心身の健康のために欠かせない
「快眠」のススメ
〈第3回 理想的な睡眠環境〉

睡眠は心身の健康には欠かせないものですが、ただ長く眠れば良いというものではなく、「質」が大切だといわれています。この企画では、「質の良い睡眠=快眠」のポイントを3回に分けてご紹介。3回目の今回は、「理想的な睡眠環境」についてです。

監修:

神川 康子

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快眠のための理想的な条件

 快眠のためには、生活習慣と同じくらい「睡眠環境」を整えることが大切です。明るくて眠れなかったり、暑くて寝苦しかったり、ということは誰しもが身に覚えのあることでしょう。
 では、理想的な睡眠環境のためには、何を整えていく必要があるのでしょうか。まず大切なのは、「光・温度・音」の3つです。それぞれご紹介します。

■快眠に適した「光・温度・音」

【光】…第2回の「快眠のための生活習慣」でもご紹介しましたが、強い光を浴びると、目が覚めていきます。眠るときには、室内を暗くするか、常夜灯などで30ルクス以下の明るさにするのが良いでしょう。直接目に光が入らないように、フットライトにするのもおすすめです。また、眠る前には白色や青色の寒色系の光よりも、オレンジ色に近い暖色系の光の方がリラックスでき、快眠につながります。

【温度】…入眠時には、体の内部の体温(深部体温)が下がることで眠くなっていきます。室内の温度が低いと体から熱が逃げにくく、温度が高いと体温調節が上手くいかずに高いままになります。つまり、室温が低過ぎても高過ぎても深部体温が下がりにくいため、季節ごとにエアコンなどで調整する必要があります。夏は26℃前後、冬は16℃前後、春秋は20~24℃が理想的な室温です。また、布団の中は、33℃位が快眠につながる温度です。

【音】…睡眠中に聞こえる音は、40db以下が望ましいです。目安としては、図書館の中や木の葉が触れ合うくらいの音。静かな住宅地もその程度とされています。また、まったくの無音では、些細な音が気になることや不安感や緊張感が高まって眠りにくい場合があります。その場合は、睡眠用のヒーリング音楽などを流し、タイマーで切れるように設定しておくのがおすすめです。

寝具は、自分に合った心地良いもので
リラックスできるものを

 理想的な睡眠環境のために、もう1つ大切なのが「寝具」です。寝具を選ぶときは、リラックスできるように、サイズ感や温かさ、硬さ、肌触りなど、自分が心地良いと感じるものを見つけましょう。一度に全ての寝具を変えるのではなく、例えば、敷布団→枕→掛布団→パジャマのように、徐々に変えていくと、自分に合ったものを見つけやすくなります。下記も参考にしながら、探してみましょう。

■寝具を選ぶときに確認したいポイント

【枕】…サイズ感が一番のポイントです。横幅は、60cm以上で真ん中に頭を置いたときに左右に寝返りがうてるくらいが目安です。奥行きは、40cm以上で枕に肩を当てても頭が上にはみ出さないくらいが目安です。高さは、仰向けのときに首が緩やかなS字、横向きのときに頭から背中にかけて骨が真っ直ぐになるものが良いでしょう。

【敷布団】…眠るときには、仰向けで背骨が緩やかなS字を保っているのが良い姿勢です。その姿勢を保つためには、敷布団(マットレス)の硬さが大きなポイント。やわらか過ぎると、体重の掛かる腰や肩の部分が重みで深く沈みこんでしまいます。一方、硬過ぎると、肩や腰などが圧迫されて負担が掛かってしまいます。背骨が緩やかなS字を保てているかを目安に、ちょうど良い硬さのものを選びましょう。

【掛布団】…掛布団のポイントの1つは、中の素材です。先にも触れたように、布団の中は33℃位が理想的な温度ですので、保温性の高い素材がおすすめ。また、蒸し蒸しとした寝苦しさを解消するためには、吸湿性も大切です。羽毛を使った布団が、特に保温性と吸水性に優れています。また、布団の中の温度を保つためには、サイズも大切です。ベッドからはみ出すくらい大きい掛布団だと、隙間が空きやすく布団の中の温度が下がりやすくなるため、セミダブルベッドなら、ぴったりサイズか少し小さめの、セミダブル用またはシングル用の掛布団を選びましょう。
さらに、重さももう1つのポイントです。重い掛布団は、包まれている安心感と、ベッドとの隙間が空きにくいという特徴があり、軽い掛布団は、寝返りがうちやすく体の一部に負担が掛からない、布団の中に空気の層ができやすく温かいという特徴があります。
好みで選ぶのが良いですが、どちらでも良いという方は、体への負担が少なく保温性もある軽い物がおすすめです。

【パジャマ】…部屋着からパジャマに着替えることは、脳に眠る準備を知らせることができるため、快眠へとつながる行動の1つです。そのため入眠前には、パジャマへ着替えるのがおすすめです。ジャストサイズのものだと、血流を妨げリラックスしにくくなるためワンサイズ上のものを選びましょう。

 また、好みの香りや、お気に入りの抱き枕やぬいぐるみを見つけるのもおすすめ。質の良い睡眠をとるためには自分自身がリラックスできる環境づくりが大切です。

まとめ

 睡眠環境を整えることは、快眠へとつながります。自分に合った理想的な環境づくりを行いましょう。寝室の光・温度・音を調整し、寝具などはリラックスできるものを選ぶことがポイントです。
 現代の多くの人が悩みを抱えているといわれている睡眠。体と心を休め、毎日を健康に過ごすために、1回目・2回目の記事も参考にしながら、生活習慣と睡眠環境を整えて、快眠しましょう。

※この記事内容は、執筆時点2023年10月25日のものです。

神川 康子(かみかわ やすこ)
エムール睡眠・生活研究所 所長。富山大学 名誉教授 博士(学術)、元副学長・理事。一般社団法人日本睡眠改善協議会理事。日本眠育協議会理事。富山県社会福祉協議会理事等。40年以上に渡り、睡眠研究を行う。年間50回を超える講演を通して、睡眠教育啓発に尽力。睡眠環境学入門ほか著書・論文多数。

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