直前の準備で減災・防災
台風に備える

台風やそれに伴う大雨が発生すると、水害や風害などの災害が引き起こされる可能性があります。浸水、停電、断水、強風による家の破損──多種多様な被害を最小限に留めるために、対策しましょう。

監修:

岡部 梨恵子

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被災のリスクを知り
避難への心構えをする

 台風が迫っているときに自分の身や家を守るために準備しておくべきことをご紹介します。
 まずは、日ごろから自宅のある場所にどんな被災リスクがどの程度あるのかを確認してください。ハザードマップで自宅のある場所の災害リスクを見てみましょう。浸水や土砂災害、高潮が発生するおそれの高い区域にお住まいの方は避難の準備が必要です。
 ただし、該当区域外だからといって安心してはいけません。ハザードマップで危険とされる区域でなくとも、被災する可能性があります。近年は台風の巨大化によって予想もされていなかった場所に甚大な被害が広がりました。特に周囲と比べて低い土地や崖のそばなどに住んでいる場合は市区町村が発信する防災情報を参考にして、避難をする心づもりをしておきましょう。

 もう間もなく、台風が迫ってくるというときに、ポイントになるのが避難をするタイミングです。2021年5月から運用が始まった大雨・台風時における「警戒レベル」では、レベル3が「高齢者など避難に時間がかかる人の避難」、レベル4が「全員避難」の目安になっています。もちろん風が吹く前、雨が降る前から警戒しておくに越したことはありません。
 自宅が危険区域に該当している場合に確実に安全が確保できるのは、危険区域外に逃げる広域避難です。近隣の避難所の利用や高所に避難する垂直避難は広域避難が難しい場合に検討をしましょう。

 ただ、避難先がいくら安全でも道中に低地や橋があると事故に遭うリスクが高まります。避難前にハザードマップで安全な移動ルートを確かめておきましょう。
 逆に、避難を“しない”ときの目安を知っておくことも役に立ちます。基本的に浸水が20センチを越えた場合、徒歩での避難はできないものと思ってください。水流もあり、足がとられて大変危険です。車で避難をする場合も、30センチ浸水すれば機械系統が故障し、車ごと流されてしまう危険性もあります。

 非常用持ち出し袋は平常時から用意しておき、台風の前には、中身をもう一度見直してください。そのときの家族構成や、健康状態やライフスタイルによって必要なものも変わってきます。
 地方や離島など、交通の便が悪い地域の場合、交通網が遮断されてしまうと必要物資が届きません。その分を考慮して用意しましょう。

自宅で安全に
過ごすための備え

 どの家でも共通して行ってほしいのは強風対策と大雨対策です。まずは強風で窓が割れないよう補強を。そして屋外にあるものは風で倒されたり飛ばされたりしないように、屋内へ避難させておきます。

 水害リスクの低い地域でも、大雨対策として、事前に屋外にある排水溝や雨どいがきちんと機能するか確認を。もし詰まっていると、雨水が溢れかえってしまうので、掃除を忘れずに。特にベランダのある家では排水溝が詰まっていると、ベランダ浸水が起きます。あっという間に水が溜まっていき、室内に水が浸入してきます。

 もし自宅が水害リスクの高い区域にあり、予想される浸水の深さより低い場所に床や玄関がある場合は、土のうで浸水を抑えます。地域によっては「土のうステーション」があるので活用してください。
 しかし直前の準備では土のうが調達できないこともあります。代替策として、段ボールとごみ袋、ビニールシートを材料にした防水壁をつくりましょう。

 自動車を保有する場合、水没しないよう事前に高台へ移動を。近くに屋内式の立体駐車場があればそちらへ移動させておけば飛来物も避けられて安心です。

 停電と断水、ガスの供給停止に備えて、入浴や洗濯などの電気や水、ガスを使う家事を済ませてしまうのも大切な準備です。水は浴槽に満タンまで貯めておけば、生活用水として利用できます。その際は、水漏れのトラブルにならないよう配管が故障していないか確認してください。またマンションは電気で水をくみ上げている場合があり、水道が復旧しても電気が通らないと水が出ないので注意です。
 保存食として、節水のために水を使わずに食べられるものを準備しましょう。停電で電子レンジを使えないことも考慮して、冷めてもおいしく食べられるメニューを。災害時には精神的にも身体的にもストレスがかかりやすいので消化がいいものだとなお良いでしょう。

 災害時はもちろん、普段から防災情報にアンテナを張り、知識と最新情報を照らし合わせて、最善の判断を行っていきましょう。

※この記事内容は、執筆時点2023年8月1日のものです。

岡部 梨恵子(おかべ りえこ)
防災士。ファイナンシャルプランナーと整理収納アドバイザーなどの資格も活かし、防災グッズや備蓄品、被災後の食や暮らしの知識についてもセミナーを開催。わかりやすい語りでメディアへの出演も多数。

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