NISAとiDeCoをフル活用して資産づくり

NISA(ニーサ)やiDeCo(イデコ)という言葉を、耳にしたことはありますか? どちらも皆さんの資産作りをサポートしてくれる国の制度です。NISAとiDeCoについて、その内容や活用法を見ていきましょう。

監修:

高橋 浩史

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NISAは
無期限で非課税投資が実現

 NISAの正式名称は「少額投資非課税制度」といいます。国内に住んでいる18歳以上の人なら誰でも始められる制度です。

 一番のメリットは、「投資で得た利益が非課税」になること。通常は、金融商品に投資して得た利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座で売買して得た利益には税金がかかりません。
 例えば、ある金融商品に100万円を投資して150万円になったとします。本来なら値上り益50万円に対して約20%の税金がかかるため、約10万円は税金として引かれ、手元には約140万円しか残りません。ところが、NISAなら150万円がまるまる手元に残せます。
 NISAは2024年1月から制度が変わり、メリットがさらに大きくなりました。具体的には、非課税で投資できる上限額が増えたことや、非課税での保有期間が無期限になったことなどです。

 NISAには、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2種類がありますが、主な違いは年間投資枠と投資対象商品です。2つの枠を併用すれば年間で360万円、生涯で1,800万円まで(成長投資枠のみで利用する場合は、生涯で1,200万円が上限)の投資で得た利益が、無期限で非課税になります(下表参照)。

iDeCoは3つの税優遇で
さらに大きなメリットが

 一方、iDeCoの正式名称は「個人型確定拠出年金」です。国民年金や厚生年金などの「公的年金」とは別に、自分自身で掛金を積み立て、老後の資金作りをするための制度です。

 加入できるのは、原則20歳以上60歳未満の学生、会社員、公務員、自営業者、主婦(夫)などで、ほぼすべての人が加入できます。
*60歳以上65歳未満の一定の条件を満たす方も加入することができます。

 毎月の掛金は、職業などによって上限が決められています。例えば、企業年金のない会社員や専業主婦(夫)は23,000円、自営業者は68,000円などです。
 iDeCoもNISAと同様に、運用益には税金がかかりません。さらに、掛金の全額が「所得控除」になることや、将来資産を受け取るときにもメリットがあります(下表参照)。

 所得控除というのは、所得額から一定額を引く制度です。所得税や住民税は、さまざまな控除後の額(これを課税所得といいます)に、所得に応じた税率をかけて決まります。
 iDeCoの掛金も所得控除になることで、課税所得が下がって所得税や住民税が軽減できます(軽減効果は後述します)。

 また、将来積み立てた資産を受け取るときにも、退職所得控除公的年金等控除があり、加入年数や年金の受取り年齢によって、税金が優遇されます。
 ただし、収入が少なくて課税所得のない(所得税や住民税を納めていない)人は、積立時の所得控除に関するメリットがないことや、iDeCoで積み立てた資産は60歳以降の受取りになることは注意点です。

NISAとiDeCo、
積立運用の効果と税の軽減額は?

 それでは、資産づくりの効果と税の軽減額を見てみましょう。

 NISAで毎月1万円、iDeCoで毎月2万円を20年間積み立てると、積立の合計額は720万円です。運用成績次第ですが、利回りを2%(※1)とすると、合計額(積立額+利益)はNISAで約293万円、iDeCoで約587万円、合計で約880万円の資産になります。
 また、運用益が非課税になるためNISAで約11万円、iDeCoで約21万円、合計で約32万円の税金が引かれずに軽減されます。

 さらにiDeCoには所得控除があります。例えば、課税所得が300万円の場合、所得税と住民税の税率はそれぞれ10%、合計で20%です。毎月2万円・年間24万円を20年間積み立てると、96万円(24万円×20%×20年)の所得税・住民税の軽減効果もあります。

NISAとiDeCoどう使い分ける?

 NISAとiDeCoは、運用益に税金がかからない点は共通ですが、それぞれの特徴を考えると、活用法は絞られてきます。特徴を表にまとめましたのでご覧ください。

【NISAの活用法】

 いつでも引き出せますので、現役のうちに必要な資金作りに活用できます。例えば、子どもの教育資金や住宅購入資金などです。もちろん、老後の資金作りにも向いています。ただし、投資できるのは株式や投資信託などの値動きのある商品に限られるため、投資期間が短いと、一時的に投資した元本を下回る可能性もあることは念頭に置いておきましょう。

【iDeCoの活用法】

 60歳まで資産の受け取りができないため、基本的には老後の生活資金作りのために活用します。厚生年金のない自営業やフリーランスの人には特におすすめです。また、投資信託の値動きが心配なら、大きく増やすことはできませんが、元本が保証されている預貯金なども選べますので安心です。

 モノやサービスの値段が上がり、物価上昇の流れが起きつつある今、インフレに負けないよう、自分自身の努力でお金を増やすときです。NISAやiDeCoのような税優遇のある有利な制度を活用し、資産形成に役立ててみましょう。

*2024年12月よりiDeCoの毎月の掛金について、確定給付型など他の年金制度に加入している場合の上限額が変更される予定です。

※1参考:金融庁「つみたてNISA早わかりガイドブック 」
※2参考:金融広報中央委員会「しっかりシミュレーション 」

※この記事内容は、執筆時点2024年6月5日のものです。

高橋 浩史(たかはし・ひろし)
ファイナンシャルプランナー。FPライフレックス代表(ウェブサイト https://www.fpliflex.com/)
住宅購入・老後資金準備・保険見直し相談など、ライフプランニングをベースにした家計全般へのアドバイザーとして活動中。金融機関でのセミナー・研修講師、書籍・雑誌、webでの執筆業務も行う。主な著者に「災害に備えるライフプランニング」(近代セールス社)、「老後のお金安心ガイド」「最新保険ランキング」(イースト・プレス)など。

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