所得税と住民税、いったい何が違うの?

税金にはさまざまな種類がありますが、収入を得たときにかかる主な税金には、所得税と住民税があります。この2つは、誰にとっても身近な税金ではないでしょうか。今回は、所得税と住民税の違いや、臨時収入を得たときの税金について解説します。
所得税と住民税の違いは何?
最初に、所得税と住民税の違いについて確認しておきましょう。
所得税と住民税は、個人が得た1年間の所得に対してかかる税金という点では共通しています。主な相違点としては、税金の「納税先」と「納税時期」です。
■納税先
所得税は国に納める税金で、「国税」とも呼ばれています。納税の管轄は税務署です。
一方、住民税は居住地の自治体(市区町村・都道府県)に納める税金で、「地方税」と呼ばれています。納税の管轄は県税事務所などです。

■納税時期
所得税は、基本的にその年の税金を年内に納税します。会社員の方などは、毎月の給与から天引きで納付しています。ただし、税額計算のもとになる年間所得は、1年が終わらないと確定しませんので、毎月天引きされている所得税は概算です。
12月になって年間所得が確定すると、年末調整で所得税の過不足を調整し、1年間の納税額を確定します。一般的に、毎月の所得税は多めに天引きされているため、年末調整で税金が戻って来るケースの方が多いのではないでしょうか。
自営業の方などは、業務内容により報酬から源泉徴収され、報酬の支払元が所得税を納付しています。最終的な税額は1年間の所得から計算し、確定申告で所得税を納付します。
住民税は、その年の税金を翌年から納税します。前年の所得をもとにして計算した「住民税決定通知書」が毎年6月頃に交付され、会社員の方などは勤務先が代行して6月の給与から毎月天引きし、分割で自治体に住民税を納付しています。
自営業の方などは、住民税決定通知書に記載された税額を、毎年6月から一括もしくは年4回に分割して、自分自身で納付するのが基本です。

所得税と住民税の税額はどうやって決まるの?
基本的な違いは先述のとおりですが、所得税や住民税それぞれの税額の設定にも違いがありますので、理解しておきましょう。
■所得税の税額
所得税の場合は、「課税所得×税率」で税額が決まります。この「課税所得」とは、すべての収入から必要経費や基礎控除・配偶者控除などの所得控除をした後の金額のことです。
所得税の税率は、所得が増えるほど段階的に高くなる「超過累進税率」という仕組みになっています。さらに所得に応じて一定の控除もあります(下表参照)。
例えば、課税所得が150万円なら「150万円×5%−0円=75,000円」、250万円の場合は「250万円×10%−97,500円=152,500円」が年間の所得税の税額です。

■住民税の税額
住民税は、正式には「市町村民税」と「道府県民税」を合わせた税金のことです。実際の納税では市町村に一括して納め、道府県民税については各市町村から払い込まれます。
住民税の種類には、「所得割」と「均等割」の2つがあります。
所得割は、前年の1月から12月までの所得(所得税と同じく必要経費や所得控除後の金額)に応じて税額を計算し納付する税金です。均等割は、所得による税額に差はなく、定額で税金を納付します。
所得割の税率は、一律10%(市町村民税6%、道府県民税4%)です。均等割の金額は自治体によって異なりますが、一般的には市町村民税が3,000円、道府県民税が1,000円、合計で年間4,000円となります(※1)。
例えば、課税所得200万円の場合、所得割は「200万円×10%=20万円」、均等割は「4,000」円なので、年間の住民税の合計は204,000円です。
※1 2024年度から、均等割に1,000円の「森林環境税(国税)」も加算されます。
臨時収入にも税金はかかるの?
ところで、給与収入など継続的に得ている収入とは別に、「フリーマーケットで物が売れた」など、一時的に収入を得ることもあるでしょう。こうした「臨時収入」があった場合でも、原則として所得税や住民税がかかります。
臨時収入は、所得の種類でいうと、「一時所得」や「雑所得」に該当します(下表参照)。
一時所得は営利目的ではない臨時に得た所得、雑所得は一時所得を含め、その他の所得(※2)のいずれにも該当しない所得です。
※2 利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得

ただし、一時所得の場合、総収入から50万円を差し引いて所得を計算できる「特別控除」があります。年間の一時所得の合計が50万円以下であれば税金はかからず、確定申告も不要です。一時所得の計算方法は、以下のようになります。

雑所得については、一時所得のような特別控除はありませんので、基本的には税金がかかり、確定申告が必要です。雑所得の金額は、以下のように計算します。

なお、古着やゲームなど、自宅にある不用品をリサイクルショップなどに売って得た収入には原則税金がかかりません。また、宝くじの当選金や、自動車保険・火災保険などの損害保険の保険金も、税金のかからない非課税扱いです。
まとめ
収入があれば所得税と住民税を納めるのが基本
私たちが生活していくために、収入は欠かせないものです。そして、その収入に応じて税金を払うことは国民の義務となっています。
なかでも所得税と住民税は、私たちの生活に深く関わっている税金です。それぞれの違いを押さえ、いつ、どのタイミングで納税しているのかを理解しておきましょう。
また、臨時収入にも税金がかかる場合がありますので、所得の種類や所得の計算方法なども、合わせて覚えておいてください。
※この記事内容は、執筆時点2025年2月19日のものです。
高橋 浩史(たかはし・ひろし)
ファイナンシャルプランナー。FPライフレックス代表(ウェブサイト https://www.fpliflex.com/)
住宅購入・老後資金準備・保険見直し相談など、ライフプランニングをベースにした家計全般へのアドバイザーとして活動中。金融機関でのセミナー・研修講師、書籍・雑誌、webでの執筆業務も行う。主な著者に「災害に備えるライフプランニング」(近代セールス社)、「老後のお金安心ガイド」「最新保険ランキング」(イースト・プレス)など。