人生100年時代の「脳活」習慣
第1回 認知症は若いうちから注意が必要?

高齢化社会において大きな課題となっている「認知症」。実は40代から脳機能の低下がすでに始まっているのはご存じでしょうか? この記事では、全2回にわたって認知症と予防法「脳活」について紹介します。第1回は、認知症になる要因についてです。
認知症とは?
加齢によって進行する認知症は、2025年には65歳以上の5人に1人がなると推定されています(*)。「認知症=物忘れ」と思われがちですが、認知機能の低下による症状のことで、日常生活に支障が出るレベルになると「認知症」と判断されます。
■認知症の主な症状
・記憶力の低下:同じことを何度も言ったり聞いたりする、物の置き場所を忘れて探し回る、最近あったことを忘れる。
・視覚認知機能の低下:知っている人の顔や物が分からない、知っているはずの場所で迷う。
・言語能力の低下:物の名前が出てこない、人が言うことを理解できない、流暢に話せない。
・社会的認知・判断力の低下:他人に共感できない、抑制がきかない、悪気なく万引きなどをしてしまう。

記憶力などの低下が気になり始めたら、以下をチェックしてみましょう。当てはまる数が多いほど注意が必要です。
※ご家族や身近な方がチェックすることもできます。

ただし、必ずしも「脳機能の低下=認知症」とは限らないため、まずは医療機関を受診することをおすすめします。
認知症と似た症状の病気
認知症の症状に似た症状を示す病気はたくさんありますが、よく知られているものには正常圧水頭症、ビタミンB欠乏症、うつ病などがあります。いずれも対処法が異なるので、医療機関で正しい診断を受けることが大切です。
・正常圧水頭症:歩行障害、尿失禁、認知機能の低下が主な症状です。早期診断と治療で改善が期待できます。
・ビタミンB欠乏症:疲労感、神経障害、貧血、記憶力の低下、抑うつなどの症状が現れることがあります。食事やサプリメントなどによるビタミンB群の補充で改善が期待できます。
・うつ病:注意力や記憶力が落ち、認知機能の低下が起こることがあります。適切な治療により改善が期待できます。

認知症を引き起こす要因と予防
脳内の老廃物を上手く代謝できなくなる、脳の栄養が不足する、脳の血流が悪くなる、脳を刺激する情報が少なくなるといった様々な理由で、認知症になる可能性が高まります。ただし、脳機能の低下は働き盛りである40代から始まることもあります。認知症は先天的な要因(遺伝)と後天的な要因(生活習慣)が影響し、後天的な要因として下記のような状態が続くと認知症になる可能性が高まるため注意しましょう。
■後天的に認知症を引き起こす要因
・生活習慣病:糖尿病や高血圧、脂質異常症などは、脳の血管や神経にダメージを与え、認知症のリスクを高めます。
・運動不足:血流や神経細胞の活性化が低下し、認知症の進行を促進する要因となります。

・考える機会の減少:脳への刺激が不足し、神経細胞やそのネットワークが弱まるため、認知症の進行が促進されると考えられています。
・急激な環境変化:新しい環境に馴染めずに閉じこもった生活になると、認知低下が進行する可能性が高まります。
■認知症を予防するために
上記の状態にならないためにも、予防として「栄養バランスの取れた食事」「適度な運動」「良質な睡眠」、そして趣味やコミュニケーションを通じて「脳に刺激を与えること」が大切です。
認知症は進行性の病気であり、一度発症してしまうと完全に治すことはできません。若いうちから生活習慣を見直しましょう。

まとめ
普段の生活が乱れると、脳機能の低下につながり、将来「認知症」になる可能性が高まります。第2回では、「食事」「運動」「睡眠」をはじめ、脳を活性化させる「脳活」の具体的な方法を紹介します。
*出典:厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~」
公開日:2025年3月5日
今野 裕之(こんの ひろゆき)
医療法人社団TLC医療会ブレインケアクリニック名誉院長。一般社団法人日本ブレインケア・認知症予防研究所代表理事・所長。日本初のリコード法(アルツハイマー病の画期的治療プログラム)認定医。認知症の予防・治療に栄養療法やリコード法を取り入れ、一人ひとりの患者に合わせた診療に当たっている。著書に『最新栄養医学でわかった! ボケない人の最強の食事術』(青春出版社)、『ボケたくなければ「寝る前3時間は食べない」から始めよう 認知症診療医に教わる最強の生活習慣』(世界文化社)がある。その他、監修多数。