心身の健康のために欠かせない
「快眠」のススメ
〈第1回 快眠が必要な理由〉

仕事や家事で忙しい、眠るギリギリまでスマホを見てつい夜更かししてしまう、ストレスや悩みがあって寝付けないなど、さまざまな理由から睡眠時間が短い方もいらっしゃるかもしれません。睡眠は心身の健康には欠かせないものですが、ただ長く眠れば良いというものではなく、「質」が大切だといわれています。そこでこの連載では、「質の良い睡眠=快眠」のポイントを3回に分けてお伝えしていきます。

監修:

神川 康子

〉〉〉プロフィール

快眠は「心身の総合メンテナンス」

 睡眠には、体や心を休息・回復させる役割があります。しかし、快眠(質の良い睡眠)ができていないと、その役割を十分に果たすことができません。特に、日々膨大な情報量を処理している脳の疲労は激しいため、快眠ができていない状態が続くと、正常に働かなくなり、思考力や記憶力の減退、意欲・注意力・集中力の低下へとつながってしまいます。また、快眠にはストレスを軽減する効果もあるため、心身の健康には欠かすことのできないものなのです。

「すぐに・ぐっすり・すっきり」で、快眠チェック!

 快眠ができているかどうかは、「すぐに」「ぐっすり」「すっきり」で判断することができます。
●「すぐに」…布団に入り目をつむってから短時間で眠ることができるか。15分前後が良いとされています。
●「ぐっすり」…深く眠ることができているか。前半3~4時間は継続して眠れて、途中で目覚めてもまたすぐに眠れると良いとされています。
●「すっきり」…朝にだるさを感じずに起きられるか。何度も目覚ましを鳴らすことなく、目覚ましと同時か少し前に起きられていれば良いでしょう。
「すぐに」「ぐっすり」「すっきり」の3つを満たしていれば、快眠できている状態です。皆さんはいかがでしょうか。

 また、睡眠時間を気にされている方も多いかと思います。必要な睡眠時間は、個人差もあり年代によっても異なりますので、下記の目安を参考にしてください。

■年代別、最適な睡眠時間の目安

・小学校低学年まで:9~11時間
・10~20代:8~9時間
・30~40代:7~8時間
・50代以上:6~7時間

「眠れていない」と悩み過ぎない

 睡眠の悩みは、年齢を重ねるほど増える傾向にあります。その一つが「夜中に何度も起きてしまい、よく眠れていない」というもの。しかし、中高年以上になると夜中に目覚めることはよくあることですので、過剰に悩む必要はありません。何度か起きてしまった場合でも、また寝つけて合計6時間以上眠ることができていれば、大丈夫です。気にするのをやめたことで、逆にぐっすり眠れるようになった、というケースもあります。
 もちろん、下記のような症状があり、ご自身の睡眠に対して不安な状態が続くようであれば、医師の受診が必要ですので、睡眠外来や心療内科の受診を検討しましょう。

■下記のような症状には注意!

・睡眠時に息が止まっていると人から言われる
・睡眠時に痛みやかゆみなど身体症状がある
・眠れないと感じる状態が1か月程度続く

より専門的な診断を受けたい、という場合は、お近くの「睡眠医療認定医」に相談してみましょう。
※日本睡眠学会のHPにて各地区の専門医が掲載されています。

まとめ

睡眠は、体や心を休息・回復させる役割がありますが、睡眠の質が悪いと、その役割を十分に果たせません。快眠(質の良い睡眠)のポイントは、「すぐに」「ぐっすり」「すっきり」です。睡眠の良し悪しを時間の長さだけで考えるのではなく、「どのような睡眠を取れたか」という、「質」を大切にしましょう。

※この記事内容は、執筆時点2023年7月5日のものです。

神川 康子(かみかわ やすこ)
エムール睡眠・生活研究所 所長。富山大学 名誉教授 博士(学術)、元副学長・理事。一般社団法人日本睡眠改善協議会理事。日本眠育協議会理事。富山県社会福祉協議会理事等。40年以上に渡り、睡眠研究を行う。年間50回を超える講演を通して、睡眠教育啓発に尽力。睡眠環境学入門ほか著書・論文多数。

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