子どもに必要な
「時間感覚」って何?

子どもの自立心を養うために大切なものの一つが時間感覚です。学習意欲の高い子どもは、小さなころからこの感覚を持っているとのことですが、なぜ大切で、またどうやって養えばよいのでしょう。第6回目は「自立心」をテーマに、時間感覚についてお伝えします。

監修:

小川 大介

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勉強のできる子は、
逆算する計画力がある

 お子さんの勉強(宿題)を見てあげたい。多くの親御さんの思いは同じなのですが、実際は共働きのご家庭が多く、親御さんが子どもの宿題を見てあげられる時間はなかなか作れないものですよね。子どもが自ら宿題に取り組んでくれるのが理想なのですが、なかなかそうもいかず、気が付けば「宿題しなさい!」とついつい怒ってしまうことも。

 一方で、自ら勉強に取り組める自立した子どもがいることもまた事実です。勉強のできる子どもは、与えられた課題や到達したい目標に対して、逆算でスケジュールを立てることができます。「今週は、ここまでの作業をしないといけない。だから今日は、ここまで勉強しないといけない」。こうした「計画する力」の元となるのが「時間感覚」なのです。

朝ごはん食べたら、
何するの?

 ではこの時間感覚は、いつごろから身につくものなのでしょう?実は3歳ごろには、すでに時間感覚が芽生えています。たとえば朝ごはんを食べたら、次は公園に行きたい、ブランコの後はすべり台で遊びたいなど、ちょっと先の予定を考えたり、言葉にして発したりします。親御さんはお子さんのこうした言葉に注目してあげてください。そして、こうした力をさらに引き出すために、お子さんに「朝ごはんを食べたら、次は何しようか?」など、日々の生活の中で意識的に予定を聞いてあげてほしいのです。

 最初のうちは、お子さんは口に出せないかもしれません。でも毎回聞いていると、「絵本が読みたい」「滑り台がしたい」など、自分の希望を話すようになります。そしてこれを続けていくと、「絵本を読んだら、公園に行く」などすこし先の予定も話せるようになってくるのです。まずはこうした「1日」という単位の中で時間感覚を養っていきましょう。

予定表を作ると
さらに感覚が養われる

 1日単位で時間感覚を身に付ける練習方法として、例えば次のような方法がおススメです。
 日曜日の朝、まずお子さんに「今日1日何して過ごしたい?」と予定を聞いてあげましょう。「朝ごはんを食べたら公園に行って、お昼ご飯に帰って来て、何時からこの番組を見て…」、こうしたお子さんが話す予定を親御さんは聞きながら書き取って、簡単な予定表を作ってお子さんに見せてあげましょう。きっとお子さんは「そうそう!」とうなずいたり、「やっぱり絵本はやめて、ブランコ!」など新たなリクエストをくれたりするでしょう。こんな感じでお子さんが一緒に楽しんでくれたらしめたもの。実はこの予定を考えていく作業自体が「時間感覚」を養い、計画力の土台となっていくのです。

自立とは、子ども自身で
時間の過ごし方が決められること

 時間感覚が養われると、1日の過ごし方、1週間の過ごし方、1カ月の過ごし方が決められるようになり、「こういう学校に行きたい」「こういう職業に就きたい」など未来についても考えられるようになっていきます。さらに今日1日の行動が良かったか、悪かったかなど、自分で評価できるようになっていきます。こうなれば、まさに「自立」したと言えるでしょう。

 自立とは、子どもが時間の過ごし方を自分自身で決められるようになることです。親がついていないとダメ!そんな思い込みは捨て、親がついていなくても、自ら勉強に取り組む、その中から楽しみを見出す。そんな自立心を時間感覚と共に育てていきましょう。

<子どもが育つ遊びメモ>

「カレンダー遊び」

対象:未就学児


 カレンダー遊びは、時間感覚を養うことができる遊びです。遊び方は、簡単。運動会の日、おばあちゃん家に遊びに行く日などのイベントを、カレンダーに書き込んだり、好きなシールを貼ったりします。そして毎日、その日までの時間を数えて「あと〇日だね」とお子さんに話し掛けてあげてください。次第に、1日ずつ時間が過ぎていくという抽象概念が理解できるようになります。カレンダーはリビングの見えるところに貼っておくのが良いでしょう。

※この記事内容は、執筆時点2021年5月7日のものです。

小川 大介(おがわ だいすけ)
教育家。中学受験情報局「かしこい塾の使い方」(https://www.e-juken.jp)主任相談員。
京大法を卒業後、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。塾運営を後進に譲った後は、教育家として講演、人材育成、文筆業と多方面で活動している。6000回の面談で培った洞察力と的確な助言が評判。自らも「見守る子育て」を実践し、一人息子は電車の時刻表集めやアニメ「おじゃる丸」に熱中しながらも、中学受験で灘、開成、筑駒すべてに合格。
メディア取材も多く、著書多数。最新刊『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)。
You Tubeチャンネル:見守る子育て研究所

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