コロナ対応の特例で、電話や
オンラインでの診療が可能に

新型コロナウイルスの流行を踏まえ、患者と医療従事者の安全を確保するための特例として、初診であっても、電話やオンラインでの受診ができることになりました。その条件や注意点などをくわしく説明します。

監修:

内藤 眞弓

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感染リスクを考慮しながら
未受診による重症化を避ける目的

 世界中を危機に陥れた新型コロナウイルスは、もはや一過性のものではなく、長期的に付き合っていかざるを得ないと言われています。
 高齢者や基礎疾患のある人は、特に注意が必要だと言われており、人混みを避け、手洗いなどの衛生管理を行うことが、より一層重要になってきます。
 基礎疾患とは、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD等)、透析を受けている人、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている人のことで、定期的に医療機関に受診し、服薬指導を受けていると思います。しかし、医療機関での感染リスクを考えると、受診してよいものか悩む人もいるようです。とはいえ、受診を避けたために重症化する事態も避けなくてはなりません。

 そこで、一定要件のもと、時限的・特例的に、医療機関に出向くことなく電話やオンラインでの診療や処方が可能になっています。
 オンライン診療とは、医師と患者間において、情報通信機器を通して患者の診察および診断を行い、診断結果の伝達や処方等の診療行為をリアルタイムにより行うことです。
 その条件等について、「①初診の場合」「②2度目以降の場合」「③処方せんの取扱い」の3パターンに分けてみていきます。

電話やオンラインでできること

①初診の場合

 医師の責任の下で、医学的に可能であると判断した範囲においてのみ可能となります。診療の際には、できる限り、過去の診療録等により患者の基礎疾患の情報を把握・確認した上で、診断や処方を行うことが求められます。
 対面による診療が必要と判断される場合は、速やかに対面による診療に移行するか、それが困難な場合は、あらかじめ承諾を得た他の医療機関に速やかに紹介しなくてはなりません。

②2度目以降の場合

 事前に診療計画が作成されていなくても、すでに対面で診断されており、治療中である患者に対しては、これまで処方されていた医薬品を処方することが可能です。また、その患者の疾患により、発症が容易に予測される症状の変化に対して、これまで処方されていない医薬品の処方をすることも可能です。
 ①にもとづいて初診を行った患者に対して、2度目以降の診療も電話等を用いて行う場合、①において作成した診療録は「過去の診療録」には該当せず、感染が収束して特例が廃止された後に診療を継続するには、直接の対面診療を行う必要があります。

③処方せんの取扱い

 患者が希望すれば、医療機関から患者が指定する薬局にファクシミリ等により処方せん情報を送付することができます。その際、医師は診療録に送付先の薬局を記載し、医療機関は処方せん情報を送付した薬局に処方せん原本を送付します。
 一方、医療機関からファクシミリ等により処方せん情報の送付を受けた薬局は、それをもとに調剤等を行います。その後、医療機関から入手した処方せん原本を、ファクシミリ等で送付された処方せん情報とともに保管します。
 なお、調剤した薬剤は、患者と相談の上、品質の保持(温度管理を含む)や確実に届けられる方法(書留郵便等)を用いて患者に届けます。薬剤の発送後、薬局は、薬剤が確実に患者に届いたことを電話等により確認しなくてはなりません。

■オンライン診療アプリによる受診

 スマホ利用者であれば「オンライン診療アプリ」を使って、予約から問診・診察・決済・処方せんの配送まで、オンラインで完結することができます。もし、かかりつけの医療機関でこのサービスを導入していれば、利用してみてもよいかもしれません。

今回はあくまでも
時限的・特例的であることに留意

 誤解してはいけないのが、これらはあくまでも時限措置であって、オンライン診療が恒久的に認められるケースではないということです。
 厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」では、3カ月ごとに電話診療・オンライン診療の実績を検証しています。2020年4月~12月の実績を検証した結果、次のことが明らかになりました。

●電話診療やオンライン診療の患者は小児が多かった

●軽症と思われる患者を中心に、初診からの電話診療・オンライン診療が行われていた

●物理的に大きく離れた地域に対して診療が行われていた

●時限的・特例的な取扱いで禁止されている麻薬・向精神薬の処方、制限日数を超えた処方等が行われていた

 厚生労働省はこれらの結果を受け、時限的・特例的な取扱いの要件の遵守の徹底、概ね医療機関と同一の2次医療圏内に生活・就労の拠点を有する患者を対象とすることが望ましいこと、速やかに厚生労働省が指定する研修を受講することを周知しています。

■オンライン診療恒久化に向けての議論

 「オンライン診療の適切な実施に係る指針」が策定されたのは、2018年3月(2019年7月改訂)のことです。この指針には「オンライン診療を行う前に、直接の対面診療により十分な医学的評価(診断等)を行い、その評価に基づいて、所定の事項を含む診療計画を定めること」などが示されています。

 前述の検討会では、新型コロナウイルス対応のための時限的・特例的措置が当面継続する中で、恒久化に向けた結論を早期に出すべきではないとの意見が上がっていました。そこで厚生労働省は、2021年6月に恒久化に向けた取りまとめを行い、関係学会等の検討も踏まえて、同年秋に指針改定を目指すこととしています。
 検討会の議論のなかでは、時限的・特例的な取扱いで禁止されている行為が行われていること、発熱などの症状でも受診勧奨していない件数が多いことを憂慮する声や、オンライン診療は医師と患者のための新たな診療形態であって、事業者のためのオンライン診療とならない仕組みの検討が必要との声が上がっています。

 オンライン診療は便利ですが、治療のために使えるケースは限定的です。患者の命を守るためにも、医療には一定の規制が必要であるという原則は忘れないようにしたいものです。

 高齢者や基礎疾患の人ほど死亡率が高いといわれている新型コロナウイルスですが、基礎疾患のない若者の死亡例もあります。変異株が猛威を振るう現在、基礎疾患のない若年層の重症化や深刻な後遺症の報告も上がってきています。自分や大切な人の命を守るためにも、一人一人がどのように行動すべきかを真剣に考え、ともにこの難局を乗り切っていきましょう。

⬛︎電話やオンライン診療に対応する医療機関リスト(厚生労働省)

※この記事内容は、執筆時点2021年4月30日のものです。

内藤 眞弓(ないとう まゆみ)
1956年生まれ。ファイナンシャルプランナー、株式会社生活設計塾クルー取締役。大手生命保険会社勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。主な著書は「医療保険はすぐやめなさい」(ダイヤモンド社)。日経マネー「生保損保業界ウォッチ」(日経BP)を隔月連載。

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