定年後も働くと
どんな効果がある?
人生100年といわれる今、老後の生活、中でも「お金」について心配されている方が多いようです。この不安を少しでも解消するために「老後のお金を守る」をテーマに、専門家のアドバイスをシリーズでお送りしています。今回は、定年後に働くことの効果とポイントについてご紹介します。
定年後も働くことは
老後のお金にダブルの効果
■「老後資金作り」と「年金額アップ」
老後資金を増やすためには、できるだけ長く働くのも一つの方法です。たとえば、65歳から年金と貯蓄の取り崩しで生活する必要があるとします。この場合、70歳まで働いて、年収が200万円だったとしても5年間で1,000万円を補てんできます。必要な老後資金の多くを65歳以降に働くことで確保できるのです。さらにこの時に厚生年金に加入して働くと、受け取る年金額もアップします。定年後に働くことは「老後資金づくり」と「年金額アップ」のダブルの効果があるのです。
内閣府の統計によると、60歳~69歳の6割以上の人が今後も働きたいと考えています。60代に比べて「70歳以降も働きたい人」と考える人の割合は大きく下がりますが、それでも3人に1人は働く意思があるようです。定年退職後も働くためには、現役時代から準備を進めておく必要があります。
■元気で働くには「健康管理」を
一つは健康面。働く意欲があっても、健康面に不安があると実力を発揮することができません。30代、40代は不摂生な生活を続けても体力で乗り切ることができますが、年齢を重ねると生活習慣病のリスクも高まります。自分の身体を過信せず、60歳を過ぎても元気で働くことを意識して健康管理をする必要があります。
■定年後の働き方をイメージしておく
もう一つは、定年後にどんな働き方をしたいか、事前に考えておくことです。現在、企業には定年後も継続して働くことができる制度の導入が義務付けられています。これにより、すべての企業で①65歳までの定年の引き上げ②65歳までの継続雇用制度の導入③定年の廃止のいずれかが実施されています。本人が希望すれば65歳までは継続して働くことができる環境が整えられているのです。さらに、65歳を超えて働くことができる企業も増えています。
ただし、同じ会社で再雇用された場合、60歳以前と比べて収入が大きく下がることもあります。より高い収入を確保したいと考えるなら、転職や起業などが選択肢になります。逆に老後資金がある程度確保できそうなら、現役時代のスキルを活かして「週2日だけ働く」など、ゆったりとした働き方も可能でしょう。定年後にどう働くかは、早めに考えて準備しておく必要があるのです。
定年退職の「タイミング」で
おトク度が変わる?
定年後も再雇用で65歳まで働く場合には、いつ辞めるかで雇用保険からの給付に大きな差が出ます。64歳11カ月で退職すると基本手当を150日分受け取れます。しかし、65歳以降に退職すると、「高年齢求職者給付金」に変わり、50日分しか受け取れません。この1カ月の差が大きな違いになります。ただし、高年齢求職者給付金は条件に該当すれば何度でも受け取れます
※「定年後の働き方ワンポイントアドバイス」もご覧ください。
※この記事は、都道府県民共済グループ発行「老後のお金を守る本」の抜粋です。
内容は、執筆時点2024年8月1日のものです。
内藤 眞弓(ないとう まゆみ)
ファイナンシャルプランナー(CFP®)/博士(社会デザイン学)/株式会社生活設計塾クルー取締役。ひとり一人の事情、考え方に即した生活設計、保険の見直し、資産運用などの相談業務を行う。著書に『お金・仕事・家事の不安がなくなる共働き夫婦の最強の教科書』(東洋経済新報社)など。