体の免疫力を高めることが大切です。そのために必要なのは、運動や睡眠に加え、適切な「食生活」。免疫機能アップの食材や食べ方をご紹介します。

監修:

日比野 佐和子(医学監修)・柳澤 英子(料理監修)

〉〉〉プロフィール

体を守る免疫機能は
食生活で向上する

 免疫とは、病気から体を守る体内の仕組みのことです。免疫の機能が落ちると異常化した細胞に健康な細胞が負けてしまい、がんを発病したり、アレルギー症状が出やすくなったりします。もちろん、感染症にもかかりやすく、重症化するリスクも高まります。
 私たちは知らず知らずのうちに細菌やウイルスといった病原体を体内に取り込んで暮らしています。病気に負けず、健康に暮らしていられるのは、免疫がきちんと働いているからなのです。

 2020年に入り、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行しています。現在では自分の健康は自分で守る努力が当然のことになってきています。
 では、どうすれば免疫機能を強化することができるのでしょうか。その第一歩は食生活の改善からはじめることがおすすめです。

免疫力アップのために
とりたい食材とは

 まずは抗酸化物質を含む食材を意識して食べるようにしましょう。
 抗酸化物質とは、活性酸素の発生やその働きを抑制したり、活性酸素そのものを取り除いたりする物質のことです。活性酸素は本来、私たちの生命活動に必要な物質で、微量であれば有用に働きます。しかし過剰に発生すると健康な細胞を傷つけてしまい、免疫機能を低下させる原因にもなるのです。抗酸化物質にはポリフェノール(植物由来の抗酸化物質で多くの種類がある)やカロテノイド(動植物に存在する黄色または赤色の色素成分。強い抗酸化作用を持つ)といった種類があります。これらが含まれる緑黄色野菜やくだものはぜひ毎日の食事で取り入れるようにしましょう。
 続いて積極的に食べるようにしたいのは、オメガ3(体内で生成することができない必須脂肪酸)という油が入った食材です。主に、魚介類やエゴマ油、アマニ油からとることができます。オメガ3は染色体の先端にある構造物のテロメアを若く保つ働きがあります。テロメアが若いほど私たちの細胞も若く維持され、免疫細胞の働きも保たれることがわかってきています。
 日本人はかつて魚で十分にオメガ3をとっていましたが、食生活が欧米化するにつれてその摂取量も減っているといわれています。毎日魚を用意して食べるのは大変です。その場合は、スプーン1杯ほどを目安にエゴマ油やアマニ油を毎日の食事に加えてみてください。

腸を整えて
免疫細胞を強化する

 そして免疫機能の向上のために、必ずとってほしいのは腸内環境を健康に保つ食材です。免疫細胞の6割以上が腸にあるといわれています。そのため免疫機能を高めることは腸を整えることといっても過言ではありません。
 腸の中には大きく分けて「善玉菌」「悪玉菌」そして善玉菌にも悪玉菌にもなる「日和見菌」の3種の菌が存在し、体の状態によってそれらのバランスが変わっていきます。免疫の力を高める働きがあるのは善玉菌です。一方、悪玉菌は増えすぎると健康へ悪影響を及ぼします。日和見菌は体が弱ると悪玉菌へ変化してしまいます。善玉菌を増やし、悪玉菌を減らすことができるのはヨーグルトやみそといった発酵食品です。発酵食品は特に意識して食べることをおすすめします。
 また、免疫細胞の働きは体温とも密接に関係していると考えられています。体温が1℃上がるごとに免疫機能の働きは約30%上昇するといわれ、根菜類やトウガラシ、レバーといった体を温める食材は、免疫機能の向上に期待ができます。

●免疫機能を向上させるおすすめメニュー

 免疫の力を助ける栄養をいろいろな食材からとること。それに加えて、規則正しい生活と適度な運動、良質な睡眠も欠かせません。
 またストレスをためずに、よく笑うことも免疫の力を下げないために大切なことです。これらを心がけていき、感染症に負けない丈夫な体を手に入れましょう。

※この記事内容は、執筆時点2020年8月1日のものです。

日比野 佐和子(ひびの さわこ)/医学監修
医師。大阪大学医学部大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学特任准教授。医療法人社団康梓会 Y’sサイエンスクリニック広尾統括院長。最先端の予防医療で患者と向き合う。

柳澤 英子(やなぎさわ えいこ)/料理監修
料理研究家。52歳のときに食を楽しむ独自の食事法を始め、1年後には26キロ減。その後も太りにくい体質と健康を維持。簡単に作れるレシピが好評。『やせるおかず 作りおき』シリーズ(小学館)は 累計260万部超の大ベストセラーに。最新刊は『映える!おいしい!こんにゃく食堂』(小学館)ほか。

TOPページに戻る