子どものプラスになる
習い事の「考え方」

シリーズ「なるほど!子育てメモ」。2回目のテーマは「習い事」です。1回目では、子育てにおいて与えすぎが望ましくないことをお伝えしましたが、子どもの成長を考えるうえで、習い事はどのようにとらえればよいのでしょう。その考え方を紹介します。

監修:

小川 大介

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ボーっとしている時間は
怠けている時間???

 子どもに習い事をさせたり、何かのイベントを体験させたりすることはもちろん良いことです。お子さんの成長にとっての様々な刺激を与えてくれます。ただ、過剰に与えすぎると、その体験を定着させられないことを前回の記事で触れました。今回はその詳細をお伝えしたいと思います。

 子どもは、体験したことを自分の中に定着させるまで時間がかかります。その定着の時間として重要なのが、「ボーっとしている時間」です。リビングでゴロゴロしたり、ぼんやりテレビを見たり。親からすると怠けている時間のように感じ、焦ったり、イライラしたりするかもしれません。しかし、子どもにとってはとても大切な時間なのです。そのため、いくつも習い事を掛け持ちさせたり、いろんなイベントをはしごしたりして息つく暇もないような1週間を過ごさせてしまうと、頭の中が混乱し、せっかくの体験を吸収することができなくなります。結果、次から次へ「こなす」だけになってしまうのです。

フリータイムがないと
心が動かなくなる

 ボーっとする時間が無くなると、もう一つ弊害があります。それは心が動かなくなることです。「今日はダンス教室が楽しみだな」「今日の書道教室に通うのは面倒だな」など、子どもは子どもなりに、習い事に対して感情を持っています。しかし、詰め込み過ぎると目の前のことに追われてしまい、楽しみだ、面倒だ、といったことを感じなくなっていくのです。これが「心が動かなくなる」状態です。心が動かない状態で習い事をしても、ただやらされているだけで、そこで得た経験をほかで生かすことができません。

 この2つの点から、習い事を詰め込み過ぎるのは避けたほうがいいでしょう。空いている時間をとにかく埋めるといった感覚は卒業して、子どもに時間の主導権を渡していきたいですね。余白の時間を大切に考えてあげるイメージです。

子どもが何に向いているかは
誰にもわからない

 習い事に関して一番多い質問が「何を習わせればよいでしょう」というものです。特に小さなお子様をお持ちの親御さんにとっては、かなり気になる悩みのようです。

 理想は「子どもに向いているもの」なのでしょうが、こればかりは誰にもわかりません。まずはお子さんの様子をしっかり見て、何に熱中しているかを見つけましょう。そして「運動、体力面」「創造・芸術面」「知育面」の3つのうち、どれがわが子にとって合っていそうか、親としてどれを大切にしたいのかを考えましょう。「みんながやっている」などの理由ではなく、「うちの子にはこれが良さそうだな」と思える習い事が見つかれば、それが答えです。子どもの興味と関係ない、親の都合だけで習い事を選ぶと、結果身につかないものになってしまいますので、ここでもやはり子どもをしっかり見ることが大切です。

習い事をさせないのは
OK?NG?

 ここまで習い事をさせることを前提にお伝えしてきたので、習い事をさせていない親御さんは不安を感じたかもしれません。でもご安心ください。習い事をしていなくても、大丈夫です。子どもにとっては親と一緒に過ごす時間も実りのある時間です。親子で一緒におやつを食べたり、テレビを見て笑ったりすることも、大切な時間なのです。また、両親が仕事から帰ってくるのを待つ間に、塗り絵をしたり、図鑑を眺めたり、ブロックにのめり込んだりと、自分ひとりの世界にひたるのも大きく育つ時間です。帰宅したら、お子さんの話を聞いて、その世界を少し覗いてあげるといいですね。

 習い事をさせる、させないに関わらず、大切なのは子どものことを見守ってあげることです。親の理想に当てはめようとせず、子どもの心の動き、「好き」と思う気持ちを大切にしてあげましょう。

<子どもが育つ遊びメモ>

「一本線描き遊び」

対象:未就学児


 大きめの紙にゆっくり大きく、線を引きます。その時、子どもに「ついてきてー」と線引きの真似をさせてあげましょう。慣れてきたら、公園の地面でもっと大きく線引きしてみると楽しいですよ。線を引くことは図形感覚につながり、数学の力とも深く関わります。街中の建物などの姿に様々な図形を発見できたりもするでしょう。

※この記事内容は、執筆時点2020年10月30日のものです。

小川 大介(おがわ だいすけ)
教育家。中学受験情報局「かしこい塾の使い方」(https://www.e-juken.jp)主任相談員。
京大法を卒業後、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。塾運営を後進に譲った後は、教育家として講演、人材育成、文筆業と多方面で活動している。6000回の面談で培った洞察力と的確な助言が評判。自らも「見守る子育て」を実践し、一人息子は電車の時刻表集めやアニメ「おじゃる丸」に熱中しながらも、中学受験で灘、開成、筑駒すべてに合格。
メディア取材も多く、著書多数。最新刊『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)。
You Tubeチャンネル:見守る子育て研究所

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