健康保険は頼りになる!
医療費の負担を軽くする制度

病気やケガによって医療費が高額になってしまったら…。そんな不安から医療保険の加入を考える方も多いと思います。でも実はご加入の健康保険だけで自己負担額が減る制度があるのをご存じでしたか?民間保険を備える前に、ぜひ知っておきたい「高額療養費制度」について紹介します。

監修:

浅田 里花

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医療費の自己負担額には
上限が決められている!

 私たちの生活の中で、不安のひとつとなり得る「医療費」の問題。その不安の軽減に大きく貢献しているのが健康保険(公的医療保険)制度です。健康保険組合、協会けんぽ、共済組合、国民健康保険など、勤め先や職業によって加入する制度は異なりますが、誰もが安心して医療を受けることができます。
 とりわけ大きな役割を担うのが「高額療養費制度」。どの公的医療保険にも備わっている制度で、医療費の自己負担が高額にならないよう、上限額が設定されています。医療費が高額になるにつれて、自己負担額も比例して増えていく、ということはないのです。

 1カ月の自己負担上限額は、被保険者の所得水準(国保は世帯の加入者全員の所得)に応じて算出されます。所得区分は5段階に分かれており、高所得者には多く自己負担してもらう仕組みです。70歳未満の人の制度内容を例にすると、多くの世帯が該当する所得区分(年収約370万~約770万円)の場合、1カ月の上限額は8万100円。26万7000円を超える医療を受けた場合は、超えた金額の1%が加算されます。下図のように、医療費が100万円の場合の自己負担額は、実質8万7430円になります。また、年収約370万円以下の世帯の場合は、医療費がいくら高額になっても上限が5万7600円と、収入の状況に配慮しています。
 高額療養費制度で定められている上限額は、すべての健康保険制度に共通する「法定給付」です。加入している健康保険組合や共済組合によっては「付加給付」もあり、さらに自己負担額の上限が下がる場合も。しかし、勤め先の制度に付加給付があることを知らないケースをよく見かけます。高所得の世帯でも、付加給付があると負担がより軽くなるので、自分が加入している制度の内容を一度確認しておきましょう。

負担をさらに軽減する「世帯合算」と「多数該当」

 ひとつの医療機関で高額療養費制度の対象になるケースは、手術をともなう入院以外ではなかなかありません。しかし、複数の医療機関を利用することで負担が大きくなってしまうことがあり得ます。1カ月に2万1000円以上の自己負担が複数あり、合計額が所得区分による自己負担上限額を超えた場合は、超えた金額の払い戻しを受けられます。これが「世帯合算」です。
 被保険者自身が複数の医療機関で2万1000円以上支払っている場合はもちろん、同じ健康保険証を使っている家族(被扶養者)の分も合算できます。例えば、1カ月の間に夫がA病院へ入院して5万円、通院で2万5000円、妻がB医院に通院して5000円、子どもがC外科に通院して3万5000円の自己負担が発生した場合、2万1000円以上の負担があった夫の入院・通院費と、子どもの通院費を合算できるのです。

 近年、入院期間は短期化する傾向にありますが、病気によっては長期入院になる可能性も。また、抗がん剤治療などで通院期間が数カ月に及ぶこともあるでしょう。このような長期にわたる医療費の積み重ねを軽減するため、医療を受けた月以前の1年間で、高額療養費の支給を3回以上受けた場合、4回目からは自己負担上限額がさらに下がるようになっています。これが「多数該当」です。例えば、年収約770万円以下の所得区分の場合、4回目からの上限額が8万100円から4万4400円に下がります。
 世帯合算や多数該当を含め、高額療養費制度の対象となった場合、加入している健康保険制度によっては、申請するよう連絡があります。理由を知らずに放置すると給付を受けられず、時効になってしまうので注意しましょう。

「高額療養費制度」を活用する上で、さらに知っておきたいメリットや、気をつけるべき注意点を5つ紹介します。この制度への理解を深め、もしものときに備えて不安や疑問を解消しておきましょう。

健康保険が適用される医療費が対象

高額療養費制度の対象となるのは、健康保険が適用される診療を受けた際に患者が支払った自己負担額のみです。入院時の「食事代」や、患者の希望で選択する「差額ベッド代」、保険外の診療となる「先進医療の技術料」などは対象となりません。

同じ病院でも別計算のケースがある

自己負担額は、病院や診療所などの医療機関ごとに計算されますが、同じ医療機関であっても医科と歯科、入院と外来では計算方法が異なります。それぞれの負担額が2万1000円以上ある場合は、合計して申請が可能な「世帯合算」を適用できます。

事前の申請で窓口での支払額を軽減

入院することが決まり、高額療養費制度の対象となる医療費がかかることが分かれば、加入している健康保険制度に「限度額適用認定証」を申請しましょう。これを医療機関窓口に提出しておけば、入院費を精算する際に実質自己負担額のみの支払いで済みます。

入院が2カ月にまたがるときはそれぞれの月で計算!

高額療養費は1カ月(各月の1日から末日までの歴月)単位の医療費で計算されます。各健康保険制度が、医療機関や薬局からのレセプト(暦月単位で作成される請求書)で正確な自己負担額を把握するためで、月をまたいでの自己負担額を合算することはできません。

申請期限は2年。提出し忘れている申請書はない?

健康保険給付は、診療月の翌月1日(自己負担分を診療月の翌月以後に支払った場合は支払った日の翌日)から2年で時効になります。健康保険制度によっては高額療養費を自動的に払い戻しをしてくれるところもありますが、申請書の提出は早急に行いましょう。

医療保険の入り過ぎは家計の負担になることも

 高額療養費制度が手厚い保障だと理解すればするほど、医療費が家計を圧迫するという心配は杞き憂ゆうだと感じるはずです。しかしながら、それでもなお不安だから民間の医療保険に入ろうと考える人は少なくありません。
 民間の医療保険は入院保障が基本の保険が多いので、入院しなければ給付金をもらえません。入院することなく健康的に過ごすことができれば何よりですが、支払った保険料分のお金が家計から消えていきます。保険にはメリットがもちろんありますが、一方で貯蓄することも考えなければなりません。公的医療保険という基礎的な医療保障があり、高額療養費制度でかなりの医療費をカバーできると割り切れば、医療保険への加入額を増やすより、自由に使える貯蓄を増やし、将来に備えることができるでしょう。
 高額療養費制度の対象とならない入院時の食事代や差額ベッド代、健康保険の対象外となる先進医療などへの不安もよく耳にします。医療保険に加入することでその不安を解消したい場合は、日額5000円程度の入院給付金保障と先進医療保障が備わっているような保険を選べば安心です。

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※この記事内容は、執筆時点2019年8月1日のものです。