心身の健康のために欠かせない
「快眠」のススメ
〈第2回 快眠のための生活習慣〉
睡眠は心身の健康には欠かせないものですが、ただ長く眠れば良いというものではなく、「質」が大切だといわれています。この企画では、「質の良い睡眠=快眠」のポイントを3回に分けてご紹介。2回目の今回は、「快眠のための生活習慣」についてご紹介です。
快眠には、
まず規則正しい生活習慣
快眠には、起床・食事・運動・入眠をほぼ毎日同じ時間に行う「規則正しい生活習慣」が大切である、とよくいわれます。
その理由は、規則正しい生活を送れていないと、体内時計が乱れてしまうためです。
体が眠りに入るタイミングは体内時計によって整えられています。体内時計が乱れていると、眠る準備が整わないまま入眠することになり、快眠につながりにくくなるのです。
体内時計を整えるための生活習慣として、特に下記3つの行動を意識的に実践するのが効果的です。
■体内時計を整える行動
【朝日を浴びる】…目から光を浴びると、脳は朝が来たことを認識し目覚めていきます。浴びる光の明るさは、2,000ルクス以上が良いとされています。蛍光灯の光は、150~300ルクス程度のため不十分です。冬の曇天でも10,000ルクス以上、雨天でも5,000ルクス以上になるため、日の光を浴びることが望ましいのです。
また、7時に朝日を浴びた場合、脳にある体内時計からの指令によって、14~15時間後の21~22時ごろにメラトニンという睡眠を促すホルモンが体から分泌されはじめます。メラトニンは明るい光の下では分泌されにくいため、100ルクス以下の明るさに抑えるのが効果的です。寝ているとき、真っ暗が嫌なら、30ルクス以下の常夜灯にするのが良いでしょう。
【朝食を取る】…朝食を取ることで、内臓を目覚めさせることができます。軽食でもいいので、何かを口にすることが大切です。1日のエネルギー源となる白米やパンなどの炭水化物の他、快眠には、メラトニンを生成する元となる卵・大豆製品・乳製品などのタンパク質を摂りましょう。
【散歩をする】…散歩をすると、体や脳が目覚めていき、その過程で脳を活性化するセロトニンという物質が分泌されます。セロトニンには、体を「お休みモード」から「活動モード」切り替える効果があり、同時に体内時計を整えてくれる効果もあります。朝に行えば、自然と朝日を浴びることもでき、朝食で摂ったトリプトファンがセロトニンに変化するので、体内時計を整えるには一石二鳥です。
朝の散歩は15~30分程度(1,500~3,000歩)がセロトニンの生成に効果的で、1日合計60~80分(6,000~8,000歩)を目安に歩くことが適度な運動にもなります。
心身をリラックスさせて快眠へ
体内時計を整えることで、夜には自然に眠くなってきます。ですが、それだけでなく入眠前の行動も快眠に大きく関わっています。
心身ともにリラックスして快眠できるように、効果的な行動とNGな行動を、それぞれ参考にしてください。
■快眠に効果的な入眠前の行動
【お風呂に浸かる】…リラックス効果があるのはもちろん、体の芯まで温めてくれる入浴は、一度温まった体の熱が下がっていくことで、眠気へとつながります。眠る90分ほど前に、15~20分ほど湯船に浸かるといいでしょう。
【ストレッチ】…深い呼吸をしながら、ゆったりとストレッチすることは、副交感神経を働かせる効果があります。副交感神経には、体を「お休みモード」にする働きがあります。
■快眠にNGな入眠前の行動
【スマホを見る】…スマホの光であるブルーライトには、脳を目覚めさせる効果があるため、直前まで見続けるのは、快眠の妨げとなります。眠る30分から1時間前には見るのをやめるようにしましょう。
【食事を取る】…食事を取ると消化器官が働くため、眠る前の食事は快眠の妨げになります。眠る2~3時間前までに食事は終えておきましょう。
<コラム>
夜間に働く方の快眠方法
朝日を浴びることが快眠には大切とご紹介しましたが、夜間に働いて朝方眠る方々が快眠するためには、帰宅時にサングラスをかけたり、入眠時に光を浴びないようにすることが大切です。スマホの光はもちろん、日の光が目に入らないように、遮光カーテンやアイマスクを活用し、しっかりと光を遮断しましょう。
加えて、上記でご紹介した「快眠に効果的な入眠前の行動」を行い、「快眠にNGな入眠前の行動」を避けることも大切です。
まとめ
日々の生活習慣は、快眠に大きく関わっています。朝はまずカーテンを開け、朝食を取ってから、15分程度の散歩や家事などでも良いので積極的に体を動かしてみましょう。
入眠前には、部屋を暗めにして、心と体をリラックスさせましょう。自身がリラックスできる行動を見つけるのもおすすめです。
※この記事内容は、執筆時点2023年9月6日のものです。
神川 康子(かみかわ やすこ)
エムール睡眠・生活研究所 所長。富山大学 名誉教授 博士(学術)、元副学長・理事。一般社団法人日本睡眠改善協議会理事。日本眠育協議会理事。富山県社会福祉協議会理事等。40年以上に渡り、睡眠研究を行う。年間50回を超える講演を通して、睡眠教育啓発に尽力。睡眠環境学入門ほか著書・論文多数。