どう受け取る?
繰上げ/繰下げ受給

原則65歳から支給される年金ですが、申請すれば繰上げあるいは繰下げての受給も可能です。ここでは繰上げ/繰下げ受給のメリットとデメリットについてご紹介します。制度の仕組みを正しく知り、ご自身のライフプランに合った方法を選びましょう。

監修:

望月 厚子

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66歳以降の受給は年8.4%増額

 老齢基礎年金は、原則65歳から受給が始まるもの。一方で、本人の希望により、受給開始年齢を変更することも可能です。受給開始年齢を早めることを「繰上げ受給」、遅くすることを「繰下げ受給」といい、最大5年まで繰上げ、繰下げすることができます。

●繰上げ受給

 本人の希望により65歳前に老齢基礎年金を受け取ること。老齢基礎年金は生涯にわたって受け取ることができるので、受給開始年齢を早めた分、長い期間、年金を受給することができます。
 ただし、受給開始を1カ月早めるごとに年金額が0.5%ずつ減るので要注意(上表参照。ただし、年金額は年間での計算です)。60歳まで繰上げると、老齢基礎年金の額が満額の70%まで下がってしまいます。さらに、その70%の年金額は“一生”変わらないため、長生きすればするほど受取総額が少なくなってしまうことになります。長寿化が進んでいる現代において、60歳時点である程度、経済的に余裕がある場合、繰上げ受給を選択することはデメリットがあると言えるでしょう。

●繰下げ受給

 66歳以降に老齢基礎年金の受給を開始すること。受給開始を1カ月遅らせるごとに0.7%ずつ年金額が増額されます。仮に70歳から受給すると、年金額は満額の142%まで上がります。大きなリスクもなく、1年間で8.4% 増額されると考えれば、低金利の日本では非常に魅力的な方法だと言えます。経済的に余裕がある場合や、65歳以降も働いて収入を得ようと考えている人は、繰下げ受給を選択し、少しでも多く年金額を増やすことも有効です。
 ただし、繰下げ受給がベストな選択とは限りません。繰下げ受給後、間もなく亡くなると、年金の受取総額は本来の年金受取額よりも少なくなる可能性があるからです。例えば、健康状態に不安がある人などは、早めに受給するのも1つの手段です。ご自身のライフプランや経済状況に応じて受給開始年齢を決めるようにしましょう。

年金額を増やす努力が大切

 正しく年金をもらうポイントは、まず、未納することなくきっちり年金の保険料を納め、自分がもらえる最大限の年金額を受け取ること。また、もらえる年金額を増額する工夫をすることも大切です。
 「個人型確定拠出年金(iDeCo)」など、第1号被保険者を対象とした「付加年金」もおすすめです。これは毎月の国民年金の保険料に400円プラスすると、将来の老齢基礎年金に上乗せして支給される年金のこと。付加年金を2年間受け取ると元が取れるので、とてもお得です。

※この記事内容は、執筆時点2019年8月1日のものです。

望月 厚子(もちづき あつこ)
大手生命保険会社と独立系ファイナンシャルプランナー会社を経て、フリーとして独立。現在は社労士として活躍しながら、年金事務所(日本年金機構)の相談員も行っている。

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