「物価」って何だろう?

子どものころから「お金」について学ぶことは、世の中の仕組みを知り、経済観念を育てることにもつながっていきます。また最近では、大人にとってのお金の常識も変化しています。そこで、この連載では、親子どちらにとっても学びとなるお金の知識をご紹介。第2回目の今回は、物価について説明します。

監修:

八木 陽子

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「物価」はモノやサービスの値段
買いたい人と売りたい人のバランスで変化

 「物価」とは、様々なモノやサービスの値段を一括りに表したもの。「物価が高い」といえば、リンゴや肉、魚など、その地域で売られている様々なモノやサービスの値段が高いことを表します。物価が高いと、購入するときにお店に多くのお金を支払う必要があるため、良くないことのように感じるかもしれません。しかし一方で、消費者やお店などを通して、その地域で多くのお金が動くため、経済的には豊かな証ということもできます。

 物価は様々な要素によって変化しますが、需要と供給のバランスもその要素の一つです。「需要」とはモノやサービスを買おうとすること、「供給」とは売ろうとすること。一般的に需要(買いたい、欲しいと思う人)が多く供給が少ないと値段は上がり、供給(売りたい人、商品数)が多く需要が少ないと値段は下がります。珍しいものや数量限定のものなどの値段が高いのは、需要が多く供給が少ないためです。

■値段が上がるとき

〈買いたい人(需要)が商品の数(供給)より多い〉

■値段が下がるとき

〈買いたい人(需要)が商品の数(供給)より少ない〉

 また、需要と供給のバランスは、「景気」によっても左右されます。景気とは、経済活動の動向を表す言葉で、「好景気(景気が良い)」とは、経済活動が活発である(お金がよく動いている)状態です。モノが売れると、会社や個人の利益が増え、賃金が上がります。すると増えた賃金で買い物がしやすくなり、さらにモノが売れていきます。このお金がよく動いている状態が、好景気ということ。「不景気(景気が悪い)」とは、この反対のことをいいます。
 好景気のときには、基本的に物価が上昇します。買い物をすることが増え、モノの需要が多くなるスピードに、供給が追い付かずに少なくなってしまう傾向があるからです。

 ただし現在の日本では、多くの人の賃金が十分に上がらないのに、物価が上がり続ける状態になっています。主な理由は、海外からの石油や天然ガス、食料品の輸入が滞ったこと、アメリカの物価高の影響による円安で輸入コストが増加したことなどが日本の物価上昇につながっています。

値段が上がり・下がり過ぎると
どんなことが起こるの?

 好景気のときには賃金が上がり、買い物をする人が増え、物価が上昇します。この物価の上昇が続く状態を「インフレーション(インフレ)」といいます。賃金が上がるのなら良いのでは?と思うかもしれませんが、インフレも行き過ぎると生活に悪影響が出ます。賃金の上昇より物価の上昇スピードが早い場合が多いため、段々と生活が厳しくなってしまうのです。
 例えば、元々150円のジュースがインフレで2倍の300円になったとき、同じように元々400万円の年収が2倍の800万円になることはほとんどないでしょう。それは、モノも2倍売れて、賃金の倍増につながることが考えにくいからです。
 生活が厳しくなると、みんなが買い物を控えるようになり、モノが売れなくなります(需要が少なく供給が多い状態)。すると、モノの値下げが始まり、インフレとは反対に物価が下がる状態の「デフレーション(デフレ)」へと変化します。デフレが行き過ぎると再び少しずつモノが売れるようになり、今度はデフレからインフレへと変化します(需要が多く供給が少ない状態)。こうしてインフレ・デフレは繰り返し起こるのです。

昔と今でこんなに違う⁉
モノの値段

 インフレ・デフレを繰り返しながら日本の経済は成長し続け、物価も徐々に上がり続けています。今の日本の物価は50年前と比較すると、約3倍ともいわれています。例えば、こんなに違いがあります。

※ハガキは2024年秋ごろに85円へ値上げの予定

参考:総務省「小売物価統計調査」、文部科学省「国立大学と私立大学の授業料等の推移」、八木陽子監修「10歳から知っておきたいお金の心得 大切なのは稼ぎ方・使い方・考え方」えほんの杜、国税庁「民間給与実態統計調査」

物価が上がるのは経済成長してきた証でもありますが、今は、物価は上がっても賃金がなかなか上がらない状況です。現状を乗り越えていくためには、不必要なモノの購入を控えて節約する一方で、本当に必要なモノにはお金を使うことが大切です。必要なモノについて、家族で話し合ってみるのも良いでしょう。

まとめ
物価とはモノやサービスの値段のことで、需要と供給のバランスや、景気の良しあしによって変わります。インフレ・デフレを繰り返しながら経済成長し続け、物価は50年前の約3倍に。しかし、現在は社会情勢が加わったことで賃金が十分に上がらないのに物価高という状況です。お金の使い方をよく考えながら乗り越えていきましょう。

次回は「円安・円高」など、「為替」についてのお話です。

※この記事内容は、執筆時点2024年1月31日のものです。

八木 陽子(やぎ・ようこ)
株式会社イー・カンパニー代表取締役。キッズ・マネー・ステーション代表。ファイナンシャルプランナー、キャリアコンサルタント。2005年からお金教育・キャリア教育を普及する「キッズ・マネー・ステーション」を主宰し、所属する全国の講師たちと、小・中・高等学校にて授業や講演などの活動実績が多数。著書や監修本に「お金は子どもに預けなさい」(経済界)、「おさいふのかみさま」(フレーベル館)、「10歳から知っておきたいお金の心得」(えほんの杜)など。その他「あさイチ」「ウワサの保護者会」テレビ等のメディア出演も多数。

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