コロナで収入ダウン!
住宅ローン返済に困ったら
新型コロナウイルス感染拡大に関連した収入ダウンによって、住宅ローンの返済が難しくなったとき、「絶対にやってはいけないこと」があります。あわせて「最初にすべきこと」と「返済見直しのメニュー」も知っておきましょう。
お金の信用力は自分で守る!
絶対にやってはいけないこと、それは「延滞」です。
延滞とは、ローン返済日に預金残高が不足し引き落としがされないことをいいます。延滞すると、いいことは何もなく、不利益だけが発生します。
延滞すると、「個人信用情報」というローンやクレジットカードの利用状況に傷が付くので、絶対にしてはいけないことと覚えておいてください。返済の引き落としが61日以上滞ると、信用情報のデータ上では事故情報が登録され、いわゆる“ブラックリスト”化の状態となります。
事故情報の記録は5年間残ります。その間、住宅ローンやクレジットカードの新規申し込みは通らなくなり、借り換えもできません。また、すでに持っているクレジットカードの更新ができなくなる可能性がありますし、携帯電話を買い替える際、分割払いができなくなるかもしれません。
実は、たった1回の延滞でも不利益を被ることもあります。銀行によっては、1回の延滞で「金利優遇(=金利割引)を廃止する」という規約を設けている場合もあります。金利割引がなくなると、適用金利が高くなり、毎回の返済額がアップするのです。
実際には、1回の延滞でいきなり金利優遇の廃止を実行するとは思えませんが、こうしたルールがあることを知っておいてください。
残高不足に気づかなかった「うっかり延滞」も、お金がなくて「払えない延滞」も、信用情報上は同じようにただの「延滞」記録です。自分のお金の信用は自分で守るものだと覚えておきましょう。
住宅ローンの返済のために消費者金融からお金を借りることも「やってはいけないこと」です。住宅ローンの金利は1%前後ですが、消費者金融から借りると10%以上。「借金で借金を返す」のは禁じ手です。
銀行に相談するのは怖くない
住宅ローン返済が困難になりそうなとき、最初にすべきなのは「借りている銀行に相談する」ことです。このように言うと、ほとんどの人が「返せないのに、何を相談するのか」と驚きます。返せないと正直に言ってしまうと、家を手放す事態になるのかもと考えるようですが、そんなことはありません。
金融機関は、2009年に施行された「中小企業金融円滑化法」という法律により、借入金の返済が困難になった個人や中小企業等に対し、返済条件の変更に応じる義務があります。借りている人の収入減少の背景をよく聞いた上で、その人(企業)にあった返済条件の見直しをすることと定められています。
この法律のいいところは、銀行など金融機関が監督官庁である金融庁にウソの報告(ちゃんと相談に乗っていないのに、乗ったというウソ)をした場合の罰則規定が設けられていることです。相談に応じる体制が整っているので、安心してください。
リスケのメニューは主に3つ
返済条件の見直し(リスケジュール、以下、リスケ)には、次のようなメニューがあります。
①一定期間の返済額減額
②一定期間の元本据え置き
③返済期間の延長
いずれの見直し方法をとっても、毎回の返済額は減額になります。このほか、ボーナス返済を取りやめて、毎月返済のみへの変更もできます。
上記3つの見直し方法のうち、②と③の利用は避けたほうがいいでしょう。
「②元本据え置き」とは、利息だけは全額支払い、元本には1円も充当されない見直し方法です。苦しいときに毎月数万円も利息を払ってローン残高が減らないのは、ばかばかしいからです。
「③返済期間の延長」は、文字通り、当初の返済期間よりも長くし、毎回の返済額を少なくする方法です。一定期間の減額ではなく、将来にわたっての減額ですから、これはリスケというより、契約の変更といってもいいでしょう。
借入当初の完済年齢が60歳を超えている人が返済期間を延長すると、老後に負担を先送りすることになります。銀行も貸し倒れリスクが高まるため、メニューにあっても積極的には勧めないと思われます。私も絶対にお勧めしません。
リスケするなら、「①一定期間の返済額減額」がいいでしょう。たとえば、毎月の返済額が10万円で、半分の5万円なら返済できると申し出ると、半年間から1年程度の一定期間だけ、5万円の返済となります。返済額にもよりますが、利息が引かれた後、一部元金にも充当されるので、わずかでも残高は減っていきます。家計の危機的状況が一段落したときに再度銀行で相談し、通常の返済に戻します。その場合は、従前の返済額より増額となりますが、他の2つのメニューに比べ、将来に先送りする負担を大きくしなくて済みます。
銀行で相談するメリットは、「自分のローン」で試算された見直しプランを確認できることです。そのうえでリスケをする、しないを決めるといいでしょう。トータルの返済額が増えるなどのデメリットが見えると、「他の支出の見直しに取り組んでみます」と帰っていく人も多いそうです。相談したい場合は、取引している支店に電話をすると、相談窓口を紹介してくれます。
※この記事内容は、執筆時点2020年6月12日のものです。
深田 晶恵(ふかた あきえ)
1967年生まれ。ファイナンシャルプランナー、株式会社生活設計塾クルー取締役。外資系電気メーカー勤務を経て、96年にファイナンシャルプランナーに転身。著書に『共働き夫婦のための「お金の教科書」』(講談社)など。