キャッシュレス決済を家計管理に活かそう

現金がなくても買い物ができるキャッシュレス決済。日頃から利用している人は多いのではないでしょうか。とはいえ、ひと口にキャッシュレス決済と言ってもさまざまな種類があります。今回は、キャッシュレス決済を家計に活かすためのコツを見ていきましょう。

監修:

高橋 浩史

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キャッシュレス決済は増えている?

現金を使わずに代金の支払いをすることを、「キャッシュレス決済」と言います。財布からお金を取り出す手間もなく、現金の持ち合わせがなくても商品やサービスの購入ができることで、利用者は増えているようです。また、使用金額によってポイント還元される場合があり、そのポイントを次回の支払いに充てる、商品券やグッズと交換するなどのメリットもあります。
経済産業省の調査を見ると、2023年のキャッシュレス決済比率(※)は39.3%です。2010年は13.2 %でしたから、13年間で約3倍に上昇しています。国は、2025年までにキャッシュレス決済比率を4割にすることを目標として掲げていますが、この数字を見ると目標はほぼ達成されそうな勢いです。

また、キャッシュレス決済の内訳を見ると、クレジットカード83.5%、コード決済8.6%、電子マネー5.1%、デビットカード2.9%となっています。クレジットカードが大きな割合を締めているのが分かります。

※キャッシュレス決済比率:民間最終消費支出(家計のモノ・サービスへの支払い)に対する、クレジットカード、デビットカード、電子マネー、コード決済の合計支払額の割合(出典:経済産業省

キャッシュレス決済の種類と特徴は?

キャッシュレス決済を家計管理に活かすためには、キャッシュレス決済の種類と、それぞれの特徴を押さえておく必要があります。ここでは代表的な4種類を説明します。

■クレジットカード

購入した商品や利用したサービスの代金は、クレジットカード会社が店舗に対して立替払いし、後日指定の支払日に利用者の銀行口座から引き落とされます。つまり、実際の支払いは後払いになるのが特徴です。ただし、クレジットカードを作るには支払能力などの審査が必要で、原則として18歳以上でないと作ることができません。

■デビットカード

デビットカードは銀行口座と紐づけられ、買い物をするとその場で銀行口座から利用代金が引き落とされる即時払いです。代金の支払いに利用できるのは、銀行の預貯金残高の範囲内になることが大きな特徴です。また、一般的に審査はありませんので、学生などのように安定収入がない人でも申し込むことができます(金融機関によって異なります)。

■電子マネー

決済専用の端末に、ICカードやカードを登録したスマートフォンをかざして読み込ませることで、代金を支払います。鉄道会社などが発行する「交通系カード」と、スーパーなどの小売店が発行する「流通系カード」があります。いずれも、事前にカードに金額を指定してチャージする前払方式です。暗証番号などの入力も必要ないため、決済はスピーディで簡単です。

■コード決済

スマートフォンのキャッシュレス決済アプリを利用し、QRコードやバーコードを決済端末にかざすか、店舗側でアプリに表示されたQRコードなどを読み取ることで代金を支払います。利用するには、決済アプリへの事前チャージが必要で、アプリに登録した銀行口座やクレジットカードからチャージします。決済サービスによって、チャージ限度額が決められています。

家計管理にどう使い分ける?

それぞれ特徴のあるキャッシュレス決済ですが、手元に現金がなくても買い物ができることから、使いすぎてしまうのではないかとの不安の声も聞かれます。
そこで、ここまで見てきたキャッシュレス決済、それぞれの特徴を踏まえ、使いすぎを防いで、家計管理にも役立つ利用方法をご紹介します。

■管理の容易さならデビットカード

先述の通り、支払いと同時に銀行口座から代金が引き落とされるため、使えるのは預貯金口座の残高が上限です。使いすぎ防止に、最も効果がある決済システムです。
例えば、水道光熱費や家賃・ローンなどの固定費以外の生活費用に専用口座を作り、毎月決めた予算の生活費を入金します。そして口座に紐づけたデビットカードで利用すれば支出管理がしやすくなるでしょう。また、スマホのアプリで、購入履歴や残高の確認も可能です。

■クレジットカードは1回払いで

クレジットカードは、種類や店舗によって2~24回などの分割払いも可能ですが、手数料も発生します。分割回数が増えるほど手数料も増えるため、物価高の中で余計な費用は極力避けたいものです。
また、分割払い後に思いがけない支出が発生すると支払いが厳しくなり、家計負担が増す可能性もあります。手数料の発生しない1回払いで無理なく払える額におさめましょう。1回払いが難しい場合、カード会社によっては2回払いまでなら手数料不要で分割できますので確認してみましょう。

■オートチャージの設定をひと工夫

電子マネーやコード決済には、オートチャージ機能があります。ICカードや決済アプリの残高が設定金額を下回ると、設定した額が自動でチャージされて便利なのですが、絶えず残高がある状態になるため、使いすぎの原因のひとつになりかねません。
オートチャージの設定はせず、銀行口座やデビットカードから、あらかじめ決めた予算の範囲内でチャージするほうが使いすぎを防げるでしょう。

■キャッシュレス決済アプリを絞り込む

すでにキャッシュレス決済に親しんでいる方は、何種類ものキャッシュレス決済アプリを登録しているかもしれません。キャッシュレス決済アプリは、ポイント還元キャンペーンなどもありますので、うまく使い分ければポイントを効率的に貯められるメリットがあります。
とはいえ、多くのアプリを使っていると、どうしてもお金の管理がしづらくなるうえ、せっかくのポイントも分散してしまいます。利用するアプリは2種類程度に絞り込んだほうが、家計管理やポイントを貯めるには効率的です。

不正利用対策は万全に!

キャッシュレス決済は便利な半面、ログイン情報やクレジットカード情報などを盗んで不正利用するなどの被害も増えています。
よくあるフィッシング詐欺に、カード会社や決済アプリ会社を装ったものがあります。「不正利用が疑われるためログインし直してください」「以下のサイトから登録情報更新を行ってください」といったメールやショートメッセージが利用者に送られ、偽のサイトに誘導し、ログイン情報などを入力させて盗み取る手法です。
こういったメールやメッセージは、慌ててクリックせず、リンク先のURLや送信元のメールアドレスがおかしなスペルになっていないか、不自然な日本語になっていないかなどを確認するようにしましょう。

不正利用から家計を守るためには、会員IDやパスワードの管理はもちろんですが、よく利用するサイトは公式サイトをお気に入り登録しておくことや、購入履歴・支払履歴を確認する習慣を持つと安心です。また、カードを利用したらメールで通知が来るように設定しておくことも効果的です。

まとめ
今回ご紹介したキャッシュレス決済の種類や特徴、またそれぞれの特徴を活かした活用法を参考に、皆さんなりのキャッシュレス決済の利用ルールを決めて、家計管理や使いすぎの防止に役立ててください。

※この記事内容は、執筆時点2025年1月22日のものです。

高橋 浩史(たかはし・ひろし)
ファイナンシャルプランナー。FPライフレックス代表
(ウェブサイト https://www.fpliflex.com/)
住宅購入・老後資金準備・保険見直し相談など、ライフプランニングをベースにした家計全般へのアドバイザーとして活動中。金融機関でのセミナー・研修講師、書籍・雑誌、webでの執筆業務も行う。主な著者に「災害に備えるライフプランニング」(近代セールス社)、「老後のお金安心ガイド」「最新保険ランキング」(イースト・プレス)など。

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