被災後に利用できる
「お金の支え」を知ろう

ファイナンシャルプランナーとして、「自分らしい暮らし」を実現するためのお金のアドバイスを20年以上にわたり行ってきた清水香先生。アドバイスを行う中で、近年とりわけ重要度が高まっていると感じるのが、被災後に困らないための“お金の知識”について。ここではそのポイントをご紹介していただきます。

監修:

清水 香

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他人事ではない自然災害

 深刻な風水害が各地で相次いでいます。政府の地震発生予測で確率が低いとされる地域でも、想定を超える大地震が起きています。自然災害による被災と、誰もが無縁でいられない時代となりました。
 一方、居住地域で大地震発生の可能性が低いと考える理由を問うと、25%を超える人が「特に理由はないが起きないと思う」と答えています(※1)。
 また、住所地の災害リスクを知るための手立てであるハザードマップについて、「ハザードマップを確認、自宅付近の水害リスクを認識している」との回答は、3割を下回っています(※2)。

 近年では、災害救助法適用市区町村数が、東日本大震災時を上回る年もめずらしくなくなっています。自然災害で多くの人の命や財産が危険にさらされ、保護を必要とする状況に追いやられているのです。

被災後も、
私たちの暮らしは続く

 災害は、ある日突然やってきます。幸いにして命を守ることができても、生活の基盤である住まいを失ったり、仕事がなくなったり、健康を損なったりすることもあります。私たちを支えるいくつもの柱を、自然災害は一瞬にして奪い去ってしまいます。
 しかし、私たちの暮らしはその後も続きます。失った住まいを再建し、修繕し、あるいは引っ越し、家財を再び買いそろえ…。そのとき必要になるのは言うまでもなく「お金」。災害を逃げ延び、生活再建のフェーズでやってくるのが、「お金」の問題なのです。

 たとえ被災したとしても、誰もが「自分らしい暮らし」を望んでいるはずです。困ったときに不本意な選択を余儀なくされ、つらい暮らしを強いられることなどないよう、正しい知識をもとに準備を進めておくことが大切です。

公的支援の利用は申請が必要
共済や保険での「自助」も

 被災後の生活再建を被災者が自らの力だけで行うのは困難ですから、被災者を支える公的支援制度もあります。
 公的支援制度には支援金や弔慰金、税の減免などさまざまなものがあり、窓口や手続き時期はそれぞれ異なります。必要な支援を受けるには、そのそれぞれについて、被災者自ら申請をしなくてはならないため、その際は正しい情報が欠かせません。

 ただし公的支援は、それだけで生活再建が成し遂げられるほど十分な内容ではないのです。
 わが国では、被災後の生活再建は「自助・共助」が基本とされ、公助(公的支援)は側面的支援にとどまるとされます。例えば、住宅が全壊した世帯が受け取れる支援金は、最大でも300万円です。これだけで生活再建や住宅再建を図るのは多くの世帯には困難でしょう。
 このとき火災共済や火災保険、地震保険などで備えていれば、被災後に共済金や保険金を受け取れ、生活再建は大いに支えられます。適切に加入し、速やかに請求手続きをしましょう。公的支援が限られる中では、準備の有無が被災後の生活再建を左右することにもなるのです。
 共済や保険によってカバーされる内容は、商品や契約により異なります。持ち家で貯蓄が少ない、ローン残高が多い世帯は、被災後の家計リスクが大きくなります。わが家の居住地のリスクに見合う、適切な契約内容に整えることにも取り組みましょう。

 被災後に助けとなるさまざまな制度やしくみについては、この「暮らしのタネonline」でも、随時ご紹介していきます。

■「被災者支援に関する各種制度の概要」(PDF)内閣府

※1 損害保険料率算出機構「地震危険に関する消費者意識調査(2015年3月)」
※2 損保ジャパン日本興亜「ハザードマップに関するアンケート調査(2018年7月)」

※この記事は、都道府県民共済グループ発行「災害時のお金ハンドブック」の抜粋です。
内容は、執筆時点2024年8月1日のものです。

清水 香(しみず かおり)
1968年生まれ。FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表、株式会社生活設計塾クルー取締役。生活者向け相談業務のほか、執筆、講演など幅広く展開、TV出演も多数。財務省の地震保険関連の政府委員を歴任、自由が丘産能短期大学講師、日本災害復興学会会員。

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