年金生活で心配な医療費…?
自己負担額には上限あり!

2022年度後半から75歳以上の自己負担割合が年収により2割になり、老後の医療費が心配されますが、健康保険の「高額療養費制度」で1カ月(月初から月末)の自己負担額には上限があります。

監修:

浅田 里花

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通院だけでも上限あり

 所得金額により、医療費の自己負担額の上限が決められています。通院だけでも上限があるのが、70歳未満の制度と違っています。

■70歳から74歳までの人

 国民健康保険など、それまでの健康保険制度に引き続き加入しますが、70歳になれば「高齢受給者証」が交付されます。所得区分が住民税非課税世帯にあたる場合は、「限度額適用・標準負担額減額認定証」の交付を申請しましょう。

■世帯合算

 これらの提示により、医療機関窓口で支払うのは自己負担額上限までとなりますが、上限額以下の支払いが複数ある場合は、申請により払いすぎている分を還付してもらえます。個人単位はもちろん、70歳から74歳までの家族も、世帯単位ですべての金額が合算できます。また、同じ制度に加入している70歳未満の家族がいる場合、1医療機関で2万1,000円を超える自己負担額があった分は合算できます。

■75歳以上の人

 75歳になると、「後期高齢者医療制度」に加入することになります。住所地の市区町村役場から被保険者証が交付され、特に加入手続きは必要ありません。高額療養費制度の内容は70歳以上の表と同じですが、75歳未満の家族との世帯合算はできません。後期高齢者どうしではできます。


安心して医療を受けるために、退職後に健康保険をどうするかを考えておきましょう。
❶勤め先の制度に加入
 継続雇用や転職で勤め続ける場合、その職場の健康保険制度の被保険者となります。しかし、勤務時間が短いケースなど、適用外になることもあります。その場合、❷〜❹の方法を検討しましょう。
❷任意継続被保険者に
 最長2年にかぎり、退職前に加入していた制度の「任意継続被保険者」となることができます。
健康保険組合によっては「付加給付」が充実しており、「高額療養費」の自己負担限度額がかなり低い場合があります。それを継続するのはメリット。しかし、労使折半だった保険料を、全額自己負担しなければなりません。手続は、資格喪失から20日以内に行う必要があります。
❸国民健康保険に加入
 住所地の自治体が運営する「国民健康保険」に、資格喪失日から14日以内に加入します。保険料は前年の所得をもとに計算されるため、❷のほうが安いことも。試算のうえ検討しましょう。
❹家族の扶養に入る
 年収が180万円未満などの要件を満たせば、配偶者や子どもなどが加入する制度の「被扶養者」となることができます。資格喪失日から5日以内の手続きと、期間が短い点に要注意です。

>>>70歳未満の方の高額療養費制度の記事は、コチラをご覧ください。

※記事内容は、執筆時点2023年8月1日のものです。

浅田 里花(あさだ りか)
ファイナンシャルプランナー、株式会社生活設計塾クルー取締役。コンサルティングや新聞・雑誌などへの原稿執筆、セミナー講師を行う。東洋大学社会学部の非常勤講師としても活躍。代表的な著書に『Q&Aで学ぶライフプラン別営業術』(近代セールス社)など。

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